『ドラクエモンスターズ3』は“22年越し”の期待に応えられたのか

『ドラクエモンスターズ3』は“22年越し”の期待に応えられたのか

 『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』(以下、ドラクエモンスターズ3)が、12月1日に発売となった。

 22年ぶりのナンバリング最新作として大きな注目のなか、ようやくリリースを迎えた同タイトル。本稿では、システム/シナリオの両面から、『ドラクエモンスターズ3』の出来について考えていく。

注目されたシステムの進化と、『DQ4』の物語との関わり

『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』プロモーション映像

 22年ぶりのナンバリング最新作として、その存在が明らかとなったときから大きく界隈を賑わせてきた『ドラクエモンスターズ3』。当初は「シリーズの続編が登場すること」そのものに注目が集まったが、やがて体験版がリリースされると、しだいに話題の中心は「ゲーム作品としてのクオリティ」へとシフトしてきた。

 なかでもフリークたちの関心を引いたのが、システム/シナリオの出来についてだ。「ドラクエモンスターズ」シリーズは元来、「『ドラゴンクエスト』に登場する個性豊かなモンスターたちを仲間にしながら、自由にパーティーを編成し、ゲームを進めていく」というシステム的な面白さが評価されてきた。一方で、「シナリオ面はドラマ性に欠ける」とされる場合も多く、シリーズ全体を通じて、長所/短所がくっきりと分かれてきた作品群である。そのような経緯のもとに生まれる待望の新作だからこそ、ファンは、前者においてはブラッシュアップとさらなる進化を、後者においては汚名の返上を期待してきた背景がある。

 今作では、主人公に『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(以下、『ドラクエ4』)の敵役としておなじみのピサロを抜擢。冒険のパートナーに、同作に彼の伴侶として登場するロザリーを据え、その物語・世界観との関係性をファンに強く想起させてきた。システム面については「『DQM』の魅力はそのままに大きな進化を遂げる!」を旗印に、ベース部分の踏襲、枝葉部分の刷新を施し、「新しい『ドラクエモンスターズ』」を大々的に打ち出している。はたして『ドラクエモンスターズ3』は、ファンの期待どおりのタイトルとなれたのだろうか。

「良くも悪くも、これまでどおり」面白さと残念さが共存するシステム面

 システム面では宣言どおり、過去のシリーズ作品の面白さを踏襲しつつ、新しさにも取り組んだ設計が目立っていた。「ドラクエモンスターズ」の1番の魅力と言っても過言ではないであろう「配合」では、伝統的な組み合わせを一新。親の見た目から生まれてくるモンスターの姿をイメージしやすくするなどのテコ入れをくわえ、長年シリーズを遊んできたファンでも、また新たな気持ちでプレイに向かえる仕様を目指している。

 私は『ドラクエモンスターズ3』が発売する前に書いた記事のなかで「個々のモンスターのステータス格差が激しい」「ステータスに上限値があるせいで、思い入れるモンスターをパーティーに組み込みづらい」「一部モンスター/スキル/とくせい/耐性がゲームバランスを壊している」といったシリーズ伝統の問題について記述した。ファンが望んでいたのは、こうした部分のブラッシュアップだったかと思う。しかし、上記については、それほど大きな改善が見られず、「良くも悪くも、これまでどおり」の体験となっていた。

 特筆すべきは「モンスターの強さが、基本的にはランクに依存する点」について。ランクとは、すべてのモンスターに与えられたそれぞれの階層のようなもの。G、F、E、D、C、B、A、S、Xの9段階があり、スライムのようなおなじみの雑魚モンスターは「G」、各ナンバリングでボスとして君臨してきたモンスターは「S」や「X」といった具合に、設定上の強さ、レアリティ、存在感などに基づいて割り振られている。

 ランクが参照しているであろうデータに「設定上の強さ」があるため、ある程度「ランクの高さ=強さ」となるのは仕方がないことなのだが、先にも述べたとおり、「ドラクエモンスターズ」の面白さは、「個性豊かなモンスターたちを仲間にしながら、自由にパーティーを編成し、ゲームを進めていく」という点にある。そこには個人的な思い入れも影響するため、単純に「設定上の強さ」だけを基準に「(「ドラクエモンスターズ」における)強さ」が決まっていくのは、タイトルの持つ魅力を損なっている面がある。

 だからこそ、本来であれば、(莫大な手間がかかったとしても)やり込みによって、その限界点を超えられれば言うことはないのだが、実質的にはそれも難しくなっている。オンライン対戦によって他のプレイヤーと相まみえる機会が用意されている時代だからこそ、各プレイヤーの愛着がパーティーの編成から見えるようなゲームとなれば、システムが進化したとの評価をファンからも獲得できたのではないか。

 大前提として「ドラクエモンスターズ」のシステムは完成されており、今回発売となった『ドラクエモンスターズ3』も多少の不満はあれど、充分に楽しめる作品だった。とはいえ、22年ぶりのナンバリング最新作として注目されてきた同タイトルだけに、そうした点には残念さを感じてしまった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる