ABEMA『30時間フェス』に感じた、“限界を超えた先にしか見えない光景”
ABEMAが4月11日〜12日に放送した『30時間限界突破フェス』は、これまで見たなかで最も“ギラギラ”を感じた長時間特番だった。
『30時間限界突破フェス』はABEMAの開局10周年を記念して放送された特番で、「ABEMA」全体を“フェス会場”に見立て、3チャンネルで同時進行。視聴者はチャンネルを自由に行き来しながら、長時間の特番を楽しんだ。関連動画の再生数が2億回を突破したこのタイミングで、改めて『30時間限界突破フェス』がどうすごかったのかを振り返ってみたい。
同番組で放送された企画は20を超えており、そのラインナップをざっくり分けると以下の通り。
番組ラインナップ
・既存番組のSP企画
『愛のハイエナ特別版 あつまれハイエナの森』
『ダマってられない女たち~激動人生を生告白SP~』
『「チャンスの時間」ノブの好感度を下げておこう30時間フェスver.』
『ナオキマンの都市伝説ワイドショー 〜今日好きメンバー襲来!明日、学校で話したい都市伝説SP〜』
・1000万円企画
『ウルフアロンから3カウント取ったら1000万円』
『市川團十郎を笑わせたら1000万円』
・深夜&早朝企画
『チーム対抗!芸能人朝まで徹マン決定戦』
『ReHacQ 特別企画 朝からガチ安野』
・完全新作バラエティ
『完徹〜不眠最強芸人決定戦〜』
・音楽特番
『今日好きダンスバトル 一夜限りアーティストとコラボSP』
『最強バズりソング歌謡祭』
・30時間横断企画
『山本裕典 オファー待ち30時間マラソン』
『コムドット 30時間パイから逃げ切れれば1億円!』
局の垣根、放送コード、睡魔……『30時間フェス』が超えた様々な“限界”
改めて並べてみると、今回の『30時間限界突破フェス』で派生企画を行った番組は音楽特番に組み込まれた『今日好き』を除くと、『愛のハイエナ』『ダマってられない女たち』『チャンスの時間』『ナオキマンの都市伝説ワイドショー』と、通常放送の段階からかなりギリギリを攻めている番組であることがよくわかる。そのうえで『愛のハイエナ』はののち、蒼井そら、森日向子、浜崎真緒、バン仲村、小林豊、皇治らを、『ダマってられない女たち』は小島瑠璃子、松居一代、梅宮アンナ、MALIA.をゲストに迎え、過去に芸能界を騒がせたトラブルや初めて告白する衝撃の事実も。
“炎上”の裏話的なものから、男女の関係や犯罪の裏側、国税とのバトルや闘病生活、戦争の危機に晒されている海外生活まで、波乱の人生を送ってきたゲストたちと生放送で”放送コードの限界”に挑戦しようという気概が見られた。
また、1000万円企画については各参加者が奮闘するも、1000万円をゲットするものが出ないというある意味での“ガチ感”を感じられたことも記しておきたい。
音楽番組として放送された『今日好きダンスバトル 一夜限りアーティストとコラボSP』や『最強バズりソング歌謡祭』では、バイラルヒットを叩き出したアーティストとともにパフォーマンスが繰り広げられたほか、令和のヒット曲だけでない歌も各アーティストが披露するなど、世代の限界を超えた音楽番組のあり方の一つを示してくれたようにも思う。
『最強バズりソング歌謡祭』で齊藤京子とともにMCを務めていた岩田絵里奈アナウンサーは、3月末に日本テレビを退社したばかり。さらに言えば『30時間限界突破フェス』の総合プロデューサーを務める橋本和明氏は、『有吉の壁』『マツコ会議』などのヒット番組を立ち上げ、2018年&2021年には『24時間テレビ』の総合演出を担当した元日本テレビの名物プロデューサー。ABEMAでも先述した『愛のハイエナ』『ダマってられない女たち』で次々とヒットを叩き出している。
『ReHacQ 特別企画 朝からガチ安野』を担当した高橋弘樹氏は、ABEMAで『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』シリーズを手がけていたり、『完徹〜不眠最強芸人決定戦〜』はフジテレビで『人志松本の酒のツマミになる話』や『IPPONグランプリ』、『THE SECOND』等を手がけてきた日置祐貴氏が退社後初めて手がけたネット番組として話題になるなど、元地上波の名物プロデューサーたちがMCUよろしく集結している。このあたりに着目して番組を見返してみると、彼らが切磋琢磨していた30時間のようにも見えてくる。
そして30時間を通して展開していたのは『コムドット 30時間パイから逃げ切れれば1億円!』『山本裕典 オファー待ち30時間マラソン』という2つの企画。前者は『Creator Dream Fes』でABEMAとも縁深い動画クリエイター・コムドットの5人が、最大1億円の賞金をかけ、30時間連続で襲いかかるミッションに挑戦する大規模バラエティ。ミッションをクリアし続ければ1億円を全額獲得できるが、失敗するたびにクリーム砲やパイ投げの罰ゲームを受け、賞金が減額されていくというものだ。
これまで自身のYouTubeチャンネルで数多くの大型企画を実現させてきたコムドットですら挑戦したことがなかった“30時間の生放送”。鬼ごっこから幕を開け、終始こういった身体を張る系の企画ばかりなのかと思いきや、所々で“アンチ”が登場して精神面での追い込みを行ったりと、スタッフ側の仕掛けも容赦がない。
今回はABEMA内での30時間放送ということで、おそらく視聴者も純粋なファンだけでなく、興味本位でチャンネルを合わせる場合もあるだろう。ファンもアンチも多いコムドットのことだから、そのなかには彼らに対して良いイメージを持っていない人もいるかもしれない。そんな人たちにABEMAが見せたのは「身体を張る威勢のいいYouTuber」ではなく、待ち時間や食事の様子を通して伝わる「自然体の5人の若者」の姿だった。
ギャップという意味では『山本裕典 オファー待ち30時間マラソン』も面白かった。こちらは『24時間テレビ』内のマラソン企画をオマージュしたものだが、大物芸能人のチャリティマラソンとは趣が違い、一度大きな挫折を味わい、再び這い上がってきているタレントが新たな道を切り拓くべく奮闘する様子が伝わってくる。合間の中継で『愛のハイエナ』の人気企画「山本裕典、ホストになる。」の師匠にあたる軍神(心湊一希)や現地スタッフ、スタジオのさらば青春の光やニューヨークと見せるやり取りは、番組でおなじみとなった“夜の顔”だが、必死になって走る姿はかつての出演ドラマ『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系)のころの爽やかさが蘇ったようにも映った。
つまるところ、『30時間限界突破フェス』とは一体なんだったのか。筆者の目にはクリエイター・プロデューサーら作り手や、さらば青春の光をはじめとする芸人たち、そして一度失敗したタレント・インフルエンサーたちの“ギラギラ”したエネルギーが、30時間という肉体的・精神的な限界を超えることで、美しいとすら思える“キラキラ”の光景に変わる様子を映すドキュメンタリーのように見えた。
純粋にいち視聴者として見るのが本来の楽しみ方なのだろうが、何かを生み出す仕事をしていて上手くいかない人や、大きな失敗から立ち直ろうとしている人たちにとっての希望にもなりうる、そんなくだらなくも美しいひとときだと感じたことを、一人の受け手として記しておきたい。
ABEMA10周年特別番組『30時間限界突破フェス』
放送日時:2026年4月11日(土)午後3時~4月12日(日)午後10時
番組URL:https://abema.tv/video/title/90-2054