収益化前から活動するYouTuberが引退を宣言 複数事例から古参YouTuberの引き際を考える
釣り系YouTuberの渥美拓馬がYouTuber引退を発表した。収益化される前から動画を投稿してきた古参YouTubeクリエイターの渥美は、なぜ引退を決めたのか。引退のきっかけや今後の動画投稿について触れながら、古参YouTuberの引き際について考えてみたい。
渥美が12月1日に投稿した動画で、「今後YouTubeでもっと有名になるために頑張ろうとか登録者増やしていこうとか、そういう気持ちは微塵もありません」「今後そういう活動をしていく予定はありません」と発言。“職業・YouTuber”を引退することを宣言した。
チャンネル登録者数53.7万人(12月5日時点)を擁する人気YouTuberの渥美。だがその数字については、「僕に登録者が50万人いるっておかしいと思う」と、率直な思いを口にしている。自身について「話が面白いわけでもなく、うまいわけでもなく、とくに秀でた才能があるわけでもなく、ルックスがいいわけでもなく、オーラがあるわけでもなく」と自虐的に話すと、ここまでこれたのは“運”と述べている。
渥美がYouTubeで動画を投稿しはじめたのは、まだ渥美が大学生で、動画から収益を得るシステム「YouTube パートナープログラム」がスタートする2008年より前のこと。現在確認できる1番古い動画は2016年12月に投稿されたものだが、実はヒカキンやMEGWINなど限られたクリエイターしかいなかった時代から釣り動画を撮っては投稿していた。当時は遊びの一環として動画を作っており、収益がなくても「すごく楽しかった」「僕は全然満足していた」と、動画の制作を心から楽しんでいたことがうかがえる。
きまぐれクックやへんな魚おじさんなど釣りや魚関連の動画クリエイター仲間に恵まれ、ここまで活動してきた渥美だが、そんな渥美に転機が訪れたのは2019年9月のこと。同年9月、渥美はスペイン遠征に出発する前日に救急車で搬送され、急性前骨髄球性白血病と診断されると即入院。2020年5月に退院したが、その大病をきっかけに「自分の体が資本の活動って、本当に危険」と強く思うようになったことから、動画の投稿頻度は減少していったという。その一方で、新しい挑戦として釣具会社を設立。投資にも精を出し、現在では「YouTubeの収益が別にゼロでは何にも問題ない状況までもってこれた」と、YouTuberとしての活動なくしても生きていけるまでになったそうだ。
かつて『好きなことで、生きていく』というキャッチコピーで一躍注目を集めたYouTube。渥美も大好きな釣りをコンテンツ化し、釣具会社を設立するまでになったが、「何もしてなかったらやっぱりもったいないって思うんですよね。だから興味のあること好きなこととかをやっていきたいよね、体が元気なうちに」と、好きなことをするために引退を決意したと明かしている。
ちなみに、YouTuberを引退しても動画の投稿がゼロになるわけではないとのこと。「本当に自分が興味出た時しか動画は撮らない」と述べており、収益に関係なく、自身が楽しいと思ったものを撮影し、投稿していくとしている。
古参YouTuberのなかでは、活動歴13年、アパレルブランドや飲食店を手がけるサグワが、ショートコンテンツに力を入れることなどを理由に年内をもってYouTube卒業を発表。最近は動画市場の変化を受け、長年の活動を通してさまざまな事業で足場を固めてきた人気クリエイターたちが、新たなフェーズへと歩み出すタイミングとなっているようだ。動画内で登場する「人生って1回しかない」という渥美の言葉は、一定の成果をあげた動画クリエイターが、今後も好きなこと・興味のあることで、身体を労わりながら生きていくことへの決意の表れとも感じられる。渥美やサグワの引退理由をみると、古参YouTuberの引退は、人生をより充実させるためのステップといえそうだ。
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