発売初日販売数が10万本を突破した“90年代JRPG風”新作『Sea of Stars』 支持の理由は「懐かしさ」と「新しさ」の共存にあり?

増えるレトロ志向のタイトル 『Sea of Stars』の各所に散りばめられた「懐かしさ」と「新しさ」

 近年のゲーム市場では、80年代・90年代の作品を模倣する新作タイトルの発表が増えている。ゲームカルチャーにとってこの時期は文化の草創期。技術革新などによって埋もれつつある時代を今によみがえらせ、「懐かしさ」と「新しさ」を共存させることが、現代のユーザーに訴求するためのひとつの要素と考えられているのだろう。実際にこうして生まれたタイトルたちは、「レトロスタイル」として多くのプレイヤーに受け入れられている。本稿で扱っている『Sea of Stars』も、そのうちのひとつだ。

 先にも述べたとおり、『Sea of Stars』は、ターン制のバトル、原始的・直感的なマップアクション、王道の物語などを特徴とする。これらはすべて、80年代・90年代に生まれたRPGの主成分となっていた要素だ。同タイトルがスーパーファミコン時代の金字塔と比較されるのは、こうした個性によるところが大きい。公式の作品紹介文には「クラシックスタイル」「古典的名作から着想を得た」という言葉が使われている。

 一方、映像・音楽面には、新しさも取り入れられている。『Sea of Stars』はピクセルアート風のグラフィック、昔ながらのファンタジーRPGを思わせるオーガニックなBGMを特徴とするが、その表現は、80年代・90年代と比べるまでもないほど美しい。このあたりは、技術革新によるハードの性能向上、ソフトの収録容量の増加、手法の進歩によるところだろう。特に前者におけるライティング、後者におけるパート数の豊富さ、ひとつひとつの音色の質などには、現代に生まれた作品ならではの変化がうかがえた。『Sea of Stars』が広く受け入れられている理由は、この点にこそある。「懐かしさ」と「新しさ」のバランスがとれた新作レトロRPG、それが『Sea of Stars』なのである。

 なお、『Sea of Stars』の音楽制作には、光田康典氏が一部携わっている。同氏は、『クロノ・トリガー』や『ゼノギアス』などの古典JRPGへの参加で知られる、日本を代表するゲーム音楽のコンポーザーのひとりだ。この点にも、制作陣の90年代JRPGからのインスピレーションを感じる。光田氏は以前から、SABOTAGE STUDIOが開発したタイトル『The Messenger』のファンだったという。ある意味で偶発的とも言える縁によって、JRPGのこれまでを知るプレイヤーがニヤニヤしてしまうようなコラボレーションが、『Sea of Stars』で実現したことになる。

 『Sea of Stars』は、80年代・90年代のRPGへの懐古のトレンドを代表するタイトルとなっていけるか。8月30日には、初日の販売数が10万本に達したという公式のアナウンスも話題を集めた。同タイトルの快進撃はまだまだ続きそうだ。

『ペルソナ3 リロード』発売日決定 シリーズ第3作がいまリメイクされることの意味とは

8月23日、『ペルソナ3』のリメイク作品として注目を集める『ペルソナ3 リロード』(以下、『P3RE』)の発売日が2024年2月…

関連記事