YOASOBIなどのMVを手掛ける藍にいなが「インディーアニメ」に挑戦した理由 音楽とアニメーション、そしてAIとの関係性についても語る

 ABEMAが2025年12月より始動させた「Project PRISMation」。個人や少数精鋭のチームでアニメーション作品を発表しているクリエイターとともに、ABEMAがオリジナルアニメのパイロットフィルムの共作に取り組むプロジェクトだ。第1弾として2026年1月に3作品のパイロット版が順次公開され、中でも『Poppin-Play Kitchen』はYouTubeで公開から10日で100万再生を突破、海外の著名な広告映像賞で金賞を受賞するなどすでに大きな反響を呼んでいる。

 ABEMAが同プロジェクトを始動させた背景には、動画投稿プラットフォームやSNSの普及により、インディペンデントな短編作品が大きなバズを生んでいることがある。プロジェクト開始以前からあったそうした流れを可視化するべく、近年話題となったインディーアニメを一挙上映する初のリアルイベント『PRISMation Film Fes. 2026』も2026年5月に開催された。

 今回リアルサウンドテックでは『PRISMation Film Fes. 2026』のトークパートに登壇した、アニメーター/イラストレーターの藍にいなにインタビュー。YOASOBI「夜に駆ける」のMVで注目され、2026年1月に初のオリジナル短編アニメーション作品『LUCA』を発表(同イベントでも上映)。動画・SNS時代の申し子とも言える彼女に、個人制作の限界とそれをスケールさせる方法、音楽とアニメーションの関係、物語の着想元となったAIとの対話など幅広く伺った。(北出栞)

個人制作の限界とスケールのために必要なもの

――本日はよろしくお願いします。にいなさんとお呼びしていいですか? 表記が「AI」と被ってしまうので、英語名をファーストネームのみの「Nina」に改めたというお話を過去の記事で読んで、今の時代らしい衝撃の理由だなと思いまして(笑)。

藍にいな:はい(笑)。にいなで大丈夫です。

――ありがとうございます。ではまず、今回のイベント開催のきっかけでもあるABEMAのプロジェクト「Project PRISMation」について、にいなさんはどういった印象を持たれましたか?

藍にいな:ここ5年ぐらいで個人制作の短編アニメーションって本当に増えていて。ただ、より大きな作品を作りたいと思った際に、個人でスタジオと繋がりを持つといったことは、なかなか難しいと思うんです。そういった面をサポートしてくれるという意味で、すごくいい取り組みだなと思いました。

――にいなさんは当時、東京藝術大学に通われていて、そこに講師として来られていた方に作品を見せたところから最初のMVの仕事に繋がったんですよね。外部の方とは繋がりやすい環境にいたとも言えると思いますが、どういったところで個人で作品を作ることの難しさを感じましたか?

藍にいな:お仕事をいただいたきっかけは確かにそうなんですけど、それ以降は個人で完結できる規模の作品を作ることが続きましたし、そもそも作り方という意味で、インディーアニメとスタジオで作られるアニメってすごく乖離があるなと思うんですよね。個人で制作する作品の尺を伸ばしたり、規模を大きくしていく中で、スタジオの制作フローを知るべき部分が出てきます。ただ、インディーアニメとスタジオの距離があるとその知見が共有されなかったりして、作品の規模を大きくするのが難しいという問題も出てきます。インディーアニメの世界には素晴らしい才能を持った方がたくさんいます。そういった、インディーアニメの作家がステップアップしていく上で、作品の規模に応じた作り方を教えてくれる人と出会う機会は重要だなと感じます。

――なるほど。ちなみに、横の繋がりという点だとどうでしょう? たとえば、今日一緒に登壇される方々(玉川真吾氏、伊藤瑞希氏、吉武薫氏)って、元々面識があったりするんでしょうか。

藍にいな:いや、みなさん初対面で……。

――そうなんですね。横の繋がりは、普段から作家同士であるんでしょうか?

藍にいな:私に関して言えばあまりなかったですね。SNSなどでインディーアニメの界隈を見ていると、出会っている方もちらほら見かけはするんですけど。とはいえやっぱりみんな家でずっと制作しているので、基本的に出会う機会はあまりないだろうなとは思います。なのでこういう場でお会いできるのはすごくありがたいです。

テーマと媒体の特性の掛け算を最大化させる

――では、改めてにいなさんの作品についてお聞きしていきたいと思います。まずはルーツ的なところについて。アニメはクライアントワークを中心に手がけられつつ、元々は漫画を描かれていたということで、それぞれ特に影響を受けた作品など教えていただけますか?

藍にいな:物語面では漫画からの影響が大きくて、『宝石の国』の市川春子先生の作品や、宮崎夏次系先生の作品がすごく好きです。一貫して「日常的なことを描いているけど非現実的」みたいな作品が好みで、今回の『LUCA』もですし、私の作品全体に影響を与えているのかなと思います。

 アニメも好きで昔から観ていて、一番好きなのは『化物語』シリーズです。グラフィカルな画面作りには特に影響を受けていると思いますね。『LUCA』でも、撮影ですごく強い逆光を入れたり、レイアウトと窓の縁をグラフィカルに見せたりというのをこだわって作っています。

オリジナル短編アニメ『 LUCA 』

――今回、初めてアニメという媒体で、ご自身のオリジナルの物語を作られたということになると思います。アニメという媒体で自己表現ができるという感覚は、当初はなかったのでしょうか?

藍にいな:そうですね。とにかく物語を作りたいという気持ちが最初にあって、漫画を描き始めて。その時はまだ学生だったので、授業でアニメーションの課題があって、「アニメを作るのって楽しいな」と気付いて、そこからアニメーションを作り始めるという流れだったんです。なので、今回『LUCA』でようやく「物語を作りたい」という気持ちと「アニメを作りたい」という気持ちがちゃんと融合された感覚がありますね。

――アニメで物語を作るのと、元々描かれていた漫画とを比較して、アニメならではの物語の作り方の手触りは感じられましたか?

藍にいな:「なぜこの物語をアニメで作らなければいけないのか」ということは、作品を作る上で重要だと思っています。たとえば『LUCA』だったら、ルカが爆発していろいろな姿にメタモルフォーゼしていくという設定自体が、すごくアニメーションという表現に合うもので。この設定を思いついた時に「これはアニメで作るべきだな」という意義が自分の中に生まれたので、そういうものは必要だと思っていますね。

――にいなさんはアニメや漫画だけでなく、イラストも手がけていますし、個展では立体作品も発表されていると思うんですけど、媒体ごとに適した語り口があって、それを形にしたいという意識が常にあるのでしょうか。

藍にいな:そうですね。その媒体の特性に合わせたテーマを用意するというか、テーマと媒体の特性との掛け算を最大化させたい、という気持ちはありますね。

――にいなさんが大きく飛躍されるきっかけになったのは、やっぱりMVのお仕事だったと思うんです。過去のインタビューを読んですごく印象に残ったのが、「音楽が媒体として最強だ」というお話で。「形がない分すごく体に直接流れ込んでくる。だから音楽の力を借りたいという気持ちがある」とおっしゃっていたんですが、音楽という、それ自体形のないものと相互作用しながら作っていく時と、今回みたいにゼロから作っていく時とで、同じアニメを作るのでも何か違いを感じたことはありますか?

藍にいな:音楽を元にMVを作る時は、やっぱり音楽の魅力を最大化したいので、その曲自体の抽象的な雰囲気や世界観をビジュアライズしていく作業になります。MVを楽しむ一因として物語があるという感じですね。一方で、今回みたいな短編アニメの場合は、物語がまずあって、そこに対して美しい映像だったり面白い動きがあるという順序になる。物語ありきの意味付けが大事になってくるので、その点で真逆なのかなと思います。

――具体的な作り方としても、『LUCA』はまず文字でプロットを書くところからスタートしている感じですか?

藍にいな:そうですね。逆にMVの時は音楽を聴いて、スケッチをたくさん描くところから始めます。その後に「こういうモチーフがあったらどういう物語ができるかな」とか、「この歌詞だったらどういうストーリーにしていくべきかな」と考えていく流れですね。

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