メタバースで撮影された映画の祭典『第2回VRCムービーアワード』 受賞作から3作品を紹介

『VRChat』でできる表現を最大限に活かしきった『Monotone-君と僕が出会うまで-』

 『Monotone-君と僕が出会うまで-』は、裏社会の中で無機質な日常を過ごしている主人公・ムリフェインが、ある日猫に出会うことで日常が変わり始める作品だ。

 映画としてはモノトーンの映像にセリフはなしと、こう聞くと地味にも思えてしまう作りになっている。しかし、劇中の音楽や美術、演技のクオリティが高く、引き込まれるような作品に仕上がっている。美術賞と音響音楽賞を授賞したのも、こうしたポイントを評価されての結果だ。

 くわえて同作は、『VRChat』に慣れ親しんでいる人ほど「どうやって撮影したのだろうか」と疑問に思う場面が多々あり、良い意味で『VRChat』らしさを感じられないところも評価ポイントだ。

 筆者が特に目を見張ったのは終盤の町中をムリフェインが出歩くシーン。街へ出歩くシーンを普通に撮影すると単調な動きになり、光の当たり具合もキレイにならないように思える。しかしそういった不自然さは少しも感じられない。作品のために撮影スタジオを作り上げているので、キレイに撮影できるポイントを設けるなど、工夫しているのかもしれない。

 この他にも『VRChat』では難しいとされる物体に干渉するような演技も見どころだ。劇中で挙げるのであれば、ドアを開ける動作や食事、タイピングといったものだ。その動作自体を真似ることはできても、映像作品として見たときにCG同士が干渉して貫通してしまったり、物体と人物の動きがズレてしまったりすると不自然に見えてしまい、「ああ、『VRChat』だな」と現実に引き戻されてしまう。

 『VRChat』やソーシャルVRに明るい人ほど、萎えてしまうポイントなのだともいえる。本作ではカット割りで違和感を抑えているほか、モデル/アクター経験が豊富なALDLA氏による演技力によって、ムリフェインの動きを自然に見せている。

 バーチャル空間で撮影された映像作品で、炎や爆発といった派手な特殊効果に頼らず、地力が試されるような「演技力」「構図」を中心にした画作りを実践する。それができるのは、長年の制作で培った経験と技術の賜物だろう。

 『Monotone-君と僕が出会うまで-』を見た後は、普段の『VRChat』を楽しんでいるユーザーの映像なども見てもらいたい。制作者の努力が直感的に分かるはずだ。

[RAINDANCE IMMERSIVE 2024 nomination ] ホテル・カデシュ『Monotone-僕と君が出会うまで-』|本編|全編VRSNS撮影映画

 今回紹介した3作品以外にも、『第2回VRCムービーアワード』には多数の作品がノミネートされた。冒頭でも伝えた通り、授賞式自体も『VRChat』内から生放送で行われており、現在もアーカイブが視聴可能だ。

 会場の雰囲気や受賞者たちのスピーチを見るだけでも、コミュニティの大きな熱量を感じられるはずだ。3時間弱の長丁場にはなるが、興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。

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「VRCムービーアワード」公式YouTubeチャンネル

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