パリコレで話題、ANREALAGEの“光る衣装”はどのようにして生まれたかーー「壊れにくいLED」と「衣服の技術」を活用した裏側を訊く

衣装への活用＋バッテリーの進化によって見えてきた“光の演出のネクストステップ”

ーー今回のコラボに至るまでの技術的な進歩や衣装への活用を踏まえて、具体的なネクストステップも見えてきたのではないでしょうか。

藤本：以前からお話ししていたかもしれませんが、今回の衣装への活用＋バッテリーの進化によって、ビジネスとしての展開の可能性は大きく広がりましたね。

ーー「バッテリー」ですか。

藤本：具体的に言えば「ポータブルバッテリー」の進化ですね。ここは自分たちにとってかなり大きな出来事なんです。LEDのプロダクトを光らせるには高出力な電源が必要なので、特殊なリチウムバッテリーなど取り扱いに注意しなければならない製品を使用していました。ただ、モバイルバッテリーの性能が飛躍的に向上して、65W〜100Wなどのようにパソコンも充電できるような高出力のものが小型化されてきたんです。モバイルバッテリーを衣装に取り付けたり、フラッグに搭載したりすることが現実的になりました。例えば、埼玉西武ライオンズさんに通年で使用してもらっているフラッグは、モバイルバッテリーで動くようになっているんです。

ーーなるほど、確かにそれは大きなポイントですね……。

藤本：モバイルバッテリーは市販されており、取り扱いを間違えても滅多にショートしないなど、非常に安全で堅牢なものですから。これは自分たちにとってはひとつの「革命」と言えますね。LEDシステムや素材の「プロダクト化」を進め、市販していくことができるようになる、ということなので。スポーツチームやライブチーム、ドローン会社など、購入して繰り返し使いたいというニーズに応えられるようになったので、これまでは1回きりの特別なイベントの演出として入ることが多かったのですが、市販化した安全に取り扱えるものであれば、自分たちが現場に行かなくてもよくなるので、年間を通して使用することも可能になります。

ーーそうして市販化をしていく一方で、今回のANREALAGEとのコラボレーションのようなカスタムオーダーのプロジェクトにもより力を入れていくのでしょうか。

藤本：そうですね。次への布石でいえば、最近はハードウェアの開発にかなり没頭していまして。月に1回中国の工場に通って素材から直接確認しながら開発を進めることで、開発速度を大幅に上げています。そのなかでも注力しているのは「大きなもの」を作るための新しいハードウェア開発です。これまでは衣装用など、チューインガムサイズでLED2000個を制御するようなデバイスを作っていましたが、今はiPadくらいのサイズで12倍以上のLEDを制御できるデバイスを開発しています。これは、ドローンで吊り下げたり、10m、20mといった巨大な構造物にLEDを設置したりする場合に、制御デバイスが小さくて軽い方が都合が良いからです。通常、巨大なものを制御するにはサーバーラックのようなメディアサーバーが必要ですが、自分たちは「巨大なものに対して極めて小さなデバイス」を作るというニッチな分野に挑戦しているんです。

ーー「巨大だけど軽くて扱いやすい」もの、ということですか。

藤本：そうです。第1弾としては6m×9mのような比較的大きなLED Meshでのテストも始めています。そういった次への開発・実験を含めて、自分たちの役割は「正解を提示する」というよりも「きっかけを提示する」ことだと思っています。完成されたプロダクトを見せるのではなく、プロトタイプの段階で「これができます」と見せることで、「こんなことやりたかったんだ！」という人が現れ、そこから新しいプロジェクトが生まれるのが楽しいんです。将来的には、街全体を使ったプロジェクトのような、本当に大きなものを作りたいですね。

　ちなみにANREALAGEさんとは、直近でもビヨンセのツアーに共同で参加していますし、今回のコレクション後もコラボレーションを継続しています。衣装だけでないプロダクトでの可能性も探り始めているので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

■ ステージ概要
『MPLUSPLUS LED DANCE SHOW & ANREALAGE 2025 PARIS – TOKYO COLLECTION』
日時： 2025年5月17日（土）
開場： 16:30 ／開演： 17:15（終了予定18:00）
会場：東京ビッグサイト東3ホール
席種：スタンディング（立ち位置指定）
申し込み可能人数： 2名まで
申し込み受付期間：2025年5月2日（金）18：00～5月11日（日）23：59まで

▶お申し込みはこちら：
https://tokyo-gx-action.jp/2025_mp-an_stage/