“100年に1度の大変革期”を迎える自動車業界を「EV」と「アウディ」の2つから考える

EV車は低重心で強固な構造

 このように力強い走りや静粛性がEVの魅力の一つだが、内燃機関搭載車と構造は大きく変わってくる。まず当たり前だがエンジンがない。エンジンは鉄やアルミの塊ゆえ衝突安全性を考慮するとフロントエンジンのクルマは前輪よりも前にクラッシュブルゾーンを作る必要がある。最近ではクルマの基本骨格がだいたい決まっているので、そのスペースとエンジンを除いた部分が車内スペースに。

 対してEVはそのスペースを必要以上に確保することがないので、車内を広く確保できるメリットがある。『Q8 e-tron』の場合はエンジンスペース部分のフロントボンネット下は60リッター容量の荷物スペースになっている。またアウディならばコンパクトSUV『Q4 e-tron』の後席空間は『Q7』とさほど変わらない。

 EVで一番の重量物はバッテリーになる。これを車体床下に収めることで重心が低くなる。この低重心は『Q8』で伝えるならば、障害物回避を想定したダブルレーンチェンジでもガソリンエンジンのそれよりも安定した回避が可能。またアウディでは車体下をフラットにし、規則的に凹みをつけている。これは乱暴な表現だが、ゴルフボールのディンプルと同じような役割で床下に流れる空気を整流化しクルマを安定させるもの。

 しかしEVにはデメリットも。バッテリーの衝突安全性を確保するために堅牢な構造とせざるをえず、車重が増えてしまう。するとタイヤの減りが若干早くなる傾向に。そして一番は充電時間の問題だ。

EV車は衝突安全性を考慮して、クルマの前輪にクラッシュブルゾーンが作られている。
アウディでは車体下をフラットにし、規則的に凹みをつけることで、床下に流れる空気を整流化し、クルマを安定させている。

インフラ整備が始まった今こそ

 その充電を考えるとEV利用のハードルが高くなりそうだが、アウディの考える充電は3つだとされる。ひとつは「基礎充電」。これは自宅やオフィスなど定期的に時間をかけて充電できるものでその多くは「普通充電」になる。次の経路地充電は、目的地へ向かう途中の充電で高速道路のSAや立ち寄った商業施設などの「急速充電」で、その時間は長くて1時間ほどのもの。またこの急速充電はブランドオーナーだけが使える付加価値を持たせるものが増えている。例えばアメリカのテスラ社のスーパーチャージャーなどがそうだ。

 アウディではポルシェ、VWとともに3ブランドのオーナーだけが使える150kW規格の急速充電ネットワークである「PCA」を整備。現在ではディーラーなど全国300カ所以上に90-150kWの急速充電器を用意している。最後は目的地充電と呼ばれるものでホテルやゴルフ場など数時間単位で滞在している間に充電する。余談だが充電器の数字はバッテリーに押し込む力で、例えば50kWhのバッテリーを積むクルマに5kW出力の充電器なら満充電まで10時間、50kW出力なら60分かかる。しかし150kW出力の充電器からチャージした場合、満充電に必要な時間はおよそ20分という計算だ。EV車の普及に関してはその充電時間や設備が足かせと言われている。しかし、メーカーが本腰を入れてインフラを整備し、そのハードルが下がり始めた2024年は、EV本格普及の「夜明け前」なのかもしれない。

●参考情報

アウディジャパン:https://www.audi.co.jp/jp/web/ja.html
アウディQ8 e-tron:https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/q8-e-tron/audi-q8-e-tron.html
アウディジャパンお問い合わせ:0120-598106

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