水溜りボンド・カンタが映像制作会社を立ち上げた理由 10年間「映像とプラットフォーム」に向き合い続けたクリエイターの“創作論”

 今年10月で結成10周年を迎える2人組動画クリエイター・水溜りボンド。コンビとしても400万人超えのYouTube登録者を抱える日本有数のトップクリエイターであり、これまでテレビにラジオにと活躍の場をプラットフォームの外側へと広げてきた。

 その水溜りボンドにおけるブレーン的役割のカンタは、動画クリエイター以外にも「佐藤寛太」名義でミュージックビデオ(以下、MV)などの映像監督として活躍。直近では青山学院150周年の記念映像で監督を務めたほか、今夏リリース予定の縦型ショートドラマアプリ『SWIPEDRAMA』でもオリジナル映像を手掛けている。

 個人YouTubeチャンネル「カンタの大冒険【人間】」の登録者も開設から3年で30万人を突破するなど、プラットフォーム・創作形態の垣根を超えて活躍するカンタ。リアルサウンドテックでは、そんな彼に“動画クリエイター・映像作家”としての創作論について掘り下げるインタビューを実施。10年間「映像とプラットフォーム」に向き合い続けた彼ならではのスタンスや、映像制作会社を設立した背景、“YouTuber”であることへの誇りと負い目などについて、過去に例を見ないほど、たっぷりと語ってもらった。

水溜りボンドのカンタと映像作家・佐藤寛太の棲み分け

ーーかつて室井雅也さんの「ヒロインは君で」「季節のグルーヴ」のMVで監督をした際にインタビューをしました。初めてMV監督をしたことで「果てしなさ」を感じたり、周りのクリエイターからいい反応をもらえたりしたと話していました。以降もいろんなMVや映像作品を手掛けていますが、動画クリエイターである水溜りボンドのカンタと、映像作家・佐藤寛太の棲み分けは、そこからどのように変化していると考えますか?

水溜りボンド・カンタ

カンタ:僕のなかでは棲み分けというものは変わってないつもりで。佐藤寛太という人格がいて、それが生きてきた過程で水溜りボンドのカンタになっているだけなので。まだ水溜りボンドを始める前の「佐藤寛太」はTwitter(現:X)のフォロワーなんて500人くらいでしたけど、カンタとして活動するなかで、いまは100万人を超える方にフォローしていただいて、普通じゃないことも経験できて、すごく成長をさせてもらいました。ただ、それと同時に佐藤寛太も自分自身なので、色んな経験を積んで、大変なことも乗り越えてパワーアップしているわけです。別物というよりも「光が強くなったら影も濃くなる」くらいの感覚ですね。

 でも、ある時期は友だちに色々言われていました……。昔はテレビ番組の話とか、そういうなんでもないことを話していたのですが、YouTubeの活動がすごく上り調子だったときは、口を開けばYouTubeのことばかり言っていて。そのときは「おい、カタカナカンタが出てきてるぞ!」と注意されたり(笑)。

ーー登録者がうなぎ登りだった時期は、それこそ身も心もYouTube漬けだったんでしょうね。

カンタ:普通に就職しようと思っていたなかでYouTuberになって、人生を失敗するわけにはいかないし、毎日目の前で「あなたはこの仕事を続けられるか」を採点されている感じで、それに飲まれちゃってそうなっていたんだと思います。でも、それを経験できたことで、自分のなかで本当に重要な感覚や表現したいものが固まっていったので、今となってはいい経験でした。

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