「『マンガワン』をかっこいい場所にしたい」 放送作家・白武ときお×『チ。-地球の運動について-』など手がけた編集者・千代田修平が語る“ヒットの法則”

白武ときおと編集者・千代田修平のヒットの法則

常にリアリティが高い面白い漫画を目指す

白武:たとえば更新されて、アクセス数が出たら、次の週も同じような見せ方をするというような定型の決まった必勝パターンはあるんでしょうか?

千代田:数字を追うため、みたいな?

白武:はい。YouTuberが過激な方向に走っていたのに、それを辞めたら人気がなくなっちゃうみたいな。

千代田:それはありますね。その戦略をとっている作品だったらなおさら。ただ、僕の場合は漫画作品には気持ちいい漫画と面白い漫画の2つがあると思っていて、どっちの戦略でいくかだとも思います。

白武:その2パターンの分け方考えたことなかったです。どういうことですか?

千代田:もちろんどちらか一方だけというよりは、そのグラデーションのなかにある作品がほとんどだとも思っているんですけど。気持ちいい漫画というのは、生理的に気持ちいい漫画のこと、たとえば、エロとかホラーとかグロとか、「俺、強え(つええ)」系とかハーレムのように承認される快感をメインに据えたものです。一方で、面白い漫画はその対極にあって、むしろ自分を否定する外部とか、理解し得ないもの、いわゆる他者とかが作中に存在している。それで、読む前と読んだ後で、自分が変化したり、世界の見え方が変わったりするようなものです。そういう気持ちいい、ただ承認されるだけのものと、自分に変化を促したり、何か異物、これ読み込むのに時間かかるわみたいなものがあるんじゃないかなと思います。

白武:千代田さんは、どちらの漫画を担当することが多いんですか?

千代田:僕は常に後者の面白い漫画を目指しています。それはさらに言い換えると、シビアだ、ということになるかもしれません。ここでいうシビアというのは、リアリティが高いということなんですけど、キャラクターの心情や描写がリアルだったり、そこで起こることがシンプルな勧善懲悪とかではなくて「本当にこういう不条理で正解のないことってあるよね」というようなことだったり。

白武:『ヒソカニアサレ』とかだとこれで稼ぐしかないとか、復讐していかにのし上がれるか、みたいな感じですかね?

千代田:そうですね。『ヒソカニアサレ』は、貧困すぎて密漁するしかないという境遇を描いているのですが、そこに至るまでのどん底の描写が多く、いざ密漁をやるとなっても、罪の意識と葛藤する姿が描かれていたり、「密漁をする人以上に社会構造に問題があるんじゃないか」という話につながっていったりするのが、すごいリアルだなと感じています。

白武:なるほど。たしかに面白いの方は、ちょっとグッと向き合おうと思わないと読めないものもあったりとか。一長一短ですよね。

千代田:そうですね。まさにしんどいときに、『チ。-地球の運動について-』を読むのはちょっとしんどいですもん。だから、どっちがいいとかではないと思います。

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