グループ解散の釣りいろはが活動再開へ 原点回帰から考える企業運営チャンネルの「演者」の苦しみ

 今回の動画に登場したとくさんの実兄・ひろきさんは「演者」という言葉について、「魚をとることを通して演技をしていくこと自体がそもそもの始まりではない」と発言。釣りいろはのスタートは、とくさんが自然体で釣りをしている動画なのだが、とくに1本目の動画はチャンネルで1番再生されている、釣りいろはを代表するコンテンツとなっている。

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 とくさんが初期の頃の自身を「純粋無垢」と表しているとおり、この当時の動画のイメージは、YouTuberが釣りをするという感じではなく、釣り好きの男性が釣りを楽しんでいるというもの。ひろきさんは当時について、大きい魚が釣れると、視聴者も気になってその様子を見にきていたチャンネルだったと振り返っている。

 とくさんによると、YouTubeの運営に力を入れはじめた以降に、この「純粋無垢」な状態から変化があったとのこと。「いい動画を作りたい」という思いがときにメンバー間によくない雰囲気を作ったこともあったようだ。

 さらに会社の事業としてYouTubeを運営していることもあり、視聴者からの見え方もかなり気を遣っていた模様。少しでも誰かに対して「失礼ではないか」といったネガティブな反応が出そうなシーンは、すべてカットしていたことを明かしている。活動を初期から見守ってきたひろきさんは、釣りいろはの活動を見ていくなかで、もともととくさんの持っているものが削られていってしまったと感じていたとも述べている。

 当初に比べ、だんだんとメンバー間の関係や動画の内容が窮屈になってしまっていた釣りいろはだったが、「原点に戻れば、1番素直なものが撮れる」とひろきさんが話すように、新章のテーマは「12年前に戻る」。つまり純粋に釣りを楽しむとくさんを見せるべく、“原点回帰”となったのだ。

 とくさんによると、今後はこれまではカットしていたようなシーンも含め、「人となりまんま」の動画が出るとのこと。釣り以外のコンテンツも投稿することも予告されている。この動画が投稿された翌日の28日には、活動再開1本目として、人気YouTuberグループ「釣りよかでしょう。」とのコラボ動画を投稿。窮屈さから解放されたかのような、とくさんのやわらかい笑顔が印象的だった。

 YouTube界隈では、動画に出演する人物を「演者」と呼ぶことが多い。ドラマ仕立ての、配役がしっかりとあるコント動画に関しては、出演者を「演者」と表現するのは納得できるが、釣りや旅といったVlogコンテンツなどを制作し、出演するYouTuberたちは果たして「演者」なのか。

 この演者という言葉は、動画に登場する人物をカメラマンや編集スタッフと区別するために使われていると考えられるが、「いい動画を届けたい」「企業としてしっかりしなければならない」という思いが、とくさんをはじめとするメンバーたちをなにか演じているかのような姿にしてしまったのかもしれない。今回の動画は、いい部分を見せることや炎上回避を目的に、ある程度「つくられた」動画よりも、視聴者が制約のない、自然な姿を求めていることを感じさせるものだったのではないだろうか。

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