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サブスクリプションサービスに吹く逆風。ゲーム市場の勢力図激変の予感も

『Starfield』公式ティーザートレーラー

 一方、“もう一人の当事者”の側からも、思わぬ向かい風が吹き始めている。これまで数多くのインディータイトルを発売してきたアメリカのパブリッシャー・Devolver Digitalは9月25日、2023年度上期の業績発表のなかで、今後サブスクリプションサービスへのタイトルの提供を慎重に判断していく方針だと明らかにした。

 同社は現在、PlayStation Plus ゲームカタログ向けに、『Inscryption』『Observation』『The Messenger』『My Friend Pedro』などを、Xbox Game Pass向けに、『Trek to Yomi』『Loop Hero』『Death’s Door』『Shadow Warrior 3』などを配信している。2023年8月には、「長期的な成長戦略の一部である」と投資家向けに説明していたが、同時に「今年に入ってからいくつかの契約の提案を拒否している」とも明かしていた。

 Devolver Digitalによると、2022年以降、サブスクリプションサービスに対する提供の契約をおこなったことで収益が減少に転じており、この傾向は2024年にかけても続く見込みなのだという。今回の発表では契約拒否の理由について、「対象のゲームの価値、および2023~2024年の収益機会を過小評価した提案内容だったから」とも言及した。

 アイルランド・Goodbody社のアナリストであるPatrick O’Donnell氏が2023年8月に行った指摘には、「SIEやMicrosoftがメーカーに支払う金額は、かつてほど多くはない」との記述もある。以上を踏まえると、今後はパブリッシャーのサブスクリプションサービス離れが加速する可能性もあるだろう。

Fall Guys - Gameplay Trailer | PS4

 先にも述べたとおり、Microsoftは、SIEの日本におけるPlayStation 5の安定供給失敗と、Xbox Game Passのサービス拡充によってシェアを拡大した面がある。今後も勢力を維持できるかは、「SIE、PlayStation 5が復権しないこと」「これまでどおり、ユーザーの支持を得ながらXbox Game Passを運営し続けること」の2点にかかってくるのではないだろうか。その意味において、少なくとも後者には大きな逆風が吹き、Microsoftとしても少しずつ対応が変わり始めている。一方の前者では、CEOが交代し、事業戦略の転換が起こることで、一度は大きくシェアを伸ばした日本において、風向きが変わる可能性も生まれている。

 SIEに引導を渡したいMicrosoftと、このままでは終われないSIE。任天堂の次世代機も来年後半には発表・発売される可能性がある。2024年以降、ゲーム市場の勢力図は激変するかもしれない。その火種はすでに燻り始めている。

画像=Unsplashより

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