AIデバイス体験施設「Client Solution & AI Lab」に潜入 AIが仕事に“活きる”シチュエーションがわかった

「Copilot+PC」は流行からスタンダードへ

 今、PC業界を席巻する「AI PC」。DELLの調査によれば、2027年までに、市場に出回るPCのおよそ8割以上がAI PCになる、と予想されるほどだ。ブームが起きている、というよりもスタンダードが書き換わった、というのが正しいだろう。

 「AI PC」についての固有の定義が存在するわけではないが、現状としてはマイクロソフトによって認証される「Copilot+PC」モデルのことを指すのが一般的だろう。基本的にはPCメーカー各社は「Copilot+PC」を取り揃えるかたちで動いているのが現状だ。

 「Copilot+PC」の要件として、「40TOPS以上の処理を行えるNPUを搭載」「メインメモリが16GB以上」「256GB以上のストレージ」というものがある。「NPU(ニューラルネットワーク・プロセッシング・ユニット)」とは、AIの処理に特化したチップである。つまり「AI PC」とはPCに搭載されたAI関連の機能をオフラインで十全に動かすことができるデバイス、ということとなる。

Dellが法人向け“AI施設”をオープン

 そんな中、Dellは法人向けのAI PCの普及に力を入れている。Dellが提供する法人向けPCや周辺機器のモデルケースを体験できる場「Client Solution & AI Lab」が、今年10月に、東京・大手町のデル・テクノロジーズ本社内にオープンした。


 本施設は、Dellが今年9月に開所したAIソリューションの実践や検証する「Solution Center AI Innovation Lab」で披露した様々なソリューションを補完する施設としてオープンされた。法人顧客が実際にDellのプロダクトやソフトウェアを触りながら、その機能を体験できる施設だ。

 今後確実に広がりを見せるAI PC時代における様々なユースケースを実際に体験し、AIの活用方法や有用性を体感してもらおう、という狙いだ。

5つのモデルケースを体験

 ラボスペースにはカフェ、フォンブース、在宅、オフィス、スタジオの5つのモデルケースが設置されている。

 「カフェ」では、AIを活用したのぞき見検知を体験できる。のぞき見検知機能は、ユーザーの背後に人が立つとPCがそれを検知し、画面上にアラートを出してくれるというものだ。リモートでの仕事が可能となったことで、カフェやコワーキングスペースといった公共の場で仕事をするケースが増えた。仕事の情報やメッセージのやり取りなど、いつ誰が見ているかわからない。どんなものであれ、極力部外者の目に曝されるのは避けるべきだろう。

 「フォンブース」は、アクティブノイズキャンセリング機能を備えたヘッドセット『WL5024』を使った「AIノイズキャンセリング機能」を体験できる。フォンブース内には騒音を模したノイズが流れており、内と外とでオンラインミーティングをつなぐ。「AIノイズキャンセリング機能」を使用すると、発話者の声以外の雑音が聞こえなくなる。突発的に発生する外でのオンラインミーティングなどでも活躍しそうだ。

ブース内からオンラインミーティングを繋いでいる様子。ブース内に響く雑音は、AIノイズキャンセリング機能によってブースの外に届かない

 
 「在宅」ではDellが提供する、快適に仕事に取り組むためのデスク環境が整えられている。オンラインミーティング時に便利な機能が「オートフレーミング」と「目線修正」だ。「オートフレーミング」はカメラの正面に座らなくても、オンラインミーティング時の位置を自動で画面中央に修正してくれる。また「AI目線修正」はあたかもPCのインカメラに目線が向いているかのように表示してくれる機能。原稿を読みながらのプレゼン時などに役立ちそうだ。

 「オフィス」ブースでは、主にDell製品と共に「Dell Display Manager」の使用感を試すことができる。「Dell Display Manager」は外部モニターを利用した際に、利便性を高めるソフトウェアだ。モニターの物理ボタンでは意外と操作しづらい明るさやカラー形式、解像度、リフレッシュレートといった各種パラメータの調節や、画面上のウインドウの配置を整えてくれる機能、外部モニター接続時の設定を保存しておけるもの機能などがある。「Client Solution & AI Lab」ではDellの38インチ曲面モニター『U3824DW』や、オンラインミーティング用の各種ファンクションキーを備えた『KM900 Collaboration Keyboard & Mounse』などと共に、実際に使うことができる。

「Dell Display Manager」はMacやDell以外のメーカーのディスプレイでも使用可能
『KM900 Collaboration Keyboard』は十字キーの上にオンラインミーティングで使用する、カメラ、マイクのオンオフなどができるファンクションキーを搭載

 最後の「スタジオ」は、主に映像編集用の本格的なデスク周りを再現したもの。デスクに設置されたデバイス類は映像機器メーカーのBlackmagic Design。Dellの「Precision」ワークステーションも設置。

 同施設では他にも、1kg未満の超軽量ノートPC『Latitude 7350 Ultralight』、法人向け「Latitude」ノートPC、「OptiPlex」デスクトップPC、といった様々なDellの製品を実際に触ることができる。

 なお、こちらの施設は基本的に法人を対象としたものであるため、現在は一般の利用はできない。ただ法人であればDellの担当営業、もしくはウェブサイトの窓口を経由して無償で利用ができるとのこと。

 おそらく今後止まることのないAIの普及はビジネスサイドでも大きく盛り上がっている。むしろ企業に導入されることで、本人の感度や関心に関わらずAIを活用する機会を持つ人が増え、結果的にさらなる広がりにつながっていくかもしれない。もちろん、そこで培われた知見や技術は個人利用のアイテムに落ちてくることもあるだろう。今後各メーカーが仕事の現場でのAI利用をどのように広げていくのか、注目していきたい。

AI PCってナニモノ? 隠された創造力を「HP AI ラボ in 渋谷」で引き出してみよう

スマホやPC、ビジネス、クリエイティブの場など、AIの利用はますます広がっている。中でも、「AI PC」は新しい用語として登場し…

関連記事