「一通のメールから番組の空気が変わった」 『THE SECOND』で話題の囲碁将棋と放送作家が語る『情熱スリー』のスタイル

 2019年にスタートしたお笑い芸人に特化したラジオアプリ『GERA』では、事務所や芸歴などさまざまな芸人がパーソナリティを務め、これまで100組以上が登場してきた。そんななか、2020年のスタート時から常に人気番組ランキングトップ10に入り続けているのが『囲碁将棋の情熱スリーポイント』(以下、『情熱スリー』)だ。

 『情熱スリー』は「元プロバスケットボール選手・佐古賢一さんのラジオ番組『情熱スリーポイント』が終わり、その居抜き番組として始まった」という架空の設定を初回から貫いている。しかし番組の内容はバスケットボールやスポーツについて語るものではない。初回から「面白くないメールは読まない」というスタイルを貫き、いまでは地上波人気番組でも名を馳せる有名ハガキ職人が集まる、大喜利濃度の高いストロングスタイルの番組となった。

 音声コンテンツの広がりによりお笑い芸人が持つ番組が増えているなか『情熱スリー』の確固たる地位はどのように築かれたのか。囲碁将棋の文田大介、根建太一、作家の立川ヒロナリ、松原将貴の『情熱スリー』チームの面々に話を聞いた。

囲碁将棋に「ベストを提示したい」 ハイレベルの大喜利が集まるようになった経緯

ーー『情熱スリーポイント』は「元プロバスケットボール選手・佐古賢一さんの番組を居抜きしている」という設定で、毎回番組冒頭にある「佐古目撃情報」も定番のコーナーです。なぜ、佐古賢一さんを取り入れたのでしょうか。

立川ヒロナリ(以下、立川):囲碁将棋のおふたりが初回収録で急に佐古さんの名前を言い出したんです。番組のタイトルもスポーツのワードを入れたいという漠然としたところから、打ち合わせもなしに本当に直前に決まったんです。

ーーちなみに、これまでに佐古さんに気づかれたことはあるのでしょうか?

根建太一(以下、根建):もちろんないと思いますよ。本人とコミュニケーションをとったこともないですし。

文田大介(以下、文田):いや、もしかしたら耳には入ってるのかも。聴いてはないと思いますけど。

松原将貴(以下、松原):実は気づかれないようにTwitterではつぶやくときはカタカナで“サコさん”にしてるんです。

ーーコンセプトもかなり斬新ですが、番組がスタートした当初は文田さんや作家のおふたりがハガキ職人としてメールを送るという、自作自演スタイルをとっていたこともかなり印象に残っています。

文田大介

文田:『湘南ワンダーチャンス』(レディオ湘南)という10年ぐらいやっていたラジオ番組に、シソンヌのじろうとしずるのKAƵMAがリスナーとして毎週のように面白いメールを送ってきてくれてたんです。そんな感じのことをここでもやりたいなと思って、とりあえず最初は番組のタイトルとか自己紹介はすっとばして、メールを自分たちで考えて送ることからやろうと決めて始めました。

立川:いつまで自分たちで考え続けるんだろうとなとは思いましたけど(笑)、僕は自分自身がハガキ職人としていろいろなラジオ番組にメールを送っていたこともあったので、楽しんで作っていましたね。

ーー『情熱スリー』は聴いていてチームの一体感がものすごくあるなと思うのですが、みなさんはどう感じられていますか?

文田:とにかく作家陣が各々担当している他のイベントとかラジオよりもかかってますね。

立川・松原:(笑)。

文田:この番組でイベントやろうってなると、最初から4、5案くらい持ってきてくれるんですよ。OK出してもさらに練り直してきてくれて。永遠にかかってくれてますね。

立川:自覚はないんですけど、ベストを提示したいって気持ちはありますね。1番おふたりに刺さるものを見せたいなと。

松原:シューター(リスナー)さんのレベルも高いので、がっかりさせたくないなという気持ちもあります。

根建太一

根建:番組で読むメールは、作家のふたりが選んでくれたものから僕らが選んでいるんですけど、シューターのメールが面白いことはもちろんありながら、ふたりが選んでくれるものが確実に面白いからこその番組なんだなとは思いますね。

ーーシューターさんのレベルがかなり高いことも番組の特徴ですよね。ここまで強者が集まってきたきっかけは何かあるのでしょうか?

文田:コンセプトとして面白いメールだけを読もうというところからスタートしたので、シューターに対しても「面白くないメールは読まない」って煽っていたんですよ。その発言自体は聴いていて面白いかなくらいで言っていたんですけど、気付いたら本当に笑いの地肩が強い人たちが「なに生意気いってんの?」って集まってきちゃって。

立川:『情熱スリー』には地上波の有名なラジオ番組でもよく読まれているハガキ職人さんがメールを送ってきてくれているんですが、『GERA』というPodcastから地上波の番組に届いたことは嬉しかったですね。

ーー地上波繋がりだと5月に行われた『THE SECOND ~漫才トーナメント~』(フジテレビ)のグランプリファイナルに出演されましたよね。番組に反響などはありましたか?

松原:視聴数はやっぱり増えましたね。

文田:でも難しいところですね。いきなり増えすぎても言いたいことが言えなくなっちゃうのはちょっと。

根建:いまはまったく気にせずにフリーで喋ってますからね。過去の配信回をさかのぼってなにか言われる可能性はないとは言えないですけど、そこを気にしてやってはいないので。あとは作家のふたりがコントロールしてくれてますね。

松原:客観的に聴くことは大事ですけど、それでおふたりの面白さが損なわれるのが1番嫌ですね。収録のうちは好きなことを話していただいて、あとは自分たちの編集でなんとかしようと思ってます。

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