『GTA6』発売“再延期”に「気長に待つ」の声が多数 「グラセフ」ブランドへの信頼に応えるクオリティとなるか

 Rockstar Gamesは11月7日、『グランド・セフト・オートVI』(以下、『GTA6』)の発売日を2026年11月19日に延期すると発表した。

 近年でも屈指の話題作として、長らく界隈の注目を集め続けている同タイトル。ここにきての発売“再延期”は、業界/ユーザーにどのような影響を与えるだろうか。話題作の発売延期という観点から、『GTA6』に求められる新たな役割を考えていく。

前作は全世界2億本超えの大ヒット 近年でも屈指の話題作『GTA6』が発売を“再延期”

『グランド・セフト・オートVI』トレーラー2

 『GTA6』は、米・Rockstar Gamesが開発/発売を手掛けるオープンワールドアクションだ。1997年にPCなどで発売された『グランド・セフト・オート』を初作とするシリーズの第6作で、全世界で2億本以上を売り上げているナンバリング前作『グランド・セフト・オートV』(以下、『GTA5』)の続編でもある。プレイヤーは、米国にあるとされる架空の州・レオナイダ州を舞台に、裏稼業に身を投じる主人公の男女・ジェイソンとルシアの物語を、彼らの視点から見つめていく。

 同タイトルは2023年にその存在が明かされた。翌年5月には、2025年秋のリリースを予定していることが明らかに。しかし、2025年2月には、当初の予定を半年ほど延期し、2026年5月26日に発売日が決定していた。今回の発表により、『GTA6』は丸1年もリリースが後ろ倒しとなったことになる。同タイトルの登場を心待ちにしているファンにとっては、2度目の肩透かしを食らった形だ。

 『GTA6』は、2026年11月19日発売予定。対応プラットフォームはPlayStation 5とXbox Series X|Sで、価格は現時点で未定となっている。

“再延期“によって『GTA6』に求められるもの

Grand Theft Auto VI Trailer 1

 Xデーが近づき、ファンの期待が高まるなか、リリースの再延期が発表された『GTA6』。Rockstar Gamesによると、延期の理由は「さらなるクオリティアップのためである」という。

 Rockstar Gamesの親会社であるテイクツー・インタラクティブは2024年4月、米国証券取引委員会に向けた報告書のなかで、全体の5%にあたる約600人の従業員を解雇し、いくつかの進行中のプロジェクトを中止したことを明らかにしている。同社は大規模なレイオフの背景について、「事業全体の効率性を確認し、成長のための投資を行いつつも、全社の利益率を高めるためにコスト削減プログラムを承認した」と説明した。

 もしかすると、こうした身を切る改革が『GTA6』の開発進捗にマイナスに働いた面もあるのかもしれない。一連の動向を受け、同タイトルの発売を心待ちにしているフリークからは、「発売が延期されるのではないか」との声も上がっていた。結果的にはそうしたファンの懸念が現実のものとなってしまったというわけだ。

 他方、ゲーム業界では、開発の複雑化などに起因する不具合の頻発が問題となりつつある。特に美しいグラフィック、プレイの自由度など、現代的なゲーム性を売りにするタイトルでは、バグをすべて取り除き、完全な状態でリリースすることが困難になっている実態がある。

 たとえば、『GTA6』同様、2025年屈指の話題作に挙げられてきた『モンスターハンターワイルズ』(2025年2月発売)では、致命的な不具合とその修正をめぐる開発/発売元とプレイヤーの軋轢が、悪い意味で話題を呼んできた。当然ながら送り手側もバグのない完全な状態でプレイヤーに届けたいのは山々であるはずだが、求められるゲーム性や進化、ビジネス上の事情などが影響し、実現を困難にさせている状況がある。

 『GTA6』の発売“再延期”にもおそらく、こうした業界の現在地が作用したはずだ。同タイトルが分類されるオープンワールドは、もっとも開発が困難と考えられるジャンルのひとつでもある。話題作を不完全なままリリースし、事後のアップデートで問題を解消していくか、最後の手段として発売を延期するかは、ディベロッパー/パブリッシャーにとって究極の選択であると想像する。Rockstar Games、テイクツー・インタラクティブは細部のディティールにこだわり抜くために、後者を選ぶことにしたのかもしれない。

 『GTA6』の発売を心待ちにしているファンにとっては、悪い知らせとなってしまった今回の発売“再延期”の発表。しかしながら、界隈の反応は、どちらかと言うと意外なものだった。多くのファンからは「知ってた」「完成度が高くなるなら気長に待つ」といった声が相次ぎ、業界内外からは、同様に発売を延期した過去を持つ『サイバーパンク2077』公式、「『GTA6』の発売と同日に自社タイトルを発売する」と強気の態度をとっていたアメリカのパブリッシャー・Devolver Digital、おなじくアメリカを中心に展開するファーストフードチェーンのドミノピザなどが、次々とXにユーモアあふれる投稿を行った。

 

 注目すべきは、それらすべてが発売“再延期”を非難していない点。ネガティブなニュースであっても、このようにあたたかく迎え入れられているのは、ひとえに「グランド・セフト・オート」シリーズ、特に『GTA5』が築き上げてきたブランド力の賜物と言えるだろう。

 その一方で、近年の業界動向を振り返ると、リリースを何度も延期した話題作が期待どおりの結果にたどり着くケースは稀であるという側面もある。Fntasticの『The Day Before』や、Naughty Dogの『The Last of Us Part ll』、Luminous Productionsの『FORSPOKEN』など、その例は枚挙にいとまがない。つまるところ、フリークが関心を寄せるのは「2度の延期を経て発売されることになる『GTA6』が、期待どおりの体験を届けてくれるか」の1点なのではないか。

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 今回の発売“再延期”をめぐるファンの反応のなかには、「さすがに興ざめする」など、逆風と見受けられる意見もあった。このような経緯を踏まえリリースに至る『GTA6』だけに、発売後にはそのクオリティに対し、よりシビアな目線が向けられることにもなるだろう。今後も業界では話題作の発売延期がなくならないと考えられるからこそ、『GTA6』にはそうしたマイナスイメージの払拭も求められていくことになる。

 『GTA6』は期待どおりのクオリティでリリースを迎えることができるだろうか。今回が同タイトルにとって最後の発売延期となることを望みたいところだ。

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