中世日本はなぜゲームの舞台として選ばれやすいのか? 新作『Sengoku Dynasty』から理由を考察

中世日本はなぜゲームの舞台になるのか

なぜ中世日本が舞台に選ばれる? 考えられる2つの理由

 ゲーム市場では近年、海外のディベロッパーが中世日本を舞台に設定し、ゲーム制作を行うケースが増えてきている。Sucker Punch Productionsが手掛けた『Ghost of Tsushima』や、Ubisoft Québecによる『Assassin's Creed Codename Red』などはその一例だ。なぜ海外の開発チームは、数ある候補のなかから日本を舞台に選ぶのだろうか。そこには大きく2つの理由があると考える。

 ひとつ目は、成功した先例の影響が広がり、ジャンル内で舞台設定のトレンドとなっている点だ。純和風の世界観を持つ近年のヒット作といえば、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』や「仁王」シリーズが記憶に新しい。双方ともに、日本のディベロッパーが開発したタイトルだが、その商業的成功は「ソウルライク」というサブジャンルの確立に大きく寄与した。直近では、同分野がアクションRPGの代名詞と言っても過言ではないような広がりを見せつつある。そうした成功例を模倣し、同様の舞台設定でゲーム制作を行うケースが増えているのではないか。

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE 発売ロンチトレーラー【2019.3】

 たとえば、先に例として挙げた『Ghost of Tsushima』『Assassin's Creed Codename Red』は、アクションRPGであり、かつ2つと類似するゲーム性を持っている。『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』や「仁王」シリーズが発売されたのは、2017年から2020年にかけて。少なくとも本稿で例として扱ったような大作に限っては、両者の成功を見たうえで開発をスタートしたとも考えられる。

 当然、後に続く作品も同等、またはそれ以上の成功を収めたことで、以後のタイトルに影響を与えていく面もある。今後もソウルライクの分野では、『Ghost of Tsushima』までを含めた三者にインスパイアされた舞台設定を持つタイトルの発表・リリースが続いていくのかもしれない。この点はそれぞれの文化的成功とも言えるだろう。

『Ghost of Tsushima Director’s Cut』 ストーリートレーラー

 ふたつ目は、他の国の文化にはない日本ならではの魅力に、世界中の開発チームが気づき始めたことだ。この点に関しては、ひとつ目の理由として挙げた先例の影響とも交わる部分がある。

 観光庁がまとめた「令和元年訪日外国人消費動向調査」によると、外国人旅行客が1度目の訪日で観光する上位5都道府県は順に、東京都(60.1%)、大阪府(58.0%)、京都府(48.4%)、千葉県(44.5%)、奈良県(20.8%)であるという。見て分かるとおり、日本文化を象徴する地域である京都府・奈良県の順位が高いことがうかがえる。

 うち、東京都、大阪府、千葉県が上位にランクしていることについては、渡航にあたっての利便性(国際空港があること、あるいは空港からアクセスしやすいこと)が大きいだろう。ちなみに6位はおなじく国際空港がある愛知県(14.1%)、7位は富士山という日本らしい観光資源を持つ山梨県(12.3%)だった。

 このように、外国人が考える日本の魅力は、他の国にはない文化にこそあると言える。そうした需要の高まりがゲームカルチャーにも大きく影響しているのではないだろうか。中世はその“日本らしさ”がより鮮明だった時代だ。武士や忍者、農民、城、寺社、仏閣、自然といった要素がモチーフとされやすいことには、海外の開発チーム、さらにはプレイヤーの日本文化への憧憬の念も感じ取れる。魅力的と感じられる文化を舞台設定として用いるのは、極めて自然なことであり、これまで大きなムーブメントがなかったことの方が特筆すべき事象だったのかもしれない。

 なお、参照したデータは、令和元年(2019年)のものとやや古いが、以降これまでの期間がコロナ禍であったことを考えると、最も新しい正確性のあるデータだと考えられる。ゲームカルチャー発の日本文化の人気が、観光産業に影響を与える未来もあるのだろう。

 『Sengoku Dynasty』は、フリークの高い期待に応えられるタイトルとなれるか。今後の展開に注目だ。

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