芳賀敬太にとっての音楽的な「TYPE-MOONらしさ・Fateらしさ・FGOらしさ」とはーー『FGO』最新OSTを機に考える

芳賀が考える「TYPE-MOONらしさ・Fateらしさ・FGOらしさ」

ーー「Under The Earth ~アーキタイプ:アース戦~」は『月姫』の楽曲が、キアラ戦の「anima ataraxia~ SUMMER COLLECTION 3017 ~」は『Fate/EXTRA CCC』の楽曲がそれぞれモチーフに使われていることも印象的でした。「奏章Ⅲ」は特にTYPE-MOON作品のキャラクターがスターシステム的に出てくるシナリオでもありましたが、だからこそ原曲の使用指定などもあったりしたのでしょうか。

芳賀:「卒業」で『Fate/EXTRA CCC』の「追憶」をアレンジするという指定や、「anima ataraxia」の指定はありましたが、基本的にはそれくらいですね。「Under The Earth ~アーキタイプ:アース戦~」についても『月姫』の楽曲やフレーズを必ず使ってほしい、ということはなかったです。逆に僕の方からこのモチーフをこういうふうに使っていいか、と提案しました。

ーーそうして美しい曲として仕上げながら「Grand Order」のモチーフも使用するなど、結果的に『月姫』と『FGO』の楽曲が1曲のなかに混ざったというのもグッときました。とはいえ2シリーズの楽曲を同居させるうえで、苦戦した部分もあったのではないでしょうか。

芳賀:『月姫』のモチーフを変化させつつも使っていこうとなった時に、まずは新しい方(『月姫 -A piece of blue glass moon-』)か古い方(『月姫』)か、というのを考えました。そのうえで『FGO』の曲として成立させるために『月姫』に寄せすぎてもいけないなと思い、「Grand Order」のモチーフを使って中和させ、初めて聴いた方にもFGOの曲だとわかるようにした、という形ですね。『Fate/EXTRA CCC』の曲は結構直接的に出たりするんですけど、それは結果的に表現したい物語がそういうテイストだからであって、世界観としては侵食されないようにしています。

ーーここ最近、『月姫』のリメイクや『Fate/stay night』の20周年コンサートなど、活動初期を振り返るタイミングも多かったと思います。その過程で別のインタビューでは「過去の自分を認められるようになってきた」ともお話しされていましたよね。

芳賀:それぞれの楽曲を愛してくれている人たちに失礼にならないようにする、というのはもちろんですが、どう変えていこうかと考えるにあたって、アニメやコンサートなどで自分の作った楽曲を人の手に委ねてきた歴史があるからこそ、思い浮かんだものも確実にあると考えています。

ーー『FGO』を通してそれらの曲と向き合うというのは、また別の感情が生まれるものでしょうか。

芳賀:うーん……そこに関しては実は明確な定義があって、まず基準となるものに「TYPE-MOON的であるかどうか」という判断軸があって、その上層に「Fate的であるかどうか」や「月姫っぽいかどうか」というものがあって、さらに「Fate的であるかどうか」の上層に「FGO的であるかどうか」という軸があるんです。その3層構造のなかを行き来したり、バランスを取ったりして濃度を調整しているというか。

ーーその話、もっと詳しく伺ってもいいですか。

芳賀:これは僕だけではなくて、TYPE-MOONのメンバーである奈須(きのこ)や武内(崇)、さらにはファンのみなさんのほうが敏感なのかもしれません。ただ、音楽的な形として言葉にするとすれば、一つ目の「TYPE-MOON的であるかどうか」に関しては、いわゆる伝奇音楽のような要素があるのかもしれません。そのうえで時代感や世界観がそれぞれの作品に即しているものが「Fate的であるかどうか」や「月姫っぽいかどうか」の基準にもなる。さらに「FGO的であるかどうか」ということでは、オーケストラベースで力強いパーカッションが鳴っているかどうか、という要素も加わってきます。逆に『Fate/EXTRA CCC』だと、打ち込みかつシンセをメインにしたトラックになってくるわけで。

ーー長らくお話を伺ってきましたが、その整理の仕方は初耳でした。めちゃくちゃ面白いですね……。

芳賀:話を今回の作品に戻すと、「奏章Ⅰ 虚数羅針内界 ペーパームーン」や「奏章Ⅲ 新霊長後継戦 アーキタイプ・インセプション」で『Fate/EXTRA』や『Fate/EXTRA CCC』を参照するときは、どちらも「Fate的なもの」に乗っかっている別の層のものなので、縦というよりは横に行き来する感覚で音楽がクロスしているんです。

ーー行き来の仕方でも作り方そのものが変わるということですね。ちなみにイベント曲のほうでは『魔法使いの夜』とのコラボイベントに関する楽曲も収録されていました。こちらは深澤秀行さんが手がけたものですが、芳賀さん側でも一定のディレクションはされたのでしょうか?

芳賀:今回の「まほよ」コラボに関してはコラボというよりも元作品の延長という認識だったので、逆に『FGO』的なアレンジにしないよう気をつけました。担当が深澤さんだけになったのは本当に偶然で、僕やハリスさん(James Harris/永田大祐)の曲であればそれぞれの手に渡っていたと思います。

ーーそういう過去作とのコラボにおける距離感もあるんですね。イベントの話になったので、続けて他のイベント曲で制作が大変だったものについても伺いたいのですが。

芳賀:小ネタ的な部分では「スペース・ファンタズムーン」のネコ108戦に書き下ろした「Cat Symphony No. 108」ですね。最初は除夜の鐘だけで行きたいという話もあったのですが、さすがにということでイントロに入れるだけにしつつ、そこに大晦日の「第九」っぽいオーケストラ+合唱の要素も加えて作っていきました。あとは……「茜色の街 ~ FGO ~」ですかね。

ーーここでまさかの『Fate/stay night』曲アレンジが!?︎ と驚きました。

芳賀:最初は単純にバレンタインイベントのショップテーマを作り変えようということだったのですが、以前も『Fate/stay night』のアレンジ楽曲を使っていたことや、2024年1月30日の『Fate/stay night』20周年記念日の直後だったので、音楽的な『Fate/stay night』20周年の皮切りにしようと思って仕込みました。そこから2024年9月に横浜BUNTAIで開催された『Fate/stay night』の20周年コンサート、2025年5月のFinale公演に繋がるイメージでした。

ーー最後に、コンサートの話が出たのでこれも聞いておきたかったのですが……5月に東京国際フォーラム ホールAで行われた『「Fate/stay night」20周年記念コンサート Finale』にて、芳賀さんが初めてファンの方の前に姿を“顕現”されました。現地で「とんでもないことが起きている……」と思いながら拝見していたのですが、あれはお話しされていたように“長年の感謝を伝えるため”のイレギュラーな出演だったんですよね?

芳賀:そうですね。でも、ここからはオファーの有無だけですよ(笑)。

ーーほんとですか!? 

芳賀:あくまで僕個人は、ですけどね(笑)。いろんな会社さんの判断もあると思うのですが、顔出しでお話しできる選択肢もできた、というくらいの温度感で受け止めていただければと思います。

■リリース情報
『Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅶ』
発売:7月30日(水)
価格:4,620円(税込)
仕様 :全4枚組
初回仕様特典 :三方背ケース
※商品の特典および仕様は予告なく変更になる場合がございます。
詳細 : https://www.fate-go.jp/music/ost7.html

〈収録楽曲〉
【Disc1】
1.into the end
2.白紙化地球
3.クラススコア
4.灯火をたよりに
5.A stain(Vocal:環みちる)
6.虚数羅針内海:ペーパームーン I
7.木漏れ日を浴びて
8.Binary Instinct ~BATTLE 17~
9.因果を越えて ~FATAL BATTLE 7~
10.虚数羅針内海:ペーパームーン II
11.殲滅の女神 ~ドゥルガー戦~
12.終末の舞踏 ~カーリー戦~
13.Flare ~ELEMENTS BATTLE 1~
14.Beyond the Gray Sky(Vocal:百華)
15.不可逆廃棄孔:イド ~Gray~
16.Like the Blue Sky
17.Twilight Shade ~BATTLE 18~
18.不可逆廃棄孔:イド ~Dusk~
19.七つの試練
20.決意の応答 ~FATAL BATTLE 8~
21.暗き渦
22.不可逆廃棄孔:イド ~Noir~
23.決別の炎 ~巌窟王モンテ・クリスト戦~
24.絶望の残滓
25.Avengers Arise ~最終使徒カリオストロ絶望伯戦~

【Disc2】
1.Aqua ~ELEMENTS BATTLE 2~
2.Wonderer (feat. ReoNa)(Artist:スパイラル・ラダー)
3.新霊長後継戦:アーキタイプ・インセプション I
4.オールド・ドバイの休日
5.月面の決戦 ~BATTLE 19~
6.Waltz Upon The Moon ~FATAL BATTLE 9~
7.月面最大の決戦
8.終局の宇宙へ ~アンキ・エレシュキガル戦~
9.Under The Earth ~アーキタイプ:アース戦~
10.anima ataraxia ~SUMMER COLLECTION 3017~
11.新霊長後継戦:アーキタイプ・インセプション II
12.新霊長後継戦:アーキタイプ・インセプション III
13.新霊長継続戦:Moon Rise Obsession
14.Wanderer
15.卒業
16.Holy Lovely Blessing
17.商機到来!
18.風雲からくりイリヤ城
19.ミスティックアイズ・シンフォニー:ショップテーマ
20.The Burn Phase(Vocal:國土佳音)
21.サーヴァント・サマー・フェスティバル2023!:マップテーマ
22.Back to the Fes ~SUMMER BATTLE 9~
23.MUGEN ~常夏の祭神~
24.南の島のフェスティバル

【Disc3】
1.連星(Vocal:Ryunosuke Nakajima (Hue’s))
2.白天の城、黒夜の城:マップテーマ ~昼~
3.白天の城、黒夜の城:進撃 ~昼~
4.白天の城、黒夜の城:マップテーマ ~夜~
5.白天の城、黒夜の城:進撃 ~夜~
6.白天の城、黒夜の城:マップテーマ ~黄昏~
7.白天の城、黒夜の城:進撃 ~黄昏~
8.白天の城、黒夜の城:ショップテーマ
9.無常の嵐
10.七星神威 (feat. 310)(Artist:スパイラル・ラダー)
11.ぐだぐだ超五稜郭:マップテーマ
12.ぐだぐだショップ大炎上 ~車~
13.龍虎激走
14.海道の覇者
15.破軍
16.七星神威 ~赤と白のシンフォニア~
17.茜色の街 ~FGO~
18.Bitter Sweet River
19.ある騎士の物語
20.ある騎士の物語 ~最終公演~
21.メインテーマ/冬 ~FGO~
22.鏡の国の騒動 ~FGO~
23.星が瞬くこんな夜に ~シャイニースター戦~
24.星は願いに ~Star Light, Star Brightより~

【Disc4】
1.踊るドラゴン・キャッスル!:マップテーマ
2.踊るドラゴン・キャッスル!:ショップテーマ
3.竜宮城にようこそ
4.セレブサマー・エクスペリエンス!:マップテーマ
5.セレブサマー・エクスペリエンス!:ショップテーマ
6.Gold Fever ~SUMMER BATTLE 10~
7.妖精双六虫籠遊戯:マップテーマ
8.妖精双六虫籠遊戯:ショップテーマ
9.さざめきはひそやかに
10.賽の目に導かれ
11.洋燈(Vocal:Nona*)
12.ぶち壊せ!ミステリーハウス・クラフターズ:マップテーマ I
13.ぶち壊せ!ミステリーハウス・クラフターズ:ショップテーマ
14.ぶち壊せ!ミステリーハウス・クラフターズ:マップテーマ II
15.クラッシュ&クラフト
16.ぶち壊せ!ミステリーハウス・クラフターズ:マップテーマ III
17.呪われし仮面
18.ポホヨラのクリスマス・イブ:ショップテーマ
19.白銀に踊れ
20.序曲 ~くるみ割り人形より~
21.第2曲 行進曲 ~くるみ割り人形より~
22.第14曲 金平糖の精の踊り (Adagio) ~くるみ割り人形より~
23.第6曲 情景 ~くるみ割り人形より~
24.第13曲 花のワルツ ~くるみ割り人形より~
25.第14曲 金平糖の精の踊り ~くるみ割り人形より~
26.第14曲 パ・ド・ドゥ: イントラーダ ~くるみ割り人形より~
27.Cat Symphony No. 108

■ゲーム情報
『Fate/Grand Order』
ジャンル:FateRPG(フェイトRPG) iOS/Androidにて好評配信中
開発・運営:Lasengle Inc. (株式会社ラセングル)
製作:TYPE-MOON / FGO PROJECT
価格:基本無料(アプリ内課金あり)
Fate/Grand Order公式サイト:https://www.fate-go.jp/
Fate/Grand Order公式X(Twitter) :https://x.com/fgoproject
©TYPE-MOON / FGO PROJECT

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