「ちいかわ」「おぱんちゅうさぎ」……“不憫かわいい”キャラはなぜ若者の間で流行したのか
SNSを見たり、街を歩いていると、よく「おぱんちゅうさぎ」や「ちいかわ」のイラストやグッズを目にする。私自身もおぱんちゅうさぎが好きであり、グッズもいくつか持っている。それだけ、彼らの存在は若者の中で大きいものとなっているのだろう。GMOメディア株式会社が行った2023年に流行ったキャラクターランキング(※1)では、「おぱんちゅうさぎ」が1位、「ちいかわ」が2位にランクインするなど、爆発的な人気を誇っている。
これらは、Xで“不憫かわいい”キャラクターとして大ヒットし、若者に人気となった。“不憫かわいい”という言葉は、すごくマイナスな言葉のように思えるが、そんな様子がなぜ若者の支持を得たのか。本記事ではこれらのキャラクターが若者に及ぼした影響と、キャラクターが人気を獲得した背景について探っていく。
おぱんちゅうさぎ、ちいかわのXアカウントでは、日々「頑張り屋だけど、どうしても報われない。だけどひたむきに生きている」様子が描かれている。たとえばおぱんちゅうさぎでは「給食のカレーを運んだけれど、思いっきりこぼしてしまう」描写(※2)、ちいかわでは「ハチワレとちいかわが草むしり検定の5級の勉強を一生懸命にするも、ちいかわが結局落ちてしまう、だけど協力しながら何度も挑戦する」描写(※3)などが印象的である。
こういった可愛らしい見た目のキャラクターが何度も理不尽な目に遭ったり、何度も失敗したりする、だけど何度も立ち上がる、その不遇さや頑張りに共感を覚え、「応援したくなる」という若者が、筆者をはじめ、支持している人たちのなかでも多いようだ。
現代社会に暮らす多くの若者が学校や会社、家庭などで感じるストレスやプレッシャーを、「おぱんちゅうさぎ」や「ちいかわ」をはじめとする“不憫かわいい”キャラクターに投影し、気持ちを和らげたり癒しを貰っている若者が多いのだろう。
これらのキャラクターを通して、現代社会に生きる若者の悩みが見えてくる。特にすべての悩みの基礎となる人間関係に関しては、SNSの普及で相手の生活がある程度見えるようになったことも大きい。みんなが「良いところ」だけを写すこの世界において、知らなくてもよかったことまで知ってしまうなどで関係が拗れたり、プレッシャーを感じたりと、昔よりもはるかに多い悩みを背負ってしまっていると考える。
このように、SNSによってかつてよりも多くの悩みを抱えてしまっている若者がいる現代では、こういったキャラクターを通じて若者たちの悩みに向き合い、一つひとつ対処していくことが求められる。
現代の若者の心情を投影したこれらのキャラクターの人気が世間の共感を呼び起こし、周りの人たちがキャラクターを通して若者の声を聞くことで、彼らが抱えている課題を理解することに繋がるかもしれない。
※1:https://www.gmo.jp/news/article/8749/
※2:https://x.com/opanchu_usagi_/status/1570402142351167489
※3:https://x.com/ngnchiikawa/status/1321887916851781632