“バ美肉”に欠かせない「声」にまつわる技術を惜しげも無く公開 『バ美肉紅白2023』レポ
バーチャル美少女ねむ:全人類をkawaiiボイスにするためのたった一つの方法
アプローチ:ボイスチェンジャー
目標:訓練ゼロ&スイッチひとつで誰でもkawaiiボイス!
使用機材:Roland『M-100FX』(HWボイチェン、ピッチ&フォルマント+12)
前提として、男性と女性の声の高さには一般的に約1オクターブの違いがあるため、kawaiiボイスを出すには「いかにして声の高さを上げるか」が一つの課題となる。ボイチェン勢といっても、有名VTuberなどはクオリティの高い声を実現するために音声技術(筋肉)と併用している人がほとんどで、非常に難しい技術なのである。
そんななか、筆者は「全人類をkawaiiボイスにする」方法を確立するため、筋肉は一切使わず「スイッチひとつでkawaiiボイス」を目指すアプローチをとっている。このためにはパワー(ピッチ改変性能)とスピード(低遅延)という2つの矛盾した性能を高いレベルで併せ持つボイチェンが必要となり、こうした要求を満たす機材の入手は難易度が高くなってしまう。参考までに、筆者が使用しているRoland『M-100FX』は18年前の製品で、現在は生産を終了している。Rolandにはぜひ再販してほしいところだ。
hal:15年修行してわかった両声類になるための“5つの奥義”
アプローチ:両声類
両声類修行歴:約15年
修行方法:毎日ひたすら歌う!
つづいて登壇したのはhalさん。2008年から両声類シンガーとして活動し、その圧倒的な歌唱力には定評があり「歌のおねにいさん」の異名を持つ人物だ。両声類VR音楽ライブ「かえるの音楽会」を主催するほか、アバター制作サークル「KeroPiyoWorks(けろぴよワークス)」モデリング担当として各種VTuberの3Dモデル制作も手掛けている。なお筆者が主催した歌ってみたコンテストでは、今のところ参戦すると必ず優勝してしまい恐れられている。
halさんは、15年修行して辿りついたという、両声類になるための“5つの奥義”を解説した。しかし、両声類の道に近道はない。halさんが披露したのは「なりたい声をみつける」「録音して現実と向き合う」「普通に歌が上手くなる為の練習」「気持ちから入る」「とにかく継続」という5つの心構えであった。事実、halさんは圧倒的な練習量による安定感のある美しい歌唱を披露してくれた。
もこねもこ:ボイチェンは愛! 愛の力をボイチェンに流し込む
アプローチ:ボイスチェンジャー
目標:可愛さとクールさを併せ持つ男の娘ボイス!
使用機材(ボイスチェンジャー):『Little AlterBoy』(SWボイチェン、ピッチ&フォルマント+2.5)
もこねもこさんはボイチェンを愛するバーチャルシンガーだ。「ボイチェンお歌」を世界に広めるべく活動しており、目標は「ボイチェン好きな人だけでなく、全ての人に聴いてもらえるシンガーになる」こと。しれっとバ美肉紅白メンバーに混ざっているが、実はバーチャル美”少年”受肉の「男の娘」であり、少年っぽいクールさを併せ持った独自のkawaiiボイスを魅せつける。
もこねもこさんはボイチェン勢でありながらもシンガーとしてのクオリティを高めるために、低遅延(品質はやや犠牲に)ボイチェンと高音質(遅延は大きい)ボイチェンを組み合わせた独自の活動スタイルを紹介した。ボイチェンはアシストのためのものではなく、理想の声を手に入れるための“唯一無二の自分自身”であることを力説。愛の力をボイチェンに流し込み、かっこよさとkawaiiの融合した独自の歌声をステージで魅せつけた。
じゃがりこ:プロの意地! ボイトレを極めるとギャルの帝王になれる
アプローチ:両声類
両声類修行歴:8年
修行方法:「芋ギャルボイトレ芸」を磨く!
じゃがりこさんはソーシャルVRの各種イベントで歌手や「芋ギャルボイトレ芸人」として活躍しているのだが、本業はプロのボイストレーナーだ。両声類アイドルイベント「crossvoice(クロスボイス)」や両声類ガールズバー「Girls' Voice Bar “Castrato”(カストラート)」でキャストを務めるかたわら、VRにおいてもボイストレーナー/ボーカルトレーナーとしても活動しており、声に悩めるメタバース住人達を今日もレッスンで教え導いている。
じゃがりこさんは、いきなり女声の練習をするのではなく、男声で自由自在に歌えるようにボイストレーニングを極めることで「結果的に女声でも自由自在に歌えるようになる」というプロの理論を紹介。あらゆる声を「地声」として自然に作り出せる究極の声帯から圧倒的な歌唱力を繰り出し会場を震え上がらせた。