『Cities: Skylines II』『ARK』に数々の不具合 なぜ話題作が“不完全”でリリースされるのか

なぜ話題作が“不完全”でリリースされるのか

 注目タイトルのリリースが続いている。10月25日には『Cities: Skylines II』が、10月26日には『ARK: Survival Ascended』が、ともにPCで発売となった。

 ともに前作は、大きな評価を獲得しながらも、不具合の多さが欠点とされてきた。今回リリースされた2作も発売から1週間ほどが経過し、ユーザーのファーストインプレッションが出揃ってきているが、残念ながら汚名返上とはいかなかったようだ。

 なぜ2023年屈指ともいえる話題作たちが、不具合を抱えたままリリースされることになってしまったのか。ゲーム市場の現状から、その理由を考える。

自由度の高い設計で人気を集めるシリーズの最新作『Cities: Skylines II』『ARK: Survival Ascended』

Official Release Trailer | OUT NOW I Cities: Skylines II

 『Cities: Skylines II』は、フィンランドのディベロッパー・Colossal Orderが開発を、スウェーデンのパブリッシャー・Paradox Interactiveが発売を手掛ける都市開発シミュレーションだ。プレイヤーは都市計画事業の担当者として、道路や電気、水道などの生活インフラを整備し、あらゆる区画の用途を指定することで、集落を少しずつ発展させ、メガロポリスの建設を目指していく。

 2015年3月に発売となった前作『Cities: Skylines』は、自由度の高いゲーム設計が同様のジャンルを好むプレイヤーたちから好評を博した。『Cities: Skylines II』は、約8年半ぶりとなるシリーズの最新作。発表時点から話題を集めてきた背景がある。

ARK: Survival Ascended Launch Trailer

 一方の『ARK: Survival Ascended』は、アメリカのディベロッパー・Studio Wildcardなどが開発・発売を手掛けるサバイバルアクションだ。プレイヤーはひとりのサバイバーとして、採集や狩猟、製作、建築といった行動を駆使しながら、大自然のなかで生きる方法をそれぞれのアプローチで模索していく。

 2017年8月に発売となった『ARK: Survival Evolved』のリマスター版にあたる作品で、グラフィックの良化や、UIの再設計などを盛り込んだ。こちらもまた、自由度の高いゲーム設計から評価を獲得してきたタイトルである。そのような経緯もあり、『ARK: Survival Ascended』も発表当初から話題を呼んだ。2023年9月末にはリマスター版の展開を見据え、前作の公式サーバーを閉鎖。翌10月には独自のサーバーを活用したストリーマーによるイベント「VCR ARK」が開催され、盛り上がりを見せた。

 リリース時点では、双方ともにPCのみの対応となったが、今後はPlayStation 5、Xbox Series X|Sでの発売も予定する。2023年でも指折りのビッグタイトルが、続けてリリースを迎えた格好だ。

大幅なシステム要件引き上げも、汚名返上は叶わず

 ナンバリング新作とリマスター版という違いはあれど、前作への評価から大きな期待のなかで発売を迎えた『Cities: Skylines II』と『ARK: Survival Ascended』。この2つには、ほかにも共通項がある。それは、ゲームとして有り余る魅力を備えていながら、不具合がユーザー体験の足かせとなってきた点だ。近年、自由度が高いゲームの宿命にもなっているこれらの事象だが、特に両シリーズにとっては、そのものの出来がいいだけに、不動の評価を獲得するための喫緊の課題だった面がある。ファンのなかには、この点の改善だけを期待していた人も少なからずいただろう。

 そうした状況に対応するためか、両タイトルでは、プレイに必要なシステム要件が大きく引き上げられた。『Cities: Skylines II』がIntel® Core™ i5-12600K/AMD® Ryzen™ 7 5800X以上のCPUかつ、 Nvidia® GeForce™ RTX 3080(10GB)/AMD® Radeon™ RX 6800 XT(16GB)以上のGPUを、『ARK: Survival Ascended』がIntel i5-10600K/AMD Ryzen 5 3600X以上のCPUかつ、 NVIDIA GeForce RTX 3080/AMD Radeon RX 6800以上のGPUを推奨としている。これは、現在発売されているすべてのゲームのなかでも、トップクラスに位置する水準。双方ともにミドルクラス、またはそれ以上の環境を要求している。その裏には、システム要件を引き上げることで快適に動作する環境をつくりあげ、不具合と決別するという開発側の思惑が見え隠れする。ゲーム設計をそのままに、ユーザー体験をより良いものとするためには、最善にして唯一の選択だったのかもしれない。

 しかし、結果を見てみると、決して問題点が解決されたとは言い難い現状が浮き彫りとなってくる。双方ともにソフトがクラッシュしやすいことにくわえ、『Cities: Skylines II』では、機能しないオブジェクト/機能しすぎるオブジェクトが、『ARK: Survival Ascended』では、サーバー落ちにともなうロールバックやアイテム消失といった事象が散見されている現状だ。Steam上における2023年11月1日時点の評価では、ともに「賛否両論」の烙印を押されている。前作が「非常に好評」の両タイトルだけに、2ランク下からのスタートは、出遅れと言っても過言ではないだろう。特に後者においては、発売後の売価の変更(現在が正規の価格であり、発売直後が誤った価格だったとされている)が足を引っ張った事情もある。

 もちろん前作からレベルアップした部分も確かにある。いま確認されている不具合も、今後のアップデートによっては改善に向かうのかもしれない。しかし、ユーザーからしてみれば、「何のための新しいパッケージなのか」「何のためのシステム要件の引き上げなのか」と感じずにはいられない部分もある。この点こそが両タイトルの残念な共通項だと言える。

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