『ボカコレ2024冬』を締めくくる特別な一夜に 『Voca Nico Japan 2024』イベントレポート

 2月22日から4日間にわたり開催された『ボカコレ2024冬』の盛況を締めくくるスペシャルイベント『Voca Nico Japan 2024 Powered by ボカコレ』が、2月25日、東京・SHIBUYA THE GAMEにて開催された。本稿では、イベントオフィシャルレポートの内容をお届けする。

 ニコニコ超会議のボカロDJイベントとして親しまれてきた「Voca Nico Night(略称:ボカニコ)」を、ボカコレが完全プロデュースする形で生まれ変わった本イベント。『ボカコレ2024冬』の各ランキング上位から選抜された才能が、「超会議2024ボカロエリア」で開催する『超ボカニコ』のDJとして出演できる。第1回目は、ささみにく、なみぐる、Fushi、柊マグネタイト、r-906、原口沙輔、八王子P、picco、えあ による、ボカロ曲のDJパフォーマンスが繰り広げられた。また、ニコニコ生放送「ボカコレステーション Day3」では、r-906に限定してDJパートを生中継。オフライン/オンラインの興奮が交錯し、ボカロ愛でつながる一体感は、キャパシティ300人の小箱を超え、無限に広がるボカロワールドを創造したといえるだろう。

 エレクトロサウンド、ジャズ、ギターロック……さまざまな音楽ジャンルを飲み込んだボカロPによるノンストップボカロ&リミックス。新しいアレンジで生まれ変わった一夜限りのトラック群が、大音量でフロアを揺るがす。プレイされる曲は、フロアが生み出すその場の空気感で選ばれるという面白さもある。観客の熱気、高揚感、一体感。――まさに、今が音になる瞬間だ。

イベントにふさわしいラインナップを披露したr-906

 記憶に残るDJプレイを語るなら、まずr-906のセットを外すことはできない。耳を貫くダイナミックなビートと、高速テンポに乗せた初音ミクの声が生み出す「プシ」のヘビーサウンドに空気が震え、音楽の圧倒的なパワーが肌で感じられた。ヒートアップに導いた「流転光速(フロクロ作)」「フォニイ(ツミキ作)」。r-906の音楽性の幅広さを際立たせていたのは、「Catchy !? (Nyacktas remix)」や、ラップと重厚なサウンドが特徴的な「Parasite」など、うねるベースと重低音が際立つトラック群と、柔らかなトーンの「あまもや」「三日月ステップ2023」といったトラック群のコントラスト。ジャングルのような密度の高いビートと、宙を舞うメロディが絶妙に絡み合い、脳内に染み渡っていく中、「まだ踊れますか?今から30秒自由に踊りましょう!」とあおり、フロアを踊らせた。なかでも『ボカコレ2022春』TOP100ランキングで1位を獲得し、強力な名刺となった「まにまに」のMVが流れる中でのDJプレイは圧巻。ドラムンベースの魅力を随所に散りばめたトラック群は、この日のイベントに相応しい、ラインナップだったといえる。

原口沙輔は音楽とテクノロジーの未来を感じさせる

 「テレキャスタービーボーイ(すりぃ作)」「流転光速」「クーネル・エンゲイザー(電ǂ鯨作)」「ド屑(なきそ作)」「深海少女(ゆうゆ作)」といった原口沙輔による独特な視点でリミックスされたトラック群は、鋭さを増し、異常な熱を送る音へと昇華していく。まるで、未来都市を駆け巡るビートと、デジタルノイズが生み出す遊び心に満ちた風景。「ホントノ」で放たれる音圧は攻撃的で、常識を真っ向から覆す破壊力はすさまじい。それにしてもハイパーポップの枠にとらわれない自由な表現は、原口沙輔ならではの魅力だ。なかには今朝作ったという楽曲の嬉しい披露も。「ちっちゃな私(マサラダ作)」で起きた平和なシンガロング。ボカロ曲とパフォーマーの楽曲が共に愛され、ボカロという共通項がフロアを熱くする力となっていた。2023年5月に名義変更後、『ボカコレ2023夏』TOP100ランキングで11位に躍り出た「人マニア」は、短い演出でありながら熱量の高い楽曲だった。「ウム」「見つけて」「アコトバ(Sped Up)」と続いた実験的なセットで、音楽とテクノロジーの未来を感じた。

八王子Pの“たしかな愛”がフロアを包む

 「沙輔くんに大きな拍手を!」という呼びかけで始まった八王子PのDJパフォーマンス。爽やかな「Blue Star」がかかると、DJイベントに欠かせない存在であることを改めて思い知らされる。キラキラ輝くテクノサウンドで空間は一瞬にして宇宙へと変貌。歴を重ねたベテランとしての深みと厚みを感じさせる重低音が心地いいダンスミュージック「Baby Maniacs」「Sweet Devil」では、初音ミクの歌声が存在感を放つ。「ボカコレですけど、お酒飲めるんですよ! 乾杯!」と八王子P。『ポケモン』とのコラボ曲でもあり煌びやかなダンスフロアのアンセム「PARTY ROCK ETERNITY」が流れると、手拍子が鳴り響き、時間の経過ごとに深淵に潜っていくような音像が広がっていく。壮大なスケールのサウンドが印象的な「RAD DOGS」に続く「気まぐれメルシィ」「ラヴィ」では、観客によるシンガロングが炸裂し、大いに盛り上がりを見せていたのも忘れられない。そして「俺は何度も言うけど、ここに居るのはkzさんのおかげだから!」と叫び、kz(livetune)との共作曲「Glimmer」をプレイ。たしかな愛がフロアを包んだ瞬間だった。

 本稿では紹介しきれなかった新進気鋭のボカロPたちによるDJパフォーマンスも沸いた本イベント。ジャンルや年齢を超え、共通するのはボカロ愛。成功に導かれた第1回につながる次なる章に今、わくわくしている。

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