「音のデバイス」として進化を遂げるApple製品 iPhone 16からAirPods 4まで、その革新と影響を探る

「音」といえば外せないAirPodsシリーズは大きく進化し、ヘルスケア領域にも注力

 Appleは今回、AirPodsシリーズを刷新。「AirPods Max」のマイナーチェンジモデルと新モデル「AirPods 4」を発表した。最新のAirPods Maxは、ミッドナイト、スターライト、ブルー、パープル、オレンジの5つの新しいカラーが追加され、よりユーザーの好みに合わせた選択が可能になったほか、USB Type-C充電にも対応し、利便性が向上している。ただし、機能的には従来モデルからの大きな進化は見られなかった。

 一方、AirPods 4は、AirPods Maxと異なり、従来モデルから大きく進化した。このモデルでは、上位機種のAirPods Pro 2と同じ「H2」チップの搭載により、Appleシリコンの力を活かしたインテリジェントなオーディオ体験を実現している。また、3Dフォトグラメトリーやレーザートポグラフィーなどの先進的なモデリングツールを用いて開発された新しいデザインを採用。より多くのユーザーに自然にフィットする形状を実現した。これによりAirPods 4は、Appleがこれまでにオープンイヤーデザインで作った中で最も先進的で快適な着け心地のワイヤレスイヤホンとなっている。さらに新しい音響アーキテクチャ、歪みを低減するドライバ、ハイダイナミックレンジアンプの搭載により音質面でも大幅な改良が行われている。

 注目すべきは、AirPods 4では通常モデルの他にANC(アクティブノイズキャンセリング)搭載モデルが追加されたことだ。このモデルでは、従来のAirPodsと同じオープンイヤー型でありながら、周囲の騒音を効果的に低減することが可能になっている。これまでAppleのイヤホンではカナル型のAir Pods ProのみにANCが搭載されていたが、耳を密閉しないANC搭載Air Podsの登場はカナル型特有の圧迫感や疲労感に抵抗があるユーザーにとっては朗報だ。

 さらにこのモデルにはAir Pods Pro 2と同じ「声を分離」機能も搭載されている。これにより、どのような環境条件でも一段とクリアな通話が可能になった。また、AirPods Pro 2の3万9800円(税込)と比べて、1万円安い2万9800円(税込)という価格面でのアドバンテージもある。これまでAir Pods Pro 2に手が出しづらかった人にとっては、AirPods Pro 2でのみ体験できたリッチな音の体験を安価で体験できる点は、買い替えや新規購入の判断材料になり得るだろう。

 また、既存のAirPods Pro 2も今秋のソフトウェアアップデートにより新たな進化を遂げる。世界保健機関によると、世界では約15億人が難聴を抱えている。この課題に対し、Appleは長年にわたり様々なアプローチを取ってきた。Apple Watchのノイズアプリ、iPhoneのヘッドフォン音量、聴覚のアクセシビリティ機能、Apple Hearing Studyなどがその例だ。

 AirPods Pro 2のアップデートは、これらの取り組みの集大成とも言えるもので、聴覚の健康を総合的にサポートする機能を提供する。この機能では聴力低下の予防から問題の早期発見、そして必要な補助までを一貫して行う。具体的には、AirPods Pro 2に世界初のオールインワンの聴覚健康をサポートする機能が追加される。また、科学的に実証されたヒアリングチェック機能により、ユーザーは自宅で簡単に聴力をチェックできるようになる。さらに臨床レベルのヒアリング補助機能も提供され、軽度から中程度の難聴が認められるユーザー向けに革新的な処方箋不要の補助を行う。

 くわえて、本モデルには「大きな音の低減」機能も導入される。この機能では、ユーザーが聴いている音の特徴を維持しながら、大音量の騒音にさらされるのを予防する。プレスリリースによると、これらの新機能は、今秋より100を超える国と地域でAirPods Pro 2のユーザーが利用できるようになるとのことだ。このアップデートにより、AirPods Pro 2は音を楽しむことに加えて、聴覚の健康を幅広くケアするウェルビーイングなデバイスへと進化を遂げようとしている。

 筆者の目には、現在のAppleが単なる消費者向けのデバイスを超えた、AI、健康管理や専門的な音声処理を含む総合的な「音のエコシステム」を構築しつつあるように映る。それだけにこのようなAppleの取り組みが今後、どのように発展し、音楽や映像、オーディオ、医療といった各業界、そして我々の日常生活にどのような影響を与えていくのか、大いに気になるところだ。音の体験価値を多方面で高めるApple製品の「音のデバイス」としての進化に引き続き注目したい。

“コスパ最強”のAirPodsが登場 ラインナップ刷新でAppleのオーディオ製品はどう変わったか

9月10日、アップルはApple WatchとAirPods、そしてiPhoneの新製品を発表した。本稿では、AirPodsシリ…

関連記事