ゲームと社会情勢は関係している? 『ゲームが教える世界の論点』著者・藤田直哉氏に聞く

社会と人間のあり方を描くべき芸術がゲームである

――今後もゲームと社会情勢のつながりは続いていくのでしょうか?

藤田:もちろん続いていくと考えています。ただ、少し形は変わってくるかもしれません。先ほどお話したように、ゲーム文化・オタク文化は政治や社会からの目隠しとして機能してきました。けれど、現代では戦争や気候変動、AIによる職業の淘汰など、目をそらせない社会問題が次々と生まれています。そのような問題が存在することと、デジタル端末が私たちの暮らしに深く関わっていることの両方を踏まえたうえで、そのあり方を問うような作品が生まれてくるような気がしていますね。

 ゲームと社会情勢の関係にとって本当に大切なのは、物語や主題に直接的にテーマを反映させることではなく、デジタルメディアの固有性が私たちにどのような影響を与えているかをつまびらかにすることだと思うんです。コンピューターによる仮想空間を利用し、AIとやりとりするインターフェースがどのように新しく社会と共同体を形成していくか、そのとき個々のプレイヤーの思想や他者との関係性はどう変化するか。それを体感させながら思索させることがゲームに出来る特権的な仕事だと思う。

 『群盗』などの戯曲作品で知られる文学者のフリードリヒ・フォン・シラーは、「科学や技術が人間性を変容させていく」「そこで失った人間性は芸術によって回復することができる」と述べています。つまり、科学や技術の進歩を否定するのではなく、それらが世の中を変えていくことを受け入れ、その変化によって失ったものを芸術で補填するべきというわけです。

 その観点に立つと、いまゲームが担っているのはまさに「芸術」の役割なんですよね。テクノロジー化した現代の芸術が人間とどう交わっていくのか。単純に社会問題をテーマとするのではなく、テクノロジーをアクターとして大きく形を変えていく社会と人間のあり方を描くことが、ゲームと社会情勢の関係性そのものなんです。その意味で、ゲームカルチャーにはまだまだ大きな可能性が眠っていると言えるでしょうね。

ゲームが教える世界の論点』(集英社新書)藤田直哉 990円(税込)

■イベント情報
『ゲームが教える世界の論点』刊行記念トークイベント「批評家とゲームクリエイターが語る!ゲーム批評入門」ゲスト:渡辺祐真(スケザネ)×藤田直哉

日時:2023年3月24日(金)19:30〜21:00(延長あり)
*見逃し配信あり。期間は開催から2週間。
場所:オンライン
参加費:1000円 オンラインチケット(配信用URLをお送りします)
お問い合わせ:info@liondo.jp
主催:双子のライオン堂
https://peatix.com/event/3503132

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