『Apex Legends Mobile』が1周年を待たずしてサービス終了 モバイルゲーム市場はこれからどうなる?
エレクトロニック・アーツ(以下、EA)は2月1日、同社が運営するFPSアクション『Apex Legends Mobile』について、5月2日午前8時(日本時間)をもってサービスを終了すると発表した。
サービス開始から1年を待たずしての話題作の“ドロップアウト”は、ゲームカルチャーにどのような意味をもたらすのだろうか。『Apex Legends Mobile』のサービス終了から、モバイルゲーム市場のこれからを考える。
人気FPSバトルロイヤルのモバイル版『Apex Legends Mobile』
『Apex Legends Mobile』は、人気FPSアクション『Apex Legends』から派生した、同タイトルのモバイル版だ。3人1チームとなり、ほかのチームと銃撃戦をおこないながら、最後の1チームまで勝ち残ることを目指すという基本的なルールは同一だが、キャラクターごとの固有アビリティのほかにプレイヤーの好みで能力を付与できる「パークシステム」、6人で構成された2チームが決められた数の敵を倒しきるまでの早さを競うモード「チームデスマッチ」などを実装している点で違いがある。
『Apex Legends Mobile』は2022年5月18日にリリースされ、コンシューマー版とは切り離された独自の環境が原作のファン以外の層からも人気を集めた。公式Twitterアカウントから発信された情報によると、「私たちがコントロールできない要因により、プレイヤーに高品質な体験とコンテンツを維持することができませんでした」とのこと。一定の支持のもと、さらなる進化が問われていく状況だっただけに、サービス開始から1周年を前にした“撤退”には、多くのゲームフリークたちから反響が集まっている。
この度、「Apex Legends Mobile」は、誠に勝手ながら2023年5月2日午前8時(日本時間)をもちまして、サービスを終了させていただくことになりました。日頃ご愛顧いただいておりますお客様には突然のお知らせとなりましたことを、運営及び開発チーム一同、深くお詫び申し上げます。
— Apex Legends Mobile Japan (@apexmobile_jp) January 31, 2023
2023年は、モバイルゲーム市場にとってターニングポイントの1年に
こうした動きの背景には、モバイルゲーム市場の行き詰まり感がある。アメリカ・サンフランシスコに本社を置き、データ分析に関連するサービスなどを提供するSensor Tower社の調査(※1)によると、2022年上半期の日本の同市場は、ダウンロード数が2021年同期と比較し11.3%減、収益が20.4%減と目に見えて縮小した。同市場における日本の収益シェア率は、アメリカに次ぐ世界第2位(約20%)となっており、ゲーム市場全体のシェア率(約10%)にくらべると、日本の市場は大きな影響力を持っている。収益額だけを追えば、コロナ禍以前の2019年同期比で15.4%増となっているが、世相からの追い風は明確に弱化しつつある。
また、そうしたトレンドを裏付けるデータはほかにもある。おなじくSensor Tower社が公開した、2022年12月のモバイルゲーム収益ランキングに関するレポート(※2)によると、全世界の同市場の収益は2021年同期にくらべ、約7.6%減少したという。参考に直近3か月の数字をあげておくと、2022年11月は11.3%減(※3)、2022年10月は14%減(※4)、2022年9月は14%減(※5)となっている。長らくゲーム市場で重要な役割を担ってきたモバイルゲームだが、その衰退はすでに始まっているという見方ができる。『Apex Legends Mobile』の早すぎる撤退は、一連の市場動向の一端と考えられるのではないだろうか。
先のデータからもわかるように、日本は世界各国以上にモバイルゲームが市場を牽引してきた。しかし最近では、一世を風靡したタイトル・新興タイトルのサービス終了が相次いでいる。『アイドルマスター シンデレラガールズ』や『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』、『FFVII ザ ファーストソルジャー』、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 -魂の絆-』などはその一例だ。今後は『Apex Legends Mobile』のように地盤のある期待作であったとしても、これまでのように売上を維持していくのが困難となるかもしれない。なお、EAは2月1日におこなった2023年度・第3四半期の報告のなかで、注目されていたモバイル版『バトルフィールド』の開発中止も発表している。
ゲーム業界では一般に、プロジェクトの始動から発売・サービス開始までのあいだに小さくない時差がある。EAの発表を市場動向の一端だと考えるならば、今後もゲームフリークが驚く期待作の開発中止や、人気作のサービス終了が続く可能性がある。2023年はモバイルゲームにとってターニングポイントの1年となるだろう。コロナ禍で大きく拡大したゲーム市場。ポストコロナを背景にした再編はすでに始まっている。
※1:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000100064.html
※2:https://sensortower.com/ja/blog/top-grossing-mobile-games-worldwide-for-december-2022-JP
※3:https://sensortower.com/ja/blog/top-grossing-mobile-games-worldwide-for-november-2022-JP
※4:https://sensortower.com/ja/blog/top-grossing-mobile-games-worldwide-for-october-2022-JP
※5:https://sensortower.com/ja/blog/top-grossing-mobile-games-worldwide-for-september-2022-JP