初めてのフィルムカメラにおすすめしたいオリンパス『OM-1』 個体選びのポイントと作例付きレビュー

 今年はMF(マニュアルフォーカス)のフィルムカメラで写真を撮る熱が再燃、友人とともにさまざまなカメラを購入して写真を撮っている。といっても、そんなにリッチな趣味ではない。主に買うのはジャンク品。壊れているかもわからないカメラを買って、時々ちょっと直して使っているのだ。

 今年手に入れた中でも気に入っているカメラは、オリンパスが1962年に発売した『PEN D』だ。ハーフ判ながらF値1.9の明るいレンズを搭載しており、写りも素晴らしい。そのことは以前記事にも書いた。

ジャンクで買ったフィルムカメラの描写に夢中 名機『OLYMPUS PEN D』の色あせない実力

昨年末にNikon FM2を購入してから、定期的にフィルムカメラで写真を撮影し続けている。友人二人との“写真部”も活発になり、高…

 『PEN D』の描写に驚いて以来興味が湧き、オリンパスのカメラを愛する友人から本もいくつか借りた。目を惹かれたのは一眼レフカメラ『OM-1』についての記述だ。『OM-1』は同社が初めて世に送り出した35mm一眼レフであり、当時世界最小・最軽量を誇った。設計を担当したのは「PEN」シリーズと同じく米谷美久氏。

 驚いたのは、物の本によれば『OM-1』の背格好がレンジファインダーカメラである「バルナックライカ」とほぼ同一だということ。一眼レフはミラーやプリズムによってファインダーに像を写すその構造上、レンジファインダーカメラよりも大きく重くなりがちだ。

 『OM-1』が小さく軽いカメラだということはなんとなく知っていたが、「一眼レフなのにレンジファインダー機とほぼ同じサイズです」だなんて、そんな強烈なことを言われたらなんだか一気に魅力的に見えてしまった。私の好きな完全機械式カメラであることも、その魅力を後押ししている。

 ところで、オリンパス株式会社がカメラ事業から撤退したのは2020年のこと。現在はOMデジタルソリューションズ株式会社がカメラ事業・ブランドを引き継ぎ、「OLYMPUS」ブランドの名は順次「OM SYSTEM」へと変更されている。現在、同社のミラーレス一眼の軍艦部には「OLYMPUS」の代わりに「OM SYSTEM」と記載がなされている。

 時をぐぐっと戻して半世紀前、オリンパスはマニュアルフォーカス式の一眼レフの小型軽量化におけるパイオニアだった。1972年に発売された『OM-1』は当時世界最小・最軽量であることにくわえ、静かなシャッター音、駆動部に注油がいらない設計など、さまざまな趣向が凝らされた革命的な製品であった。オリンパスは『OM-1』から始まったカメラ本体と高い互換性を維持した多様な周辺機器・レンズ群の生態系を「OM SYSTEM」と呼称した。

 時が経ち、レンズマウントも開発会社も変わってしまったが、『OM-1』から始まったシステムの名前が現代にも生き続けているということだ。

何気なしに立ち寄ったカメラ屋で出会った、“健康体”の『OM-1』

 そんな『OM-1』、気にはなるけど、一眼レフはニコンで揃えているし、Fマウント以外のレンズを買うのも大変だなぁ……。そんな風にためらいながら横目に見て気にしていたのだが、ある日、カメラ屋のジャンク売り場で、一台の『OM-1』と出会ってしまった。

 ところで、『OM-1』には、有名な“持病”がある。プリズム周辺に貼られたモルト(遮光用のスポンジ)が経年劣化を起こし、近くにあるプリズムを腐食させてしまうので、その結果ファインダーから見る像が汚くなってしまうというものだ。中古で売っている大体のジャンク品がこの持病を発症している。

 カメラ屋の店頭で「このジャンク、外見は綺麗だけど、プリズム腐っちゃってるかな……」と思いつつ、ファインダーを覗いてみたところ、なんとまあクッキリきれいなファインダー。フィルム室周りのモルトも問題なさそうで、電池を入れると露出計の針も振れた。本体のみ、ジャンクで価格は3,000円。店でカメラを手に40分ぐらい悩みに悩んで、結局買ってしまった(ちなみに「買おうか悩んでいるとき」にカメラ屋なんぞに行くと、そういう時に限って絶妙な出会いがあるもので、なのでなるべく行かないほうがいい。買ってしまうから)。

 さて、本体のみを購入したはいいものの、レンズはどうしようかと考えていたら、父親が学生時代に使っていた『OM-1』が実家にあることを思い出した。見に行くとファインダーには前述の腐食が出ていたが、レンズはバッチリ。というわけで、その50mmレンズを装着してみた。レンズは『OLYMPUS F.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8』で、当時ボディとセットで販売されていたいわゆる「標準レンズ」のようだ。

購入した『OM-1』と、『OLYMPUS F.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8』

 レンズを装着してファインダーを覗くと、とても明るくてキレイなので驚いた。普段使っているニコンの一眼レフよりも倍率が高く、縦に持ち片目で覗くと、肉眼で見る画角とほぼ変わらない。そして本当に軽く、小さい。本体の重さを測ると496.4g。先日購入した『Nikon F2』(1971年発売)がフォトミックファインダーを載せて867.1gなのだから『OM-1』の軽さは衝撃的だ。『Nikon F2』の翌年に発売されたこのカメラ、当時の衝撃はいかほどだっただろうか。

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