最新作『桃鉄ワールド』が40万本を突破 長寿シリーズがいまも愛される3つの理由

桃鉄シリーズがいまも愛される3つの理由

 『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』(以下、『桃鉄ワールド』)が、11月16日に発売を迎えた。

 1988年に初作が発売された歴史の長い作品群でありながら、近年になり再ブレイクの気配を見せている「桃太郎電鉄」(以下、「桃鉄」)。同シリーズはなぜ、現代のゲームフリークにも愛されるのか。ヒットの理由を紐解く。

「桃鉄」シリーズから3年ぶりの新作『桃鉄ワールド』が登場

桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~ 紹介映像 (桃鉄ワールド) | KONAMI

 「桃鉄」シリーズは、ハドソン開発・発売のRPG「桃太郎伝説」から派生したすごろく型のデジタルボードゲームだ。プレイヤーは鉄道会社の社長となり、都度設定される目的地を経由しながら、訪れる全国の駅で物件を購入。そこから得られる決算収益などから資産を拡大し、全プレイヤーのなかで1位となることを目指す。初作は、1988年にファミリーコンピュータで発売された『桃太郎電鉄』。その後、制作の中心となったゲームクリエイター・さくまあきら氏がシリーズの制作終了を宣言するという紆余曲折がありつつ、約35年にわたり、全24作のナンバリングがリリースされている。

 今回発売となった『桃鉄ワールド』は、前作『桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜』(以下、『桃鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜』)から3年ぶりとなる最新作。2010年発売の『桃太郎電鉄WORLD』以来、13年ぶりに舞台が世界へと移された。同タイトルには、さくまあきら氏(製作総指揮)のほか、『天外魔境』や『リンダキューブ』『俺の屍を越えてゆけ』といった作品で知られるゲームデザイナーの桝田省治氏(ゲームデザイン/監督)もクレジットされている。同氏がシリーズに携わるのは、これで5度目のこと。前作では副監督も務めた。

 対応プラットフォームは、Nintendo Switchのみ。価格は6,930円(税込)となっている。

「桃鉄」再ブレイクの背景にある3つの理由

 シリーズの誕生から35年が経過してもなお、多くのフリークに愛され続ける「桃鉄」シリーズ。『桃鉄ワールド』の発売から2週間以上が経過し、初週・第2週の販売本数も明らかとなってきた。ゲーム専門誌・ファミ通が発表する「ソフト&ハード週間販売数」によると、同タイトルは2週連続でランキングの1位を獲得。累計で41.3万本を売り上げているという。

 これは2023年全体のソフト販売本数のなかで8番目の数字。6位の『星のカービィ Wii デラックス』(推計49.1万本)や、7位の『FINAL FANTASY XVI』(同41.5万本)に肉薄し、かつ、直近に発売された話題作『スーパーマリオRPG』(10位・同35.6万本)を上回るものだ(※)。前作『桃鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜』は、発売から現時点までの約3年で400万本以上を出荷している。今作・前作の数字からは、「桃鉄」がいかに人気があり、今なおシーンへの影響力が高いシリーズであるかが見て取れる。

※…「ソフト&ハード週間販売数」の集計期間は2023年11月20日から26日まで。各タイトルの累計販売本数も26日までのデータを参照している。なお、プラットフォーム上で直接ダウンロードされたものは販売本数に含まれていない。

「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」プロモーションムービー

 「桃鉄」は35年の歴史のなかで、そのゲーム性を大きくは変えてこなかった。場合によっては、「目的地を目指しつつ、物件を買い、資産を増やす」という“おなじことの繰り返し”が食傷される状況も考えられたはずだ。いったいなぜ同シリーズは、現代のゲームフリークにも愛され続けているのだろうか。

 ひとつは、「桃鉄」がプレイヤーを選ばないシンプルなゲーム性を持つ点にある。先に述べたとおり、シリーズの目標は「目的地を目指しつつ、物件を買い、資産を増やす」ことだ。基本的にはすごろくの設計をベースにつくられているため、構造がとてもシンプルで誰でも遊びやすいことを特長とする。

 現在はゲームというカルチャーのターゲットが固定化されていない時代。その草創期にくらべると、プレイヤーの年齢・性別はさまざまとなってきた。特にNintendo Switchを所持する層は、単身の男女から家族、子どもから大人まで、属性が幅広い。そうした見込み客に、「桃鉄」の持つ「プレイヤーを選ばないシンプルなゲーム性」が刺さっているのではないか。

 また、そのなかに緻密な戦略性があり、運だけでは勝負が決しない点も、ならではの魅力だろう。一見すると、誰でも遊べる顔を持つ同シリーズだが、突き詰めていくと、そこにはその他大勢のゲーム作品に勝るとも劣らないほどの深みが広がっている。目先の持ち金の重要度の低さ、対するカードの重要性、その使い方、購入する物件の優先順位、ルートの選び方、状況に合わせたポジションなど、その例は枚挙にいとまがない。プレイヤーを選ばないシンプルなゲーム性を持ちながら、コア層も納得するほどのノウハウ・やりこみ要素を備えている作品群が「桃鉄」なのだ。その懐の深さこそが、現在もなお同シリーズが支持を広げるゆえんなのではないだろうか。

 そして最後に、「桃鉄」をめぐる実況・配信文化の盛り上がりを忘れてはならない。近年では、同文化で多く取り上げられたことをきっかけにブームとなり、商業的成功をつかむゲームタイトルも少なくない。今作・前作でシリーズのファンとなったプレイヤーのなかには、YouTubeやTwitchで観たストリーマー同士の対戦に、「桃鉄」の面白さや楽しさを見出し、購入を決めた人も多いのではないか。

 実際に『桃鉄ワールド』でも、多くのストリーマーが自身の実況・配信に同タイトルをピックアップしている。そこで繰り広げられるボードゲーム特有のわちゃわちゃ感は、ほかのゲームジャンルではなかなか観られないものだろう。元来、ボードゲームという分野は、親しい誰かと遊んでこそ、その面白さ、楽しさが最大化されるカテゴリだ。自宅にいながらオンラインで人と対戦できる環境が整った現代だからこそ、「桃鉄」が生来持つ魅力が再認識され、広く愛されるシリーズとなっている面もあるのかもしれない。

 一時は制作終了が宣言されながら、かねてから備える特長を武器に再ブレイクを果たした「桃鉄」シリーズ。その快進撃はどこまで続くだろうか。文字どおり、“令和も定番”となった「桃鉄」シリーズの今後の動向から目が離せない。

©2023 Konami Digital Entertainment

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