「降伏する会計担当」に「ただACに乗りたい戦闘狂」……個性的な『AC6』ヴェスパー部隊メンバーたちの背景を考察

個性的な『AC6』ヴェスパー部隊メンバーたちの背景を考察

苦労人か極悪人か、V.II スネイル

 ヴェスパー部隊の次席隊長。作中のテキストによると、彼は第8世代の強化人間だが、以降も新しい術式が普及するたびに再手術をくり返している。そうした“調整”の安全を確保するため、多くの強化人間を犠牲にしているようだ。

 その背景からも分かるように、スネイルは薄情で傲慢な性格をしており、周囲の人間を自分の駒としか考えていないような節がある。第4世代強化人間であり独立傭兵の主人公を駄犬と罵ったり、序盤のミッション“壁越え”では捨て石にしようとしたりと、作中の言動を見れば枚挙に暇がない。ストーリーの後半では、突出した力を持つ主人公と、企業内の不穏分子であるラスティを互いに潰し合わせもした。

 セリフには「貴方の飼い主も……実に反抗的でしたよ」とあり、物語後半で捕まえたハンドラー・ウォルターに対し、劇中で言う“教育”を施した張本人である可能性も。自分に親身になってくれたウォルターを手にかけたのだから、プレイヤーからすると憎悪の対象だ。

 いっぽうで、“II”でありながら実質ヴェスパーの指揮官を務める立ち位置からは、上層部と現場の板挟みから生じる苦労などもうかがえる。ストーリー序盤では、後述のV.I フロイトに頼らざるを得ない現状からか、主人公を売り込みに来たハンドラー・ウォルターにヴェスパー部隊の人材不足を見抜かれていた。さらに後半のミッションでは、部隊内の裏切り者や無能な上層部について愚痴るセリフも。作中での横柄な態度は、中間管理職として適応した結果なのかもしれない。

 スネイルの搭乗機であるオープンフェイスは、アーキバス系列のパーツを中心にした重量二脚機。重量機体らしい防御力の高さだけでなく、腕部のレーザーランスや背部のスタンニードルランチャーといった一部の武器により、火力も確保している。とくにレーザーランスを使うと、一時的に前方へ突進するため、重量二脚だからと機動力を甘く見ていると痛い目に遭う。いつも尊大なスネイルの姿勢を裏付けするに足る、なかなかの強機体と言えるだろう。

ひたすらに戦いを求める首席隊長、V.I フロイト

 ヴェスパー部隊における首席隊長。作中では説明のみに留められている“アイランド・フォー動乱”では、作戦成功率94.7%を記録したという逸話がある。受けた作戦はほぼすべて完遂したわけで、アーキバスの英雄とも言える人物だろう。

 彼のナンバーは“I”。つまりヴェスパー部隊の最高位なのだが、ベイラムの精鋭部隊・レッドガンではG(ガンズ)“1”のミシガンが指揮官を務めているのに対し、フロイトはほぼ現場担当である。作戦の指揮はV.IIのスネイルに任せているようで、アーキバス関連のミッションの説明役や指揮官として、フロイトはとくに出てこない。

 というのも、彼のテキストを読む限り、デスクワークよりもとにかく敵と戦いたいという考えの持ち主で、いわば戦闘狂の節がある。さらに、その強さを妬まれているのか、「スネイル同様の調整を重ねているに違いない」という噂も立っているようだ。

 スネイルの説明にある“調整”を読む限り、調整とは強化人間になった後に再び施術を受けることを指す。つまり「調整を重ねている」という噂がある時点で、フロイトが強化人間であると考えられる。とはいえ、同じテキスト内の「ただの人間である」という言葉によって、スネイルのような度重なる調整は否定されてもいる。フロイトはいずれかの世代の、普通の強化人間なのだろう。強化人間になった後も調整をくり返しているスネイルと、一介の強化人間として彼の上に立ち続けるフロイトは対照的でもある。

 ちなみに、作中でプレイヤーとフロイトが戦うのは、終盤のミッション“企業勢力迎撃”のみ。時間としては短いが、スネイルから受けた指示を平気で無視して主人公と戦い続けたり、戦闘中に「そういう動きもあるのか」とプレイヤーを分析したり、撃破されても「これからまだ面白く」と言ったりと、自分の命にすら無頓着と思えるような印象的なセリフを残していった。

 フロイトの搭乗機・ロックスミスは中量二脚タイプ。アサルトライフルやレーザーブレードに加えて、拡散バズーカ、複数のドローンを飛ばして攻撃するレーザードローンを装備している。堅実な構成だが、拡散バズーカの命中精度が悪いことから総合的な火力は低い。ゲーム的な側面から書くと、首席を名乗るにはちょっと不釣り合いな性能ではある。

 一方、構成パーツのメーカーを調べてみるとおもしろい。アーキバスの精鋭・ヴェスパー部隊の首席隊長という立場でありながら、頭部と脚部パーツ、右腕と右の背部の武器はベイラム製。本作ではアーキバスとベイラムという2大企業が率いるそれぞれのグループが、コーラルを巡って睨み合っているという情勢なので、敵対陣営のパーツを使うのは政治的なリスクが伴いそうではある。

 とはいえ、フロイト自身はヴェスパー部隊における最高戦力であり、かつて起こったというアイランド・フォー動乱の英雄でもある。製造元による政治的な問題を、自分の腕前と実績ではねのけたと考えるのが自然だろうか。

 ちなみに、敵対陣営のパーツを使う例として、『アーマード・コア4』に登場したランク1、ベルリオーズがいる。同作ではレイレナード陣営とオーメル陣営による戦争が描かれるが、ベルリオーズはレイレナード陣営でありながら、自身の機体であるシュープリスにはオーメル陣営に属するグローバル・アーマメンツ社のグループ企業・有澤重工のグレネードキャノンを採用していた。

 ベルリオーズは、勝つためならさまざまな企業のパーツを使うという柔軟な発想の持ち主。さらに『AC4』の世界が生まれるきっかけとなった国家解体戦争で、もっとも多くの戦果を上げた英雄でもある。必要なら敵対企業のパーツも使う、さらにかつての戦争の英雄という立場と、V.I フロイトと通ずるものは多い。

 明確な立ち絵が存在しない「アーマード・コア」シリーズだが、本作に登場するキャラクターたちはいずれも個性的。ミッション中に出てくるセリフはいずれも短いものの、それぞれの背景や思想、譲れないものが垣間見えることもあり、その短さがかえって世界やストーリーの奥行きを広げているようにも思える。フレーバーテキストなどの文章芸によって培われた技術が、十全に発揮された証しだろう。続編の有無は現時点で不明だが、新しい『アーマード・コア』が出るのであれば、色濃いキャラクターたちを期待したい。

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