“背徳ブーム”はライフスタイルの省エネ化が理由?「NOPE」大ヒットから考えるSNS売れの現在地

 2026年3月24日にサントリーから発売された、「ギルティ炭酸 NOPE(ノープ)」。発売直後からSNSで話題になり、わずか一週間で約2000万本を出荷。サントリー炭酸飲料史上最速の大ヒットとなった。

 なぜ、こうした尖った商品はたびたびSNSで爆発的に広がるのか。そして、そのなかでもここまで「NOPE」が注目されたのはなぜなのか。今回は広告論・メディア論を専門とする関西学院大学社会学部の難波功士教授に話を伺い、「NOPE」のヒットから“SNS売れ”の流れを紐解いていく。

現代人の心理をついた設計

 「NOPE」のコンセプトは“罪”と“背徳”。爽やかなフルーティーさもありつつ、600mlで約336キロカロリーと、おにぎり2個分に匹敵するボリュームだ。健康志向が高まっている現代に逆行する、挑戦的な商品設計となっている。

 CMでは囚人服姿の生田斗真が、ジャンキーな食べ物を豪快に頬張り、最後に「NOPE」を一気に飲み干す。映像の世界観からも、“ギルティ”な魅力がしっかりと伝わってくる。

NOPE『ギルティ監獄』篇 30秒 サントリー

 近年食品業界では、ハイカロリーな“深夜メシ”や“悪魔的”な料理がブームになっている。「NOPE」もそのなかのひとつだ。だが、意外にも「飲み物」でギルティさに振り切った商品はあまりなかったように感じる。食べ物であればセブン-イレブンが注力している二郎系ラーメンや、ファミリーマートが実施したキャンペーン『背徳のコンビニ飯』、ローソンの『悪魔のおにぎり』など、大手コンビニでもギルティ文脈の商品が数多く展開されている。

 一方飲み物は、考え方によっては“ギルティ”にもなり得るエナジードリンクの流行は続くものの、コンビニには特定保健用食品(特保)がずらりと並び、健康志向のユーザーに訴える商品が多かった。その未開拓地に、「NOPE」はちょうど収まったのかもしれない。

止まらない背徳ブームの背景

 そもそもなぜ、ここまで“背徳ブーム”が盛り上がっているのか。その背景には、昔に比べて我々のライフスタイルが“省エネ化”していることがあると、難波教授はこう分析する。

「仕事はデスクワークが中心、娯楽もSNSやゲームが主流になり、昔に比べて身体を使う割合は減っています。そもそもの必要カロリーが減少傾向にあるなかで、さらに、SNSでは日々、アイドルやモデル、インフルエンサーの写真や動画が拡散されており、その体型に憧れて、かえって健康を害するほど過酷なダイエットに取り組んでしまうケースもたびたび話題になっていますよね。このように、最近は生活のなかで、“食事を制限しなければいけない”と思わせるような社会的要因が増えているように感じます。その裏返しとして、普段は我慢しているギルティ”な飲食物に惹かれる人が増えている、という面があると考えられます」

 SNSや動画共有サイトを見ても、“ギルティ”とは対極にある“丁寧な暮らし”系コンテンツの人気も続いているが、一方で爆食/健康キャンセル的な文脈のコンテンツが多く見られる昨今。インフルエンサーにとっても「NOPE」は格好のネタで、レビュー動画が相次いで投稿されていることも、ヒットの要因として見逃せない。

ONICHAの動画について
ギルティ炭酸NOPEを飲んでみたシルクの反応...

「消費者の心理として、テレビCMのようなマスの広告より、自分が好きなインフルエンサーのレコメンドは受け入れやすいですし、PR案件であってもファンは嫌悪感を抱かず、『活動の助けになるなら』と、推し活のように商品を購入する人もいます。インフルエンサーの関心を惹き、草の根的な広がりを生んでいる尖ったブランディングも、『NOPE』がヒットしている要因でしょう」(難波教授)

 「健康志向/どうせなら健康的な商品がいい」という消費者は多数派に違いなく、堂々と「ギルティ」を謳うNOPEは挑戦的で注目を集める。さらに、味の想像がつかないことをフックにした炭酸飲料もバズを起こした実績があり、SNSで拡散される条件をいくつも備えている。

「SNSで商品をヒットさせるには、小回りの利く規模のチームで動き、小回りの利く商品を扱うことが重要です。同時に、『NOPE』のようにマスに広く届けようとするのではなく、あえてターゲットを絞ることも大きなポイントなんです」(難波教授)

 もっとも、バズにより大ヒットした尖った商品は、「一度試して満足する」という結果にもなりやすい。NOPEがギルティ系飲料というジャンルを定着させ、競合商品を生み出しながら定番化していくのか。それとも「あの時あの飲料が流行った」と人々の記憶に残る商品に落ち着くのか。必ずしもメーカーが前者のような長期的なヒットを狙っているとは限らないが、炭酸飲料の書き入れ時である夏に向けてこのトレンドがどう推移するか、注目したいところだ。

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