限定版ゲームボーイに10万円の値札も 中古販売の現場から見たレトロゲーム市場の“いま”

中古販売の現場から見たレトロゲーム市場の“いま”

 近年、レトロゲームが脚光を浴びる機会が増えてきた。今では大人になった“かつての子どもたち”が懐かしいゲームを集めたり、初期の家庭用ゲーム機を知らない世代が「おもしろい」とファミコンをプレイしてみたりと、その形は多岐にわたる。そんなゲーム愛好家たちの需要と供給を満たすことに一役買っているのが、本をはじめ、洋服、トレカ・ホビーをなど様々なリユース品を扱う『ブックオフ』だ。

 東京・立川にある『BOOKOFF SUPER BAZAAR 立川駅北口店』では、レトロゲームコーナーを設置し、多種多様なレトロゲームを販売。買取も精力的に行なっている。ブックオフ商品部・ソフトグループでゲーム担当マネージャーを務める稲森達也氏と、『BOOKOFF SUPER BAZAAR 立川駅北口店』でレトロゲームコーナーを担当する逸見渉氏に、それぞれの視点から“レトロゲーム売買のいま”について話を聞いた。(片村光博)

“コロナ明け”に訪れたレトロゲームの大流行 資産価値への注目も

――ここ数年、レトロゲームを取り巻く環境は大きく変わったと思います。2人の目から見て、どのような変化がありましたか?

稲森達也氏(以下、稲森):ここ1、2年の世の中におけるレトロゲームの盛り上がりは非常に大きく、あっという間に値段が上がっていくような状態になっています。ちょっと戸惑いながらではありますけれども、なんとか売り場に反映させていけるように努力しています。私たちの立場からすると、どんなきっかけであったとしても、お客様が商品に興味を持ってくれるのは非常にありがたいこと。今の盛り上がりは非常に喜ばしいことだと思っています。

逸見渉氏(以下、逸見):1年半ほど前までは、本当に小さな規模感で(レトロゲームコーナーを)運営してましたが、レトロゲームが流行り始めていると知り本格的に専用の売り場づくりを行い、在庫数を増やしたという経緯があります。そこにお客様もついていただいて、売り上げにもなったので、売り場を拡張して本当によかったなと感じています。

――大きなブームになったきっかけ、理由はどこにあると感じていますか?

稲森:ここ最近だと、やはり新型コロナの流行が落ち着いて、インバウンドの効果・影響を受けているのかなと。あとはCtoC(個人間取引)が一般化して、フリマサイトなどでのやり取りを通じてレトロゲームの資産価値が注目されるようになり、多くのお客様が興味を持たれるようになったとも感じています。

逸見:店舗を運営するにあたって、私は他社様の店舗も拝見しているのですが、ブックオフでは本当に数の少ないものが、他社様だと取り揃えられていたりするんです。すごくコアなソフトを大量に取り扱っていることに衝撃を受けまして、本格的にやれば、ブックオフにとっても大きな武器になるんじゃないかと思い、 「率先してやってみよう」と思ったのがきっかけです。

 1年半前に視察した店舗では、レトロゲームをレジ近くの売り場に置いて、目立たせていました。ブックオフだと最新機種のNintendo Switchなどを置いていましたが、まったく逆の発想ですよね。それに、レトロゲームはもうこれから減っていく一方で、おそらく値段も上がる一方だと思います。だからこそ1人の商売人として、見逃せないなという思いもありました。

――現在のレトロゲームコーナーに来られる客層はどんな方々なのでしょうか。

逸見:買取をご希望されるお客様は、ご家族で家の整理をしていて出てきたものを持ってきていただくことが多いですね。50〜60代の方が、レトロゲームの価値を知らずにそのまま持ってきていただいて、高い価格がついて驚かれるようなことも起きています。

稲森:息子さん、娘さんが持っていて、ずっと実家に置いたままになっているものがあるんでしょうね。

――買取に際しての具体的なエピソードはありますか?

逸見:20〜30代くらいの男性の方と、お母様でいらっしゃったお客様なのですが、1本のソフトに2万円ほどの値段がついたんです。ご提示したとき、お母様はすごく驚かれていて、息子さんは逆に「ほら、高いって言ったでしょ」という感じでした。しかし、その後に「じゃあこれ、自分でフリマアプリとか売れば……という話になっていたので(笑)、「もちろんそれもできますが、こちらで売っていただければ手数料もなく今すぐにお金をお出しできます。他のものも買取できますので、よかったら」とご提案したところ、「じゃあ、お売りします」と言っていただけました。

 そんなやり取りもありましたが、箱なしの1本の“裸”のソフトが2万円になるということで、すごく喜んでいただきましたね。ちなみに、ソフトはスーパーファミコンのレーシングゲームでした。

――スーパーファミコンの時代だと、まだ「後から価値が上がるから良い状態で取っておこう」という発想もない頃だからこそ、良好な状態の商品は価値も高くなりそうですね。

逸見:まさにそのとおりです。先日、ゲームボーイ「ポケットモンスター」シリーズの金・銀世代のソフトが、一度もプレイしていないんじゃないかという良好な状態のものが来まして、通常の(状態の)買取金額の約3倍の値段で買取をさせていただきました。そこからお客様にお声がけしたところ、「家にまだあるから」とさらに持っていただきましたし、販売価格も高めでしたが、外国人の方が買っていかれました。「よくこの状態でとっておいたな」という驚きを感じるとともに、レトロゲームの価値がどんどん上がっていることを再確認しました。

――逆に商品を買いにくる方たちから、人気のあるジャンルや傾向などはあるのでしょうか。

稲森:売り上げ全体のなかで非常に大きい割合を占めているのはスーパーファミコンで、次いでファミリーコンピュータ、となっています。やはり流通量がもともと違ったというのはあると思いますし、傾向にもなっているのかなと。

 実際に売れているソフトを見てみても、すごくレアな商品ばかりが売れてるわけでもなくて、「ドラゴンクエスト」シリーズや「マリオ」シリーズなど、一般的によく流通していて、今でもさまざまな店舗で在庫があるようなソフトが、販売数としては非常に大きいところを占めていますね。

――購入する方々はコレクション目的なのでしょうか。それとも実際にプレイされるのでしょうか。

稲森:どちらもだと思います。 コレクションとして買われる方は、箱と説明書もついていて、少しでも綺麗な状態のものを求めています。それこそすでに同じものを持っていても、「こっちのほうが良い状態だから、買っちゃおう」となるような方々ですね。それとは逆に、昔やっていたゲームを懐かしんで、もう1回やりたいという方々は、「ソフトだけでもいいから」と買っていかれます。

――数としてはソフトだけで買われる方が多いのですか?

稲森:どうしてもソフトだけのもののほうが数も多いので、割合としても多くなります。ただ、店舗によって「うちは箱のないもののほうがよく売れるんです」ということもあれば、「箱のついているものは出したらすぐ売れてしまうので、ソフトだけが残っています」という店舗もあって、このあたりは地域性もあるのかもしれないですね。本当にマニアックな方は当然、箱入りをご希望されますし、ハガキが入っているか、チラシが入っているか、そこまで見たいという方もいらっしゃるみたいです。

――ジャンルとしては満遍なく売れるイメージでしょうか。

稲森:ジャンルは満遍なくですね。強いて言うなら、スポーツゲームはちょっと動きが鈍いようにも感じますが、アクションやRPG、シューティングといった“ゲームらしいゲーム”は、ジャンル問わず売れていきますね。

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