『カメ止め』監督が描く「AI社会の婚活」 SNSで話題となった理由とは

 現代は婚活にAIを活用するのが当たり前になりつつある。相手の職業、年齢、性格、趣味、外見などから適正な相手かどうかをデータ化し、見極める指標とする。

 婚活だけではない。就活アプリ、マッチングアプリ、VODなどAIがあらゆる場面で自分の好みや条件に合わせて、選択肢を絞ってくれる。たとえばNetflixは、自分の好みの作品かどうか、マッチ度を表示してくれる。それが正解だと信じて、選択する人も多い。

 でももしかしたら、最高に面白いと思う作品が消された選択肢のなかに眠っているかもしれない。人生を変える相手が、レコメンドの外側にいたかもしれない。

 今回は、そんな気づきを与えてくれるショートドラマを紹介する。監督・脚本、撮影から編集まで務めたのは、2017年に公開された『カメラを止めるな!』でお馴染みの上田慎一郎氏。

 TikTokとKDDI株式会社が連携して行っている「#ショートフィルム Supported by au」というイベントのアンバサダーとなった上田慎一郎氏が、自身のTikTokアカウントで縦型短編作品を毎週発表しているのだが、そのなかで発表した「みらいの婚活」というショートドラマがSNSで大きな話題となった。

 「みらいの婚活」は1話が約2分の全3話という短さなのだが、第1話は689万回再生、第2話は135万回再生、第3話は83万回再生という数字を叩き出した。(2024年5月2日現在)

大バズりしたショートドラマ「みらいの婚活」

 物語は、『ハピネスVR』という婚活イベントに参加した男女2人の出会いから始まる。メタバース空間で行われる婚活では、相手の頭の上にはマッチ率とステータスが表示され、会話を交わすことなくある程度相手の情報を知ることができる。

 普通ならそのデータをもとに狙う異性を絞り込んでいくのだが、主人公の2人はマッチ率が26%にもかかわらず交流を深めていくのだ。

 学歴、障がいなどマッチ率以外にも2人のあいだには乗り越える壁がいくつもあり、周りから「諦めることも必要よ」と諭されてしまう。それでも2人は諦めず前に向かって進んでいくのだが、その姿にはデータのなかにはない、互いを信じて生きていく強さが写し出されている。

 近年はMBTI診断やパーソナルカラー診断など、人の性格や外見をいくつものタイプにカテゴライズし、相手との関係性、着る服、メイクまで役立てられる環境にある。ただ、「私はこのタイプだからこのタイプの人とはこう関わる方がいい」「この体型だからこの服は似合わないだろう」など、試してみる前から選択肢から外し、諦めてしまってることも増えているのではないだろうか。とても便利な機能だが、気がつけば統計やデータに気を取られすぎて、自ら世界を狭める可能性もある。

 今回の作品は、そんな現代ならではの気づきを与えてくれるような物語となっている。だからこそ、ここまで多くの人から反響が起きたのだろう。

 上田氏はさらに2024年5月3日に、「ミュート眼鏡」というショートドラマを発表し、こちらもTikTokで72万回再生を突破している。現代ならではの作品の数々を、ぜひ隙間時間で楽しんでみてほしい。

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