“ゲームとリアルの連動”トレンド化の背景は? 『FF7』×川崎市のコラボから考える

なぜいま、ゲームとリアルの連動が広がっているのか

『龍が如く8』ストーリートレーラー

 なぜいま、ゲームとリアルの連動が広がっているのか。かねてからマンガや小説、ドラマ、映画、アニメといったゲームと距離の近い分野では、そのような動きが“聖地巡礼”の文化として受け入れられてきた。その観点に立つと、ゲームカルチャーにおいて、リアルとの連動がこれまで積極的に行われてこなかったことの方が特異的であったとも言えるだろう。背景には、少なくないタイトルが現実世界と明確な違いを持つファンタジーの世界を舞台としてきた影響があると考える。長らく同文化を牽引してきた日本で、古くから人気を獲得しているタイトル/シリーズを振り返ると、リアルとの結びつきが認められるものは、ごく一部であることがわかるはずだ。

 紹介した『FF7』が属する「FINAL FANTASY」シリーズもまた、同文化を代表する作品群でありながら、その例に漏れることがない。おなじくRPGで挙げるならば、「ドラゴンクエスト」シリーズもまた、その範疇に収まる作品群だろう。ほかのジャンルであれば、「スーパーマリオ」シリーズなども例外ではない。ゲームカルチャーは本来、(リアルの類義語としての)ノンフィクションではなく、フィクションと距離の近い文化であった。

 では、近年になり、ゲームとリアルの連動が広がっているのは、どのような経緯があってのことなのか。そこには、ゲームカルチャーにおける映像技術の発達が関係しているように思う。

『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』トレーラー

 かつて「現実に似せて作られた、現実とはほど遠いもの」という領域にとどまっていたゲームにおける映像表現は、草創期から二次関数的に発達し、直近では、現実と見紛うような作品も現れるようになった。『FF7』のミッドガルの様子と、川崎市の工場夜景がつながったのも、リメイクプロジェクト第1作として発売された『FINAL FANTASY VII REMAKE』に、より精細な映像表現が盛り込まれたからこそだろう。1997年発売のオリジナル版におけるグラフィックでは、そのような結びつきは生まれなかったはずだ。

 そうした技術的発展は、ゲームに創作の多様化をもたらしている。「現実の延長としてのゲーム体験であれば、現実に即したロケーションで」という新たな選択肢が生まれつつあるのだ。紹介した「龍が如く」シリーズや『パラノマサイト』は、この最たる例と言える。従来なら技術的に「ファンタジーをベースにしたフィクション」としてしか描けなかったものが、「現実と結びつきの強いフィクション」として描けるようになり、結果、ゲームとリアルにつながりが見出されているのではないか。

 「FINAL FANTASY」や「ドラゴンクエスト」が分類されるRPGの分野では、「ペルソナ」シリーズのナンバリング第5作『ペルソナ5』において、東京都内のさまざまな街の様子が現実さながらに再現されている。ゲームというバーチャルな世界で、リアリティのある表現を目指すにあたっては、「現実にありそうなどこか」よりも、「実際にある場所(の精細な再現)」をロケーションとするほうが都合がよいのだろう。「没入感」というキーワードに焦点が当たり続けるかぎりには、こうした傾向が続いていくに違いない。

 映像技術の発達がもたらした、ゲームとリアルを連動させるムーブメントの広がり。今後は、特に関係性の深いアドベンチャーゲーム、ノベルゲームのジャンルなどから、他分野にあるような“聖地巡礼”の文化が拡大していくと推測する。ともすると、一部ファンによる迷惑行動などが問題視されやすい同文化だが、そこには地域振興というポジティブな影響も存在している。ことゲームカルチャーにおいては、デメリットよりもメリットが大きく語られるような展開を望みたい。

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