『The Game Awards 2024』主要部門で国産タイトルが躍動 要因は国内外の労働環境の変化か
11月19日、『The Game Awards 2024』のノミネート作品が発表となった。最も権威があるとされている「Game of the Year」部門の候補に挙がったのは、『アストロボット』『Balatro』『黒神話:悟空』『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』『ファイナルファンタジーVII リバース』『メタファー:リファンタジオ』の6作品。今年のゲームシーンを牽引してきたと言っても過言ではないビッグタイトルたちが揃い踏みとなった。
その一方で、目を引いたのが国産タイトルの躍進だ。紹介した「Game of the Year」部門を皮切りに、「Best Narrative」部門や「Best RPG」部門、「Best Family Game」部門などを、日本のゲームスタジオによって開発されたタイトルが席巻した。反面、「Best Action Game」部門、「Best Sports/Racing Game」部門、「Best VR/AR Game」部門などでは、候補作のすべてが海外産のタイトルに。今年のノミネートだけを見た結果ではあるものの、日本のゲームスタジオの得手と不得手が鮮明となった形だ。
なぜこのように顕著な偏りが生じたのか。本稿ではその理由について考えていく。
「2024年最高のゲーム」の栄冠はどのタイトルの手に
『The Game Awards』は、2014年にアメリカで創設された世界最大級のゲーム表彰式典だ。おなじくアメリカで開催される『D.I.C.E. Awards』や『Game Developers Choice Awards』、イギリスの『Golden Joystick Awards』と並び、世界4大ゲームアワードに数えられる。大賞にあたる「Game of the Year」部門の行方は、ゲーム業界における年末の風物詩として例年、界隈の注目の的となっている。各プラットフォームでは、開催にあわせてノミネート作品、受賞作品がセール販売の対象となるケースも少なくない。
2024年の開催は、30ほどの部門から構成された。国産タイトルでは、『アストロボット』と『ファイナルファンタジーVII リバース』が最多の7部門にノミネートされている。『The Game Awards』同様、年末に開催され、前哨戦と目される機会の多い『Golden Joystick Awards』では、中国・Game Scienceが手掛けたアクションRPG『黒神話:悟空』が同式典の大賞にあたる「Ultimate Game of the Year」に輝いた。
各部門の投票は、『The Game Awards』公式サイトにて受付中(2024年12月12日11時まで)。受賞式は、2024年12月13日に開催される(ともに日本時間)。
労働環境の変化が開発力に差を生じさせた可能性も
先にも述べたとおり、『The Game Awards 2024』のノミネート作品には、決して小さいとは言えない偏りが存在している。「Best Narrative」部門や「Best RPG」部門などで国産タイトルの躍進が目立つ背景には、「2024年は海外産の大作が少なかった」という偶発的かつ相対的な要因も影響しているのだろう。一方で、これらはかねてから、日本のゲーム産業のお家芸とされてきた分野でもある。『(「Best Action Game」部門、「Best Sports/Racing Game」部門、「Best VR/AR Game」部門といった)より写実性が求められるカテゴリでは外国産が、(「Best Narrative」部門や「Best RPG」部門など)キャラクターの魅力やシナリオ/システムの面白さのようなゲームの根源的要素の比重が高いカテゴリでは国産が』といったような棲み分けが進んだ結果、ラインアップに偏りが生じたのではないだろうか。
また、ここには2020年前後よりゲーム業界で続く、労働環境の変化による影響もあるのかもしれない。たとえば、海外では、Amazon Gamesやユービーアイソフト、Epic Games、Niantic、Unity、Microsoft、アクティビジョン・ブリザード、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)といった業界大手が、次々と大規模なレイオフを行っている。他方、国内では2023年以降、セガやコーエーテクモゲームス、任天堂、カプコンといったキープレイヤーたちが続々と賃上げを行った、もしくは今後行う予定だ。
これまで日本の労働市場は、基本的に解雇がない終身雇用である反面、海外に比べると賃金が安く、相対的に悪条件であると言われる機会が多かった。そのような状況下であっても、日本のゲーム企業たちは、魅力的なタイトルを多く世に送り出し、世界で戦ってきた過去がある。このように日本と海外のあいだにあった格差がここ数年で埋まりつつあることで、両者の開発力に違いが生まれ、結果として相対的に国産タイトルの躍進が顕著となった可能性もある。一連の推測が的を射ているかは、来年以降の業界動向が教えてくれるはずだ。
主要プレイヤーであるSIEをめぐっては、アメリカに拠点を構える同社傘下の開発チーム・Firewalk Studiosが手掛けたFPS『CONCORD』が稀に見る失敗となった一方で、SIEジャパンスタジオを前身とするTeam ASOBIが手掛けた『アストロボット』が世界的に高評価を獲得している、という対照的な実態もある。ここにも(少なくとも2024年発売タイトルにおける)国内と国外の開発力の差を垣間見ることができるのではないだろうか。
はたして「Game of the Year」の栄冠は、どのタイトルの手に渡るのか。2024年は、国産タイトル躍進に向けてのターニングポイントのような年となるのかもしれない。
「アカデミー賞のクソッたれ!」と叫ぶ映画監督による、“映画を越えたゲーム”はなぜ泣けるのか
いくらゲームが好きであったとしても、「映画とゲームはどちらがより優れているか?」という質問をされると緊張せざるを得ない。はっきり…