イーロン・マスクとの会話も納税通知もAI電話が実現! 「電話×AI」の好相性がもたらす“恩恵と危険”

 ChatGPTの発表から本日に至るまで、AIのニュースがたびたびSNSを賑わせている。今回は特に「声」や「会話」にまつわるAIサービスについての事例を取り上げながら、その恩恵と危険性について考えたい。

 4月から、東京都・港区の納税案内センターによる納税案内電話業務にAIが導入されている。株式会社USEN-NEXT HOLDINGSは東京都港区からの委託を受け、住民税に未納がある区民や事業者などに対し、AI(人工知能)による納税を促す案内電話を2023年4月17日より実施している。USEN-NEXT HOLDINGSによれば、

「今まで日中のご案内が難しかった対象者にも丁寧な納税案内を行うことができるようになります。また、本サービスを導入することで、架電数の増加、架電時間の拡大、架電結果の分析を効率的に行うことができるようになり、徴収率の向上が見込めます」

 とのことで、「LGWAN」(地方公共団体を相互に接続する行政専用ネットワーク)に接続したAIによる「納税案内電話」は、港区が23区初の取り組みだという。

 「あなたが電話に出なくてもAIが対応してくれる」というコピーのサービスが、「AI電話対応さくらさん」だ。ChatGPTを搭載し、人と会話するように対応できるAIサービスで、「AIさくらさん」というシリーズのいちサービスであり、AIさくらさんは自治体や裁判所、JR東日本など、多くの企業が導入している。「AIが何件でも同時に対応するため、すべての電話に対応が可能」「AIが会話の内容から取り次ぎ先を自動で判断」など、魅力的な文言が並ぶ。

 いずれの事例からもわかることとして、オペレーターのようなエンドユーザーに対してのある程度決まった応対を求められるような業務はAIと相性が良いということだ。こうしたAIの活用事例は今後も増えていくだろう。

 電話とAIをかけ合わせたサービスとして4月の上旬に突如登場し、SNSで話題になったのが「BANTERAI」だ。AIによって再現された著名人(故人含む)との会話を楽しめるWEBサービスで、WEBサイトにはイーロン・マスクやドナルド・トランプ、ドラえもんなどが並ぶ。実際に使ってみた人によれば「声や語り口の再現度は高い」という。

「BANTERAI」のトップページ

 無料では5分程度、月5ドルの有料プランに登録すればさらに多くの著名人と無制限に会話ができ、有料プランの選択画面には「Expert advice anytime you need.(いつでもエキスパートのアドバイスを得られます)」と書いてあるものの、エキスパートを再現したAIから得られるアドバイスがどの程度有益かはわからない。面白いサービスで話のネタにはなるだろうが、運営母体ははっきりせず、当然並ぶ著名人たちからの許諾も得ていないまま運営されているものだろう。アカウント登録や通話によってユーザーのデータを収集されていたら……と思うと不気味だ。個人的には、同じお金を払うにしても信頼できる人間のアドバイスを得たいと思う。

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