元にじさんじID・KRライバーの1年間から見えてきた「統合の狙い」 後退ではなく“広がりゆくための第一歩”に?
海外だけでなく、国内からも垣根を超える取り組みが始まる
このような様子を見ていれば、日本で活躍を続けるにじさんじライバーらにとっても英語圏リスナーの影響力・裾野の広さに関しては見過ごせないだろう。
2021年夏にデビューしたオリバー・エバンスは英語を巧みに操るタレントとして知られているが、その他の日本メンバーの英語力は人によってまちまちで、ある程度理解できる者もいれば、まったくわからないために“パッションで乗り切る”者もいるといった状況だ。
なによりも、リスナー側の視点に立ってみれば「理解できない言語が軸となっている配信」というのは、どうしてもストレスになってしまって敬遠してしまうだろう。そのためか「海外配信については一切分からない」というにじさんじリスナーも多く、「人気があることは何となくわかるが、詳しい人柄まではあまり知らない」というファンが大勢を占める。
そんななかで、同じにじさんじでありながら言語の壁に隔たれた現状を打破してくれそうな番組が始まったことは、重要なトピックだろう。それがにじさんじの公式番組『長尾とペトラのたいして変わらん Nagao & Petra's We are NIJISANJI』だ。
この番組は、2022年頃から徐々に英語を学び、ある程度理解・会話ができるようになった長尾景と、現在日本に在住しており日本語力が高いペトラ グリンの2人をMCにした番組となっている。
初回ゲストとなったのはルカ カネシロと西園チグサの2人。ここぞとばかりに西園には英語を、ルカには日本語をそれぞれ求める場面が連続し、上手く話せないなかでも2人が“ゴリ押し気味”かつ感情丸だしでメッセージを発していく様子が映し出されている。
こうした取り組みからは、ここ数年において顕著だったNIJISANJI EN人気を日本でもより認知していこうという狙いだけではなく、日本語・英語といった言語の壁やストレスを越え、より広く知ってもらおうというキッカケ作りや交流の場を作ろうというANYCOLOR社の方針も感じられる。
思わずここでは日本人視点で書いたが、「日本語しか話せない日本のライバーのことを海外ファンも知ることができる」という、海外リスナーにとっても嬉しい番組だと考えられる。日本語と英語を話せる2人がMCを担っているということで、今後は日本国内とENのメンバーが中心となって出演が続いていくのだろう。しかし「言語の垣根を超えていく」という点で捉えれば、統合された元KR・ID組もにじさんじメンバーであることに変わりはないのだから、彼らが出演することもありえるかもしれない。
2023年以降のにじさんじが、徐々に見えてきた「言語の壁」をどのように乗り越えていくのか。今後数年以上の期間を見据えてのアクションが必要となりそうだ。引き続き注目したい。