芸能人とインフルエンサーの境目はさらに縮まる? BitStar渡邉拓代表に聞く“動画市場の未来”
2023年にBitStarが仕掛けた“3つの戦略”
ーーそういった状況の変化があるなかで、BitStarが今年仕掛けたコンテンツや戦略はありますか?
渡邉:3つあります。そのひとつが海外視聴者の獲得で、トラックドライバーのもこちゃんのケースでは、海外向けの字幕やタイトルを付けるのではなく、ノンバーバルでグローバルで見てもらえるようなコンテンツ作りを心がけています。TikTokでその戦略が当たり、いまではグローバル視聴者の方が多い状況になっています。
2つ目は質にこだわったコンテンツ作りです。毎日投稿ではなく、数を絞り、コンテンツの質を高めるということを意識的に行っています。弊社だと「ニューポテトパーティー」が短編映画のようなリッチなコンテンツを制作しており、少ない投稿数でもクオリティが高い動画を投稿することで、視聴者の支持を得られるようなチャンネルを目指した結果、再生数が2倍になりました。
最後は、感情に訴えるコンテンツ作りです。「ボンソワールTV」を例に挙げると、もともとフランスの情報を日本に発信するチャンネルだったところ、今年はフランスの高校生を日本に招待するプロジェクトを行い、感情を動かすようなドキュメンタリー系コンテンツを作りました。情報提供というよりは、エモーショナルに訴えかけるようなコンテンツ作りをしたことで、多くの視聴者の方に観てもらえました。
ーー市場が変化するなかで、サポートの仕方はいまと昔とで変わりましたか?
渡邉:BitStarにはプラットフォーム、エージェンシー、プロダクション、アカデミーといった様々な関わり方がありますが、それぞれのサービスにおいて根本的なところはそこまで変わっていません。
プロダクションでいうと、クリエイターのやりたいことを叶えるというよりは、未来を作っ ていくというマネジメントをしています。プロデュース志向に近いところがありますが、僕たちがいることによって、彼らができないことを叶えていくというのが大事だと思っているので、未来から逆算し、段階的になにをすべきかを設計していくという感じです。
D2Cブランドを出したいという話があれば、まずグッズを出してどれくらい売れるか確かめ、それが売れたら次はブランディングを強くするためにブランドとコラボするなどしています。D2Cまでやるとなるとストーリー性が重要になってくるので、ストーリー性を作るために書籍化などもします。最終的にDtoCをやっていくという設計が大事なので、そういうプロデュースができるようなマネジメントを大事にしている。クリエイターの「やりたい」ではなく、未来を作っていくという思想でプロダクションを運営しています。
キャラクター以外も 渡邉氏が可能性を感じるクリエイターの“3つの特徴”
ーーやりたいからやらせるというわけではないんですね。いろんな方が在籍されていらっしゃると思いますが、可能性を感じるクリエイターというのはどういった方でしょうか?
渡邉:大きく3つあります。1つ目は、ひとつのコンテンツに対してこだわりをもって、そこに執着して頑張れる人。動画を公開した瞬間に初動を気にするといったような、そういう執着心のある人は活躍しやすいです。いまの世の中は質が重要なので、そこにフォーカスできるのかというのが大事ですが、いくらコンテンツの質にこだわってもNetflixのようなリッチコンテンツには敵わない。質に加え、視聴者へのコメント返しができるなど、インタラクティブ性も重要かなと思います。
2つ目は、それを飛び越えるくらいの強いキャラクターを持っているかどうか。見た瞬間に「この人、面白いな」と思える強烈なキャラクターも可能性を感じます。3つ目は専門性です。クリエイターが多様化するなかで、視聴者も専門性を求めるようになっています。TikTokでも情報を軸にしたコンテンツが投稿された際はより精査をしていくような時代になってくるので、どれだけ専門性があるかということも、人気になるうえで大事なポイントになっていきます。
ーーいま、面白いなと思うクリエイターはいらっしゃいますか?
渡邉:最近TikTokで面白いなと思ったのは、街頭インタビュー系のクリエイターです。今年話題になった「ストリートスナップ」はYouTubeと雑誌の中間に位置するコンテンツ、かつショートだからできたコンテンツだと思っています。雑誌の読者やウェブメディア、キュレーションメディアのユーザーも取ってきていて、その人自体に興味が出るし、斬新なフォーマットの発明だと感じています。