イーロン・マスクとの会話も納税通知もAI電話が実現! 「電話×AI」の好相性がもたらす“恩恵と危険”

「電話×AI」がもたらす“恩恵と危険”

 ところで、AIの進化とともに繰り返し語られているのが「ディープ・フェイク」の驚異だ。「ディープラーニング(深層学習:AIを用いた機械学習)」と「フェイク(偽物)」のかばん語(混成語)で、俳優や政治家の顔や声を模倣し、存在しない写真や映像、会話などを作り出す技術や取り組みのことを指す。先に触れた「BANTERAI」もディープ・フェイクの一種だと言えるだろう。

 CNNが今年3月にレポートしたディープ・フェイクの現状は驚くべきものだった。カリフォルニア大学バークレー校のHany Farid教授のもと、CNN特派員ドニー・オサリバンは自身の声をAIに学習させ、「AIドニー」の声で両親に電話をかけている。両親はドニーの不自然さにすこし訝しむものの、特に指摘されることなく会話は成立した。これは少しのサンプルボイスがあれば、自分そっくりの声でしゃべるディープ・フェイクを簡単に生成できるということだ。

 ところで「特殊詐欺」と呼ばれる、高齢者を狙って電話で振り込みを指示するような詐欺事件が一向に減らない。NHKによれば、山梨県では昨年高齢者にかけられた詐欺の電話、通称「アポ電」が1000件近く記録されており、騙し取られた金額も11年連続で1億円を上回っているという。こうした状況を背景に、NTT東日本山梨支店は「自宅にかかってきた電話の内容をAIが識別して被害を防ぐシステム」を無料で提供するサービスを始めた。

 このシステムはNTT東日本・西日本の提供する特殊詐欺対策サービスで、通話録音機能付き端末が会話をクラウドサーバに転送し、AIが会話の内容を識別する。「アポ電」が掛かっていると判断した場合、本人や親族に注意喚起を促すというものだ。

 前述したディープ・フェイクは、こうした特殊詐欺にも簡単に転用できるきわめて危険な技術だ。しかし、特殊詐欺を識別するのもまたAIの仕事になっており、SF映画のような言葉だが、「AIとAIの戦い」はすでに始まりつつある。足元をすくわれないようにしたいものだ。

〈ソース〉
東京都港区で23区初のAIコール「納税案内電話」を『AIコンシェルジュ® for LGWAN』を用いて4/17より開始
AI電話対応さくらさん
BANTERAI
CNN reporter calls his parents using an AI deepfake voice. Watch what happens next
電話詐欺 AI識別し被害防ぐ対策 NTTが無料提供へ

〈Thumbnail by Pixabay

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