GoogleとOpenAIの争いは激化必至か 2024年注目の生成AIトレンド4項目

普及に伴う懸念への対策も進む 「電子透かし」の国際規格が誕生か

 生成AIの普及に伴って懸念されるようになったのは、偽情報や偽画像といったフェイクコンテンツの拡散をはじめとする新たなリスクの発生である。こうしたリスクへの取り組みも、2023年に大きく前進した。同年5月に広島で開催された『G7広島サミット』では、生成AIリスクに取り組む国際的枠組みとなる「広島AIプロセス」が設立された。そして、11月にはイギリスのブレッジリー・パークにおいて『第1回AI安全サミット』が開催され、あらためて生成AIリスクに対する国際協調体制が確認されるとともに、2024年に韓国とフランスでAI安全サミットが開催されることも決定した。

 広島AIプロセスの進捗に合わせて、主要各国は自国向けのAI安全策を発表している。例えばアメリカは2023年10月に生成AIに関する大統領令を発令している(※10)。この命令では、「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)」の開発につながるような“もっとも強力なAIシステム”の開発については、アメリカ政府と情報共有することを義務づけている。

 2023年12月には、欧州議会でEU加盟国を対象とした「AI規制法」(※11)について政治的合意に達した。同法ではAIによるなりすましの禁止、任意のコンテンツがAI生成物であることを開示する義務等を定めている。そして、同法に違反した企業には罰金の支払いを命じるという厳しい内容となっている。

 日本の生成AIガイドラインについては、内閣府が主導するAI戦略会議が策定中である。第7回の同会議では「AI事業者ガイドライン案」が提出され、同案にもとづいた正式版のガイドラインが2024年3月に公開予定であることも確認された(※12)。同ガイドラインは、さまざまなAIリスクを低減する施策をAI事業者にうながす内容となっている。

 情報が瞬時に世界中へと共有される現代においては、偽情報と偽画像などのフェイクコンテンツに対して、国際的に協調して対処することが不可欠となる。主要AI各国のあいだではAI生成画像であることを確認できる“電子透かし”の国際規格を策定することで足並みを揃えており、2024年には何らかの進捗が期待されている。前述の韓国とフランスで開催されるAI安全サミットでは、この取り組みに関する大きな成果が発表されるかも知れない。

 以上のように、生成AIは2024年においても技術的に大きく進歩すると同時に、活用されるフィールドがますます広がると予想される。こうしたポジティブな側面がある一方で、フェイクコンテンツをはじめとする生成AIリスクはより我々にとって身近なものとなるだろう。こうしたネガティブな側面については、生成AIがもたらすリスクを正しく認識して対処するための知識、今後一般常識となりうるであろう“生成AIリテラシー”の確立と普及が有効なのではないだろうか。

(※1)Google US Blog「Introducing Gemini: our largest and most capable AI model
(※2)Google Japan Blog「Bard が マップ や Gmail, YouTube などの Google のサービスと連携
(※3)Microsoft Research Blog「AutoGen: Enabling next-generation large language model applications
(※4)runway Research「Scale, Speed and Stepping Stones: The Path to Gen-2
(※5)PIKA「ANNOUNCING PIKA
(※6)Google Research「VideoPoet: A large language model for zero-shot video generation
(※7)NVIDIA Toronto Lab「Align Your Gaussians:Text-to-4D with Dynamic 3D Gaussians and Composed Diffusion Models
(※8)ByteDanceほか「MagicAnimate:Temporally Consistent Human Image Animation using Diffusion Model
(※9)Institute for Intelligent Computing「Animate Anyone: Consistent and Controllable Image-to-Video Synthesis for Character Animation
(※10)THE WHITE HOUSE「FACT SHEET: President Biden Issues Executive Order on Safe, Secure, and Trustworthy Artificial Intelligence
(※11)EU「EU AI Act
(※12)内閣府「AI戦略会議 第7回

生成AIが席巻した2023年 スピーディな実装を推し進めたアドビはどこへ向かう?

「生成AI」が席巻した2023年。スピーディな実装を推し進めたアドビはどこへ向かうのか。Adobe MAX 2023やこれまでの…

関連記事