写真機能も手取り足取り、今もっともAIをフレンドリーに使えるスマホ 『Google Pixel 10 Pro』徹底レビュー
2025年8月に、Googleの新しいスマホ「Pixel 10」シリーズが発売された。ベースモデルの『Pixel 10』をはじめ、『Pixel 10 Pro / 10 Pro XL』、『Pixel 10 Pro Fold』と続く。
Googleの公式ストアには「発想は、AIと創る時代へ。」とのコピーがあり、AIをプッシュしたスマホであることがうかがえる。近年は多くのスマホがAI機能を盛り込んでいるが、GoogleはAI機能を第一にアピールしてきた。ゆくゆくはAI機能が本体で、スマホは「AIを動かすための箱」という扱いになるのかもしれない。
そのような未来になるのはもう少し先かもしれないが、その片鱗を感じることができた『Pixel 10 Pro』について、本記事でレビューしていく。
前モデルと変わらない、エレガントな路線
『Pixel 10 Pro』、持ち心地はかなり良好だ。重量は約207gと軽量とは呼べない部類だが、丸く加工されたベゼルや艷やかなアルミのおかげで、フィット感に優れている。従来機『Pixel 9 Pro』から、大きな変化はないといえる。
ディスプレイのサイズは6.3インチで、解像度は1,280 x 2,856px。最大リフレッシュレート120Hzにより表示も滑らか。発色やコントラストも美しく、リッチな画面といえる。
背面にはサラっとした手触りのマット加工を採用。本体色は薄い青色だが、見る角度によってはグレーにも見えてくる。
デスクに置くと、カメラバーが枕となり背面がやや浮き上がる。iPhoneのような隅にレンズを集約させたスマホはガタつくことがあるが、本機はカメラバーが対称になっているおかげでかなり安定した接地感だ。
『Pixel 10 Pro』は、新型のプロセッサーTensor G5を搭載している(メモリは16GB)。バッテリー時間は約30時間。ワイヤレス充電Qi2に対応し、最大15W(『Pixel 10 Pro XL』では最大25W)の高速充電が可能となった。本体重量増加はこのバッテリー周りの改修が影響しているとも言われているが、こればかりは致し方ない。
スマホの総合的な性能を数値化するAnTuTuベンチマークを実行してみたが、概してスコアは100万程度となった。ハイエンドスマホとしてはあまり高いとはいえない部類で、『ゼンレスゾーンゼロ』をプレイした際は画質設定を最低にすることでなんとか快適に動かすことができた。
では『Pixel 10 Pro』は貧弱なスマホなのかと聞かれれば、そんなことはない。コイツが得意とするのは、AI処理なのだ。
手取り足取りあらゆる場面で、AIがユーザーをサポート
『Pixel 10 Pro』のカメラ性能は、『Pixel 9 Pro』と同じモジュールを採用している。しかし、AIを駆使したいくつかの新機能が実装されたことで、ハードウェアではなくソフトウェア面でカメラ体験をアップデートしてきた。
そのひとつが「カメラコーチ」機能だ。これはカメラ撮影時に、AIに最適な画角や撮影方法を教えてもらうというもの。ただGeminiを利用しているため、ネット接続が必須だ。
カメラ画面の上部にあるカメラコーチのアイコンをタップすると、現在写っているシーンをAIが解析。オススメの撮影スタイルが提案され、その提案に応じた撮影フローを作り出してくれる。
上記の例では、カメラコーチで「ヒントを得る」を選択した。すると「人形を中心から少し外して、人形が見ている方向にスペースを残す」との提案が表示された。実際、この考え方は写真の理屈にも合っており、まさに撮影のコーチをしてもらったといえる。
また、従来から実装されていた「ベストテイク」機能は「オートベストテイク」へと進化。大人数を撮影した際には自動で最大150フレームの画像を記録し、全員の表情がベストな瞬間を剛性してくれる。シャッターを押すだけで使えるため、従来の「ベストテイク」よりも大幅に使いやすくなっている。
映り込んだオブジェクトをサっと消せる「消しゴムマジック」なども利用可能。どちらも機能も処理速度や精度が向上していると感じた。あらゆる機能において、当たり前にAIが入り込んでいるのが『Pixel 10 Pro』なのだ。
撮影と生成を地続きにした「超解像ズームPro」
ここからは『Pixel 10 Pro』の写真性能と『Pixel 10 Pro / 10 Pro XL』のみに実装されている新機能「超解像ズームPro」について紹介する。
『Pixel 10 Pro』のカメラは、0.5倍の超広角、1倍(メインカメラ)の標準、5倍の望遠レンズからなるトリプルカメラ構成となっている。前述したように『Pixel 9 Pro』とハードウェア設計に違いはない。それぞれの画角は以下の通りだ。
5倍望遠をデジタルで2倍ズームした、10倍ズームの撮影。デジタルズームを併用すると、なんと最大100倍までズーム可能!
フードフォトも良い感じだ。「料理を撮影したいけど美味しそうに撮れない」といった場面こそ、カメラコーチ機能の出番。自分では思いつかない撮影スタイルを提案してくれるかもしれない。
さて、望遠撮影時は最大100倍までズームが可能だが、『Pixel 10 Pro』は30倍以上の望遠撮影を行うと、「超解像ズームPro」機能が実行される。この機能はデジタルズームで破綻してしまった写真に対して、生成AIを用いて補完するといったものだ。
30倍以上の望遠撮影を行うと、写真左のように「超解像ズームProで処理中です」と表示される。数秒待つと補正された写真が完成。
こちらが補正された写真だが、車の輪郭はきれいになったが、ナンバープレートの文字に違和感がある。左の人が乗っている自転車の形状も、どこか生成感がある。
一方で、生成が良い方向にはたらくケースもある。上記の例では補正後の左の写真は、補正前の中央の写真よりも文字がくっきりとしている。また、撮影時は補正前・補正後の写真が残るため、好きな方を選ぶことも可能。
こちらの写真は100倍ズームで撮影したものだが、テキストや元画像の精度次第では、宇宙文字めいたモノが生成されることも……。
とはいえ、こんなにも遠い距離から撮影ができること自体はロマンがある。「消しゴムマジック」が登場した際も、これは写真と呼んで良いのかといった議論があったが、「超解像ズームPro」も同様の視線が注がれているように思う。スマホにおいての写真とはなんなのか、撮影と創作の境界はどこなのか、そもそも定義はさておきユーザー体験で考えるべきなのでは、などなど。
AIを味わい尽くしたい人のベストパートナー
今回はカメラを中心にAI機能を紹介したが、「マジックサジェスト(Magic Cue)」も便利な機能だ。GmailやGoogleカレンダー、スクリーンショットなどのデータを横断的にオンデバイスで解析してくれる機能で、例えば週末に旅行の予定がある場合は、その予定やチケット情報を表示してくれる。ユーザーの知りたい情報を先回りしてくれる、未来のAIに期待したい機能のひとつといえる。
通話時の音声を多言語に自動翻訳できる「マイボイス通訳」は、なんと自分の声質のまま、通話相手に英語で話すことができる。機械音声を使わない点は画期的で、技術的にはAIによる合成音声が活用されている。
GoogleはAI研究に巨額の投資を続けており、このレースの先行を走る覚悟だ。今回実装された新機能は荒削りなものもあるが、いずれも今までにない体験を切り開いており、未来を先取りできるスマホとしてPixelを選ぶ価値はある。現代においてスマホが欠かせない存在になっているのと同様に、AIが欠かせない存在となる日は遠くないかもしれない。「発想は、AIと創る時代へ。」というキャッチコピーには、そうした壮大な未来予想図が含まれているのかも?