内部告発に踏み切る週刊記者・“奏”川口春奈の真の目的とは?『スキャンダルイブ』3話

 こいつ、なにか隠してるなーー?

 12月3日に公開されたABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』3話を視聴するなかで、何度も頭をよぎった感想である。

 作品の主人公である井岡咲(柴咲コウ)と平田奏(川口春奈)。今回はさらに、過去2話ですでに怪しい動きを見せてきていた、奏の恋人で担当雑誌『週刊文潮』で同じく記者を務める二宮涼(柳俊太郎)。同誌の編集長を務める橋本正剛(ユースケ・サンタマリア)。そして、すべての黒幕といえる、KODAMAプロダクションの現社長・児玉蓉子(鈴木保奈美)。大枠をまとめると、今週は咲ではなく彼ら3名。週刊誌の“利権”サイドにフォーカスするような内容だった。

 ここまで名前を挙げた5名全員におそらく、まだ明かしていない過去がある。先ほど「こいつ、なにか隠してるなーー?」と記したが、さらに掘り下げれば「あなたの過去になにがあった?」「あなたはなにを知っている?」と矢継ぎ早に尋ねたくなるほど、ピースこそ徐々に集まりつつあれど未だ散り散りな状態。本稿を通して、少しずつ整理と予想をしてみよう。

 まずは、咲&奏から。今回の3話を通して、両者に共通点が見つけられた。それは、圧力、利権、癒着に対して強い嫌悪感を抱いていること。奏曰く『週刊文潮』はKODAMAプロダクションによって上手く利用されたという。物語の発端となった、藤原玖生(浅香航大)の不倫スキャンダル。かのベッド写真は当初、KODAMAプロダクションの管理下にあった。が、児玉蓉子が彼の退所。それはつまり、同事務所からの引き抜きから数年後、地上波復帰の大一番の場面でリークをしたのは、咲の事務所に圧力を掛けるため。本来的に権力に屈しない立場の週刊誌が、忖度をもって世論を扇動してしまったわけだ。

 今回、奏は咲に“とある取引”を持ちかけた。それは、奏の取材に応じ、児玉蓉子との確執について語ること。この後、奏は悪事の根源である児玉蓉子に直接アタックし、“てっちり”を出す“いかにも”な高級料亭に連れて行かれる。その際に明かされたことが、咲が事務所を立ち上げる約1年前。彼女は“ハラユリ”なるタレントを担当しつつも、彼女自ら命を絶っている過去があること(おそらく、1話にて咲の回想のカットインがあった場面がこれだろう)。もし咲に取材となれば、この件についても必然的に語られるところだろう。

 ただ、咲は奏との取引で「あなたが私たちになにをしたか忘れたんですか?」「あなたたち週刊誌はいつも、人の人生を食い物にする」と静かに激昂して踵を返す。これまでの話の流れからして、ここでの”あなた”は奏本人を指してはいないと思うものの、やはり嫌悪感を示す視線の先には、芸能界と癒着する週刊誌がある。そして「なにをしたか」という言葉が出てきたあたり、やはりまだ語られていない“なにか”があるに違いない。

 他方の奏はというと。彼女が嫌悪感を示すのは、週刊誌と癒着する芸能界。彼女は3話冒頭から「不当な圧力と利権をめぐる週刊誌のタブー」なる記事を執筆していた。“芸能界”ではなく、“週刊誌”のタブー。自身の勤める会社をこき下ろす記事。つまりは内部告発にあたる。もちろん、会社が不利益を被るのは間違いないし、そもそも原稿が印刷所に届いたところで、見本誌献本の段階で発売まで至らないのは想像に難くない。あまりに独善的で無謀すぎる。

 実際、彼女が3話終盤、後輩の水口綾香(帆純まひろ)と行きつけの居酒屋を訪れた際、「芸能界みたいなクソみたいな業界に媚びて、ようやく生き残ってる週刊誌なんて、とっくにオワコンだよ。オワコン」とぼやいていた場面が。水口はこれに対して、奏が普段から芸能界に対して強い偏見と毛嫌いを抱いており、彼女の記事からもそうした執念を感じると指摘。奏はここで“なにか”を明かそうとしていたが、その真相こそ明かされず。

 ただ、前述の児玉蓉子とのボス戦、もとい高級料亭で、奏はカウンターを喰らってしまっていた。「平田奏さん、あなた優秀なのね。さすが九州大学文学部を出ただけのことがあるわ」から始まり、彼女のキャリアや過去のこと。さらには「妹さんは、ちょっとタイプが違うみたいだけど……」と、彼女のプロフィールがすでに調べ上げられていることが匂わされる。どこから引っ張ってきたか情報源こそ明かされぬも、“週刊誌のやり方”で黙らされるのは、さすがに屈辱すぎる(詳細は後述するが、もしや奏の上司にあたる橋本からの流出?)。それにしても、奏の妹の素性が気になって仕方がない。

 また、奏についても3話冒頭、彼女の見た悪夢として、少女ふたりのうち、片方の首がぼろっと落ちる衝撃的な回想シーンがあった。なにを表しているかは現時点ではわからないまでも、おそらくは妹の存在や行く末を暗示していたのだろう。彼女自身、事務所への忖度記事のために自身が踊らされたのが許せない。だから、自らの手で週刊誌の悪事を暴く。力強くそう語るも、単なる正義感の上振れから生まれた行動ではないはず。彼女が隠している、真の目的とは一体? もしかすると、この件を通して真相を突き止めたいまた別の事案があったり、あるいは復習を企んでいるものがあったり……。

 そんな奏の過去について知っていそうな表情を見せていたのが、二宮。彼と話をすべくこの間、何度か文潮社のオフィスに押しかけてきた謎の女性がいた。彼女の正体こそ明らかにはなっていないが、この噂を水口経由で聞きつけた奏。週刊誌記者が灯台下暗しとはまたしても皮肉なものだが、件の宴の場をすぐに去り、二宮の部屋に突入。スマートフォンを肌身離さない彼に浮気を疑うなかで、彼がメッセージアプリを介して「R」なる人物への送信履歴を発見する(このRが、先ほどの謎の女性と結びつくかはまだわからない)。そこでRに送信されていたのが、校了前のゴシップ原稿。その内容とは?

 続いて、橋本。奏によると、彼が編集長に出世した理由は、KODAMAプロダクション所属タレントの写真集やカレンダーに関する業務を取りまとめ、それによって会社に莫大な利益をもたらしたことからだという。逆にいえば、彼の利益は同事務所なしでは成り立たない。そう、ここでも癒着だ。であれば、児玉蓉子にとっての扱いやすい手駒として、KODAMAプロダクションへの忖度記事を書かせる。なんとも自然な流れでしかない(が、ここにもひとつ伏線があった)。

 そして最後に、児玉蓉子。彼女が5年前、“ハラユリ”の一件になんらかの絡みを持っていたのはほぼ確定だろう。ただひとつ、奏には気になっていたことが。

 藤原玖生が地上波復帰を果たす予定だった特別ドラマ『追憶の証明』には、KODAMAプロダクション所属の大物俳優・麻生秀人(鈴木一真)もW主演として出演が決まっていた。藤原玖生の不倫スキャンダルがリークされたのは、同ドラマの放送開始直前。言い換えれば、クランクイン前ではない。いくら咲の事務所を潰すためといえど、タイミング的に麻生秀人の仕事にも大きな影響を及ぼすことは必至。事務所が所属タレントにマイナスな働きかけをするわけがない。では、なぜ……。

 ここで、二宮が秘密裏に追っていたゴシップの内容がとうとう告げられた。「大物俳優の性加害疑惑」。そう……大物俳優とは、麻生秀人のこと。児玉蓉子が手段を選ばず、なんとしても隠し通したいスキャンダルにほかならない。KODAMAプロダクションは。麻生秀人の一件を握りつぶすべく、『週刊文潮』と取引をして、橋本経由でなんらかの働きかけを行ない、その一環として藤原玖生のスキャンダルを身代わりにしたのだと考えれば、すべての辻褄が合うとは奏の言葉通り。それにしてもここまで、とことん利用され続けている、藤原玖生。本当にいいところがない(最終話でなんとか報われてくれぬものだろうか)。

 新たに登場した気になる情報として、5年前に亡くなった“ハラユリ”。奏の妹。二宮に押しかけた謎の女性(=「R」であり、麻生秀人の一件に絡む人物なのだろうか)。次週の4話以降では、このあたりを特に意識しながら物語を追いかけていこう。

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