『未解決事件は終わらせないといけないから』に高評価が集まる理由 後続作への影響は大きい?

『未解決事件~』がもたらすのはノベルゲームの「ゲームデザイン再考」?

 高評価につながったであろうもうひとつの特徴は、「ゲームシステムによって、物語が最大限に心を揺さぶられるものとなっていた」という点だ。

 先にゲームシステムについて紹介したように、本作は「記憶のかけら」を並び替えることで全容が把握できる仕組みだ。これにより、プレイヤー自身の手でミスリードを紐解いていく体験が味わえる。また、解禁に条件があるかけらの存在によって重要な情報が開示されるタイミングは適切にコントロールされていることで、物語体験としての質は保たれているのも巧みなところだろう。終盤で味わえる感動は、これらの過程があってこそのものだった。

 本作をプレイして、いくつもの証言を動画で視聴し、それらのなかに登場したキーワードによって新たな動画を見つけていくアドベンチャーゲーム『Her Story』との類似性を感じた人は多いと思う。

 『未解決事件~』は『Her Story』のゲーム内容を、「テキストを読む」ことを主体としたゲームジャンルであるノベルゲームへと引き寄せたタイトルという側面があると言えそうだ(『Her Story』の開発者であるサム・バーロウ氏の最新作が、より映像作品の特性に寄せた『IMMORTALITY』となったのとは対照的だ)。

 国内のノベルゲーム文化について考えてみると、とくに美少女ゲームを中心に「ゲーム性を減らし、物語を味わうことに特化していった」時代が長らく続いたというのは間違いなく言える。こういった文化に影響を受けた海外インディー系のノベルゲームもまた、これに習って発展してきた面は大きい。

 いまや物語の分岐といった最低限のゲーム性すらも廃し、一本道の物語をただ読み進めていく形式のタイトルも珍しくない。こうしたタイトルにも素晴らしいものがたくさん存在するし、ノベルゲームがひとつの確固たるフォーマットとなったからこそ、そのインターフェースや語り口などの「約束ごと」を独自に発展させたり、むしろ逆手に取ってプレイヤーに唯一無二の体験を提供することに成功したタイトルも枚挙にいとまがない。

 しかし、『未解決事件~』が日本においても広く受け入れられたのは、「別の可能性」を示したことにはならないだろうか?

 『未解決事件~』の高評価にともない筆者が期待しているのは、ノベルゲーム文化において作品規模を問わず、「物語体験を最高のものにするためのゲームデザインの模索」が活発化していくことだ。

 『未解決事件~』がもしもノベルゲームの一般的なフォーマットを踏襲し、ゲーム性も低いタイトルであったなら、物語としては同一のものであったとしても、あれほど印象的な体験にはならなかっただろう。

 「テキストを読む」ことを主体としたゲームであっても、その物語に最大限の価値を宿すためのゲームデザインは、形式化されたインターフェースを再考することも含めて、まだまだ検討される余地があるーーもし、同じように感じた作り手がどこかに居るのならば、『未解決事件~』と同様に「この物語は、このゲームデザインだからこそ最高のものになった!」と称賛されるような新たな傑作が、近い将来現れるかもしれない。

 個人的にはそれが「その時代の作者の個人的なテーマ」を盛り込んだ、その瞬間だから作れるような短編であったなら、長年にわたって普遍性を持つような、印象深い物語体験になるような気がしてならない。

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