世界を編み直す、小さな大冒険へーー『LoL』のスピンオフクラフトRPG『バンドルテイル』レビュー

 モッフモフでかわいい『League of Legends』シリーズのマスコット的存在、ヨードル。そんなヨードルたちが暮らすバンドルシティの危機をで救うクラフトRPG、『バンドルテイル:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー(以下、バンドルテイル)』が、2024年2月22日にNintendo SwitchとPC向けに発売された。

 本作は『League of Legends(以下、『LoL』)』の世界を舞台とした、スピンオフ作品群の最新作だ。2023年には同じくスピンオフ作品として『メイジシーカー』『コンバージェンス』『ヌヌの唄』の3作がリリースされている。

 PC版『LoL』が2009年に正式リリースされてから、はや15年……。本編『LoL』では、歴戦のサモナーたちが激しいバトルを繰り広げている。息の長いコンテンツであることは有難いのだが、今から『LoL』を始めるとなると、尻込みしてしまう方もいるだろう。まして、チャンピオン(キャラクター)たちの背景設定や世界観を知ろうとすればかなり大変だ。

 本作『バンドルテイル』は、そんな『LoL』の物語を知らない方でも、どっぷり入り込める作品となっている。初めて『LoL』の世界に触れる方はもちろん、本家『LoL』で遊んでいるプレイヤーにもおすすめだ。

 なお、今回の執筆にあたっては、『Nintendo Switch』版の体験コードをいただいてプレイしている。ここからは実際にプレイしていくなかで感じた魅力・特徴を紹介していこう。

崩れたポータルを編み直し、友達を探す旅

 本作の主人公は、『LoL』に登場する二頭身の魔法生物「ヨードル」。『LoL』のチャンピオンでいうと、ティーモやコーキ、ベイガーなどと同じ種族のキャラクターだ。主人公はプレイヤーの分身となる本作オリジナルキャラクターであり、見た目や名前も自由に決められる。

 物語の舞台は、ヨードルたちが暮らす世界「バンドルシティ」。主人公が暮らすのは、外界から切り離された穏やかな島・ヤーンビルだ。101年の修行を終えた主人公は、友達のクローバーとパーティに出かけるのだが、会場でとんでもない事故が発生してしまう。

 ヨードルたちの世界「バンドルシティ」の各地をつなぐ毛糸のポータルが崩壊、クローバーが行方不明になってしまったのだ。ポータルを修理できるのは、「編み術」と呼ばれる魔法を使える主人公だけ。世界のために、そして友達のために、主人公は旅に出るのだった……。

 こうして聞くと、少しシリアスなストーリーに思えるかもしれない。しかし、実際にはプレイヤーがシリアスさを感じることは少ないだろう。焦らず、急がず、のんびりと冒険を進めていける。世界はピンチなのだが、ゲーム自体はスローライフだ。

ストレスフリーで遊びやすい! 冒険・クラフトを気軽に楽しめる

 本作のジャンルは、いわゆるクラフトゲームに近い。フィールドを駆けまわって、様々な素材を集めてクラフトするのが基本の流れだ。

 しかし、本作と『Minecraft』や『Craftopia』のようなクラフトゲームには、ひとつ明確な違いがある。それは、“拠点を移動できる”ことだ。

 本作で主人公が拠点にするのは、なんと背負ったカバン。広い地面にカバンを置くとあら不思議、カバンが家になってしまうのだ。出先で拠点を作ったり、アイテムを取るために拠点まで戻ったりする必要もないので、本当に『冒険している』感覚になる。

 時には、ストーリーを進めることも忘れて、アイテム集めに奔走したくなるかもしれない。アイテム集めやクラフトに夢中になって、ストーリーを忘れてしまった……! となっても大丈夫。ストーリーやクエストの内容は、画面の右側を見ればすぐにわかる。クラフトゲームが初めてでも、迷子にならない親切設計だ。

 旅の途中でお金が必要になったら、カバンの周りで屋台を開こう。料理を作って、お客さんに提供するのだ。あまりお客さんを待たせると帰ってしまうので、効率よく調理するために、あれこれ工夫するのも面白い。

“感情が経験に変わる” 冒険しながらスキルを増やそう

 本作の主人公であるヨードルは、感情を経験に変えて技を磨いていく。アイテムをクラフトしたり、初めて見る景色に感動したりすることで感情(ポイント)が溜まり、この状態で睡眠をすることでスキルポイントを得られるのだ。

 スキルポイントは「編み術」「魔術」などのスキルを解放するのに使用する。ストーリーの進行に必要なスキルもあれば、地味ながら便利なスキルもある。ツリー形式になったスキルを、どんな順番で取得していくかは、プレイヤー次第だ。

 また、マップ上にある障害物をどかすのに、特定のスキルが必要になることも。必要なスキルをツリー上で探して、どうにかたどり着こうとついつい必死になってしまう。ポイントを集め、困難を乗り越えて先に進めたときの達成感は並みではない。

美麗でカワイイ! ピクセルアートが魅せる世界観

 本作のグラフィックは本家『LoL』のような3Dモデルではなく、昔ながらのピクセルアートを使用して作られている。このピクセルアートが、本作の独特な世界観作りに一役買っているのだ。

 最近では3Dモデルを使ったゲームが主流になり、美麗なグラフィックも当たり前になってしまった。しかし、本作のピクセルアートは、3Dの世界を見慣れたプレイヤーでも圧倒されるほどのクオリティだ。

 たとえば、主人公をはじめとするヨードルたちのドットは、可愛らしい寸詰まり感を醸し出している。そんなキャラクターたちがちょこちょこと歩くのだから、可愛いもの好きのプレイヤーにはたまらないだろう。

 それから、本家『LoL』で暴れまわっている一部のチャンピオンたちも、ドットの姿で登場する。対戦中は脅威に感じるキャラクターも、ドットになってしまえば可愛いものだ。

 一方で、背景の描き込みなどにも注目してみてほしい。風にそよぐ緑、そびえたつ岩山、流れ落ちる滝……。同じドットで表現されているはずなのに、質感の違いすら感じられる作り込みには、溜息さえ出てくる。

 そんなピクセルアートを生み出したのは、本作の開発を担当したゲームスタジオ・Lazy Bear Games。同スタジオは『Swag and Sorcery』や『Punch Club』など、ピクセルアートを用いた独特の世界観を持つゲームを送り出してきた。丁寧に作り込まれたピクセルアートたちは、まるで魔法を吹き込まれたような出来栄えだ。

総評:『LoL』未プレイでも楽しめる、癒し系クラフトRPG

 ヨードルたちが暮らすバンドルシティの危機を救うため、世界をつなぐ旅に出るクラフトRPG『バンドルテイル:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー』。

 クラフトゲームとして最大限ストレスを排除したシステムは、サクサクと快適に遊ぶことができる。そして細部まで描き込まれたピクセルアートの世界は、プレイヤーに癒しを与えてくれるだろう。

 本家『LoL』のプレイヤーはもちろん、未プレイでも楽しめる点も魅力だ。本作から『LoL』ユニバースに入るもよし、本家『LoL』の箸休めに楽しむもよし。モフモフのヨードルが繰り広げるスローライフな冒険物語を、ぜひ体験してみてほしい。

 『バンドルテイル:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー』は、Nintendo Switch、PC(Steam、Epic Games Store、GOG.com)にて2月22日配信開始。価格は通常版が3,699円(税込)、追加コンテンツが付属したデラックス・エディションが4,420円だ。

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