なぜ「メダロット」最新作はヴァンサバライクに? トレンドジャンル参入で見据えるもの

 「メダロット」の発売元として知られるイマジニアは11月28日、同シリーズ最新作『メダロットサバイバー』を2025年2月にリリースすると発表した。

 往年の人気ロボットIPとして、当時を知るフリークたちには広く認知されている「メダロット」。モバイルでの展開は、2020年リリースの『メダロットS』に続き、2作目となる。なぜ同シリーズはルーツとも言えるコンソールを離れ、モバイルを新天地として選んだのか。シリーズの最新スピンオフとして新たな挑戦を盛り込んだ『メダロットサバイバー』の、成功の可能性を模索する。

「メダロット」シリーズから最新作『メダロットサバイバー』が発表に

 「メダロット」は、1997年にゲームボーイで発売されたRPG『メダロット』を初作とするシリーズだ。これまでに9作のナンバリングのほか、数多くのスピンオフが展開されている。原作は、講談社発行の児童向け雑誌『コミックボンボン』に掲載されていた、ほるまりん氏によるマンガ作品。2000年ごろにはゲームとマンガ、それぞれの人気の高まりから、TVアニメやアナログTCGなど、さまざまな分野でメディアミックスも行われた。

 同シリーズから新作が展開されるのは、2020年1月リリースのモバイル向けRPG『メダロットS』以来、約5年ぶりのこと。2017年と2020年には、ナンバリング5作品と、派生シミュレーションRPGの『メダロット navi』、第5作の続編とされるアクション『メダロットG』、第2作のリメイク『メダロット弐CORE』がNintendo Switchにて復刻されている。

 イマジニアによると、今回発表された最新作『メダロットサバイバー』は、シリーズ初のサバイバーアクションになるとのこと。界隈で近ごろ定着しつつあるサブジャンル「ヴァンサバライク」(※)に分類されるタイトルとなるようだ。プレイヤーは、リリース時点で30機体以上登場するプレイアブルメダロットのなかから、お気に入りの1体を選択し、個性的なスキルを駆使しながら、緊張感あふれる戦況に立ち向かっていくという。機体デザインには、tyuga氏や吉崎観音氏、ケースワベ氏といった著名なイラストレーターの名前が並んでいる。

 『メダロットサバイバー』は基本プレイ無料・アイテム課金型で、AndroidとiOSに対応する。情報が明らかとなった11月28日には、両プラットフォームで事前登録がスタートした。

※…ローグライトアクション『ヴァンパイアサバイバーズ』と近しいゲーム性を持つタイトルの総称。

シリーズとモバイルの好相性。ロボット分野の盛り上がりを背景に成功を手にできるか

【メダロットサバイバー】オフィシャルPV

 誕生から四半世紀以上を数える「メダロット」シリーズだが、特に好評を博したのは、2001年発売の第5作『メダロット5 すすたけ村の転校生』までで、その後に展開されたナンバリングやスピンオフは、それらに比べると、やや低調な評価にとどまっている。買い切りパッケージとして最後にシリーズ作品が発売されたのは、登場人物を女性キャラクターのみで構成したアクション『メダロット ガールズミッション』(2017年)で、ニンテンドー3DSの時代。同ハードでは、ナンバリング/スピンオフを含め、数々のタイトルがリリースとなったが、ほとんどが高評価を獲得できなかった。そうした経緯もあってか、往年の時代を知るゲームフリークにとって「メダロット」は、「歴史のなかにある人気シリーズ」という立ち位置となってしまっている現状がある。

 その一方で、2020年に展開された初のスマートフォンアプリ『メダロットS』は広く好評を博しており、ローンチから4年が経過してもなお、サービスが継続している。シリーズにしてみれば、同タイトルが時代をまたぎ、新たなファンを開拓してくれた面もあるはずだ。最新作『メダロットサバイバー』が同様にモバイル向けに展開される背景に、『メダロットS』の成功があるのは間違いない。

【メダロットS】オフィシャルPV

 また、「お気に入りのロボットを自分好みにカスタマイズする」というゲーム性も、気軽にプレイへと向かえる携帯ゲーム機とは相性が良い。そうしたシリーズの持つ特性を開発元・発売元が意識しているからこそ、近い時期のナンバリングやスピンオフがニンテンドー3DSで、人気作の復刻版がNintendo Switchで展開されてきたのだろう。

 このことは、『メダロットサバイバー』がかつてシリーズの地位を確立したRPGではなく、新たな舞台となるヴァンサバライクとして制作されている点にも影響している可能性がある。モバイルで展開するからには、より同プラットフォーム向けであり、かつトレンドとなっているジャンルに振り切り、“前作超え”を見据えているのかもしれない。同プラットフォームでふたたび成功を手にした暁には、“CS機への逆輸入”もあり得るのではないだろうか。

鋼嵐-メタルストーム

 個人的には、ロボットの分野も静かに盛り上がりを見せつつあると感じている。定番かつ王道の「ガンダム」シリーズや「スーパーロボット大戦」シリーズ、「ARMORED CORE」シリーズが支持され続けているのはもちろんのこと、近年では『十三機兵防衛圏』もゲームカルチャーに爪痕を残した。リメイク/リマスターのカテゴリでは、スクウェア・エニックスの人気ロボットシミュレーションRPG「フロントミッション」シリーズの復刻が、新作のカテゴリでは、同シリーズの続編として開発された経緯を持つメカシミュレーションRPG『鋼嵐 -メタルストーム-』や、Amazing Seasun Gamesが手掛けたSFメカアクション『Mecha BREAK』などが話題を呼んでいる。

 さらに周辺ジャンルまでを含めると、浦沢直樹氏によるマンガ作品『PLUTO』が、2023年にNetflixでアニメ化され、一定の評価を獲得。マンガやアニメを原作とするゲーム作品からは、鳥山明氏原作の『SAND LAND』や、1970年代の名作ロボットアニメを原作とした『UFOロボ グレンダイザー : たとえ我が命つきるとも』にも高評価の声が集まっている。

 『メダロットサバイバー』はこうした波に乗り、成功を手にすることができるだろうか。シリーズの存続は同タイトルの手に委ねられていると言っても、過言ではないのかもしれない。

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