VTuberがTwitchで配信する利点とは? にじさんじ「Y4T4」の事例から考える、プラットフォームごとの文化の違い

VTuberがTwitchで配信する利点とは?

チャットとコメントを残せるYouTube配信のアーカイブの強み

 YouTube配信に向いているのは「アーカイブの質をあげてしっかり保存したい配信」「あとから見てもらうことが前提の配信」などだろう。具体的には、下記のような配信はYouTubeの機能にマッチしているといえる。

・編集された動画のプレミア公開
・作品として最初から最後までしっかり見てもらいたい配信
・視聴者参加型など、コメント欄を継続して保存しておきたい配信
・自己紹介や重要な告知やライブなどアーカイブが大事な配信
・サムネイルで興味を惹きたい配信

 特に大きいのは、配信中のチャットを半永久的に保持できるという部分だ。プレミア公開動画や配信の場合は、画面右側に書き込まれる視聴者のチャット欄も動画とともにアーカイブとして残すことができる。

 たとえば視聴者にコメントで参加してもらうタイプの企画配信の場合、チャット欄の流れそのものが重要なコンテンツになるだろう。また音楽ライブなどの場合は、盛り上がっているチャットの熱気あふれる空気感が、ライブ感の重要なファクターになっているはず。そのような視聴者の反応を含めた、配信の雰囲気をそのままパッケージングして長期間保存できるのはYouTube配信の利点だ。視聴者側としても、自身が書き込んだチャット欄のコメントが、消されない限り残ってくれるというのは嬉しいものだ。

 チャット欄とは別に、動画下のコメント欄の機能が活用できるのも大きなメリットだ。リアルタイム視聴できなくてもコメントを書き込むことで参加しているような感覚が味わえるのは、「あとから見る」文化が成熟しているYouTubeならではだ。

配信に活かせるYouTubeの便利機能

 配信が長くなった場合は、動画チャプター機能が役に立つ。たとえばゲーム実況と雑談と告知で3時間以上の配信になった場合、アーカイブを「ここからここまでは実況、ここからは雑談、最後に告知」のようにチャプターでわけておけば「3本がまとまった動画」のような見せ方をすることができる。

 その他にも音楽ライブで曲ごとにわけたり、解説系の配信をトークテーマごとにわけたりなど、チャプターわけは発想次第で様々な用途に使える。「あとから見に来た人」に対して非常に親切なだけでなく、「この次のチャプターも見たい」という感情を刺激し、離脱率をさげる重要な機能だろう。

 配信する前からサムネイルを付けて「スケジュール設定」をすることで、待機所を作っておけるのもYouTubeの便利な部分だ。設定しておけば、告知の段階から視聴者の期待を高めることができる。配信ごとの待機所で、開始までの間チャットを楽しんでいる人も多く見られる。いわば映画やライブが始まる前のワクワク感のようなものを、配信者側が演出できるのだ。

 YouTubeの配信は、動画プラットフォームとして培われてきた長所を利用し、クオリティをアップさせることが可能だ。だからこそ「配信者の提供するコンテンツを見るために来た」という目的意識がはっきりしている視聴者に向けた場合であるほど、YouTubeでの配信が適しているといえるだろう。

TwitchとYouTubeの使い分けによる戦略

 Twitch配信とYouTube配信、双方に優れている部分があり、どちらかの方が絶対によい、とは一概には言えない。大事なのは使い分けだ。

 現在VTuberやストリーマーで多く見られるようになっているのは、配信自体はTwitchをメインに行ない、そのアーカイブや切り抜きをYouTubeの動画やショートで公開する、というスタイルだ。見てもらいやすい間口をTwitch配信で広げた上で、自らを広報する場所としてYouTubeに記録を残していく、という考え方だろう。

 特にVTuberの場合は、配信の内容の面白さはもちろんだが、自身のキャラクター性を売りにして好きになってもらうようにすることも大事だ。Twitchでの配信がどれだけ盛り上がって有名になっても、後から知った人が過去の活動を振り返る手段がないと、キャラクターとしての親しみやすさが減って「推す」ところまでは行きづらくなってしまう。自己PR用に、アーカイブや切り抜きをYouTubeにまとめておくのは、セルフプロデュースとして非常に重要だ。

Twitch利用がさらなる新規層にリーチする

 VTuberファン・にじさんじファンは、現時点ではYouTubeで配信を見ている層が圧倒的に多いだろう。そんな中、にじさんじの「Y4T4」が軸足をTwitchにするというのは、かなり大胆な戦略だ。8人のTwitchを見ていると、すでに長時間の配信がたっぷり行われ始めている。中にはさっそく15時間以上配信しているメンバーもいたほどだ。

 5月2日から5月4日にかけては、Twitchで「Y4T4」の48時間リレー配信も実施された。にじさんじが本格的にTwitchを利用していく方向性で動いているのがよくわかる。

 前述したように、今回の「Y4T4」のメンバーを見ていると、『VALORANT』や『ストリートファイター6』『スプラトゥーン』『リーグ・オブ・レジェンド』など一定のゲームをやりこんだプロ級の腕利きプレイヤーや、クリエイターが集っている。そして、これはTwitchのカテゴリー機能との相性がドンピシャにいい。

 たとえば「レヨンを見に来た『VALORANT』ファン」は、彼のチャンネルから直接配信を見に行くだろう。いうなれば「既存の知名度」を活かした間口だ。そこに加えてTwitch配信の場合はカテゴリー検索から「『VALORANT』が好きで、強そうな配信者を探している、にじさんじを知らない新規視聴者」への求心力も高くなる。間口を広げるという意味ではかなり大きな利点になるだろう。

 また、クリエイターとしての才能を持つメンバーが「アート」「MUSIC」枠で作業配信をすることで、全くの新規層に訴求する可能性も十分考えられる。メンバー同士で「Raid」機能を使うことで、異なる強みを持った仲間へ視聴者を送り、さらに間口を広げる、という展開も今後ありえるかもしれない。

 現在のYouTubeでのVTuberの配信は、正直なところかなりのレッドオーシャンだ。新規で始めた場合、どれだけ頑張って配信をしても、そもそも見つけてもらうことが極端に難しい。

 そんな中で、「Y4T4」によるTwitchとYouTubeの二刀流配信が成功していけば、新たな層を引き込む手段として、VTuberの新しい活動スタイルを切り開く一手になる可能性がある。現時点では、彼らがYouTube配信とTwitch配信を今後どう使い分けていくかまではまだわからない。しかし、その配信スタイルが、今までVTuberやにじさんじを見ていなかった層に対してどのような影響を及ぼすのか、注目したいところだ。

〈参考〉
※1:https://www.nijisanji.jp/news/5ftn6ozbki

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