ジャンクで買ったフィルムカメラの描写に夢中 名機『OLYMPUS PEN D』の色あせない実力

そもそも『PEN D』はどんなカメラ?

 改めてこのカメラの詳細を説明すると、『PEN D』は1962年に発売されたカメラで、「最高級のPEN」を目指して開発されたという。カメラの枠をはみ出るほど大きなレンズは開放F値1.9を誇る。

 ピント合わせは目測式で、左手側のバーを上下することでピントを調整する。露出計は搭載されているもののカメラ本体とは連動せず、露出系が示すLV値を参考にシャッタースピードと絞りを調整して撮影する。

下部にあるバーを左手で操作してピント調整を行う。1.2m、3mの位置にクリックがある。目測式なので“3m、F8ぐらい”で撮影するとヒット率が高い
手前にあるメーターはセレン式の露出計。レンズ環にもEV数値が表示されている(矢印参照)ので、露出計の針が示すLV値を参考にレンズ環でシャッタースピードと絞りを操作して数値を合わせると、適正露出で撮影できる

 なお、「PEN D」には後継機があり、露出計がセレン式からCdsへと変更された『PEN D2』、レンズがさらに明るくなり、開放F値が1.7になった『PEN D3』が存在する。後継の方が性能は高いものの、私が今回購入した初代機もとてもよく写る機種である。また初代にのみ搭載されているセレン式露出計はCdsと違い、電池を必要としないところも気に入っている。

レンズはF.Zuiko 3.2cm F1.9。焦点距離は35mm換算すると45mm程度。6枚のレンズで構成された豪華なレンズだ。分解時にカニ目はずしで銘板を痛めてしまった……

 余談だが、PENというのはそもそも大口径のレンズを搭載するうまみが少ないカメラだ。ハーフ判のためボケ量にもそこまで期待できず、むしろ絞ってパンフォーカス気味にして撮ればピントのことを気にせず気軽に撮影できるだろう……という、のちの『写ルンです』にもつながるような設計思想で作られており、実際「PEN EE」などはピント合わせの機構自体が存在しない。

 そんなカメラに開放F値1.9のレンズが乗っているのはちぐはぐなようだが、使っているとそこが好きになってくる。ちなみに最短撮影距離は0.8m、開放時の被写界深度(ピントの合う幅)は約10cmで、これらを目測で捉えるのは至難の業だ。ただ、これが当たると気持ちいい。

 大変気に入って300枚ほど撮影し、引き続きバシバシ撮るぞ~と思っていたら巻き上げの機構が壊れてしまい、なんと撮影不能になってしまった! あまりに惜しいのでその後、ジャンクの『PEN D』を数台購入、工具なども買ってひと月ほどかけて執念でなんとか直した。数万円ほどの追加費用がかかってしまい、ジャンクで4000円だったカメラに対してはだいぶ手痛い出費に……。

 と、いうわけで中古でフィルムカメラを買うなら、きちんと整備された、できれば保証のあるものを実物を見て買うことを推奨する。『PEN D』の場合は、特に後玉にクモりのない機体は貴重。購入時にはスマートフォンのライトでレンズを照らしてしっかり確認するとよいだろう。

RAW現像をいったんやめ、『Nikon FM2』で基本に帰ってスナップを撮る

15年ぶりに『Nikon FM2』のフィルム一眼レフカメラを購入し、懐かしの機構とフィルム写真の魅力を再考する機会を得た。

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