元にじさんじID・KRライバーの1年間から見えてきた「統合の狙い」 後退ではなく“広がりゆくための第一歩”に?

広がりゆくVTuberカルチャー 地域ごとの個性にも注目

 彼らがインドネシア・韓国に事務所をおいて本格活動をしはじめたのは2019年9月と2020年1月であり、当時「VTuber」が今のようなテレビや雑誌などにも起用されるようなメジャーな存在ではないところからのスタートであった。

 「VTuber」「バーチャルYouTuber」という活動の仕方が日本のネットカルチャーで目立ち始めたこの頃から現在にかけて、海外「人気」というよりも、海外「周知」ともいえるような地道な活動を続けてきた。

 もちろん、彼らだけがそうだったわけではない。インドネシアでは現地発のVTuber事務所「MAHA5」が2019年10月ごろから本格スタートし、現在は日本事務所を構えて活動するほどに人気を集めている。韓国でもK-POPアイドル30名がバーチャルアイドルデビューをかけて争うサバイバル型のオーディション番組『少女リバース(RE:VERSE)』がスタート、2023年1月からABEMAにて配信されている。

 ここで紹介しているのはあくまでもほんの一部に過ぎないが、グローバルの視点からVTuberの広がりに目を向けてみると、日本のやり方を踏襲したり、時には独自の形式やその口特有の文化を取り入れながら広がり続けている。

 あくまでにじさんじとアジアで共通する国々について話しをしたが、中国やインドなどでも独自のVTuberカルチャーが築かれているし、VTuberという存在の認知は、ときに形を変えながらも着実に進んでるといえよう。

 にじさんじID・KRの流れからアジア圏のVTuberカルチャーについて簡単にご紹介したが、英語圏で活動するVTuberに話を広げると、より濃厚かつ独特なカルチャーが築かれることに気が付く。とはいえ、英語圏全体まで広げてしまうとあまりにも膨大なので、本稿ではあくまで「にじさんじ」内、つまりにじさんじENのメンバーに絞って紹介をしてみたい。

 2021年5月12日に活動を開始したにじさんじENは、年を経るごとに人気が高まりつつある。最初のメンバーとしてデビューしたエリーラ ペンドラ、ぽむ れいんぱふ、フィナーナ 竜宮による「LazuLight」を皮切りに、これまで7つのグループがデビューしている。その中でもVOX Akumaを中心とした男性ライバーグループ「Luxiem」はその筆頭格といえるほどの支持を集めている。

 メンバーの特徴としては、女性のみ・男性のみ・男女混成のグループ形式でのデビューが続いていることと、メンバーの多くがファンタジー性やフィクション性に富んだバックグラウンドを持ち、「この世に在らざる者」というテイストが強いことだ。

 日本でも2017年~2019年頃には「この世に在らざる者」を謳ったVTuberが多かったが、後に減少傾向となったことを考えれば、ENメンバーが一貫性を保ったままであることは「さすが」とも感じられる。

 一方で、「EN」とくくってはいても第一言語が英語であることが絶対の条件ではないようで、2022年12月6日に活動をスタートした「XSOLEIL」のメンバーである狂蘭メロコと虎姫コトカは、第一言語が日本語であることを明かしている。あくまでも「英語をスムーズに話せること」「英語圏のメンバーとして活動できること」が、現況のにじさんじENにとって重要視されているのがわかる。

【JAPANESE ZATSU】狂蘭メロコの日本語雑談【NIJISANJI EN | Meloco Kyoran】
【SUPER BUNNY MAN】Collab w/ Mysta! Teaching him Japanese【NIJISANJI EN | Kotoka Torahime | XSOLEIL】

 VTuber以外にも多くの配信者や動画投稿者が活躍していたことや「英語圏」という影響はやはり大きく、視聴者の総数や配信文化が浸透していることも手伝い、元IDや元KRのくらべても活動開始から間もなく大きな影響力・総登録者数を持つようになったにじさんじEN。

 この成功の裏には「英語を理解して話せるかどうか」「欧州・米国のサブカルチャーと親和性・理解があるか」を重視する方針が功を奏したことも大きいだろう。

 例えば今回の話題としている元にじさんじIDのミカ・メラティカは、2021年7月28日にデビューを果たしたメンバーだが、元IDメンバーのなかでは一番の後輩でありながらも、チャンネル登録者数はもっとも多い。

 彼女が大きな躍進に成功した理由には、彼女がインドネシア語、ジャワ語、英語など扱えるマルチリンガルであることが主因となっているのではないだろうか。ミカは英語圏のライバーともコミュニケーションに全く不都合がないレベルで英語を使いこなしており、NIJISANJI ENメンバーが中心になっておこなわれる多人数コラボにも度々参加していた。こうしたコラボが彼女の存在を英語圏のリスナーに知らせるきっかけとなり、登録者の増加・ファンからの認知獲得にも少なからず影響を与えただろう。

 現在、彼女の雑談配信は英語をメインとしていることも多い。それだけ「英語圏」の影響力は非常に大きいといえるのだ。

IKE, MYSTA, SONNY, ALBAN AS CATBOYS?! w/Nina!【NEKOPARA: CATBOYS PARADISE】【NIJISANJI | Mika Melatika】

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