『DualSense Edge』実機レビュー 高いカスタマイズ性だが“汎用性”には課題も
『DualSense Edge』の評価に関連する3つの論点
『DualSense Edge』を評価するにあたっては、3つの論点があると筆者は考えている。
1. 各種機能の使用感
2. PCプラットフォームに対する汎用性
3. 競合製品との比較
まず1.「各種機能の使用感」に関して、絶対的な評価としてハイエンドコントローラーに求められる機能はすべて備わっていると感じた。購入を検討している層にとって、もっとも重要な部分であろう背面ボタンは、必要十分な性能を持ち合わせている。レバー型・ハーフドーム型のアタッチメント2種により、プレイヤーごとの細かい要望にも応える設計は、さすが純正といえるもの。公式から一定のクオリティを持つハイエンドコントローラーがリリースされたことだけでも、大きな意味・価値があるのではないだろうか。
さらに特筆すべきは、ソフトウェアによる細かな調整が可能である点だ。これまでのPSプラットフォームでは、今回システムとして実装されたような柔軟な感度・デッドゾーンの設定ができなかった。そのため、クロスプレイの環境がデフォルトとなっているゲームにおいて、「そうした設定ができて当たり前」のPCプラットフォームに対し、PSプラットフォームにはあらかじめ用意されたコントローラー設定の上でしかプレイできないという“欠点”があったのだ。
しかし、今回の『DualSense Edge』の登場、専用の調整システムの実装により、PSプラットフォームユーザーも柔軟なコントローラー設定が可能となった。個人的には背面ボタンの登場以上に、この点が同機の価値のように感じている。
そして、このことはアクション以外のジャンルにも素晴らしいゲーム体験をもたらす。たとえば、RPGでは、感度・デッドゾーンの調整によって、もっさり感のあったキャラクター・視点の移動が劇的に改善する可能性がある。実際に私は『ペルソナ3 ポータブル』リマスター版のプレイに同機を使用してみたが、そうした点におけるストレスが激減した。背面ボタンやスティック/トリガーの感度・デッドゾーン調整が、アクション以外のゲームにおいても、大いに活用できる機能であることは間違いない。
また、モジュール交換ができる点にも触れておかなければならない。昨今のゲーム界隈では、コントローラーの耐久性の低さがやり玉にあがりやすい。プレイを重ねるうちにスティックが消耗し、入力をしていないのに反応してしまう不具合(ドリフト現象)を体験したことがあるプレイヤーも少なくないはずだ。決して安価ではない機器を頻繁に買い替えなくてはならなくなることが、コントローラー界隈におけるユーザーの不満のタネとなっている。この点をモジュール交換で解決できる可能性があることも、『DualSense Edge』の優位性だといえるだろう。
一方、2.「PCプラットフォームに対する汎用性」には課題を残す。なぜなら、『DualSense Edge』は、PlayStation 5のシステムソフトウェア上でしか設定をおこなえないからだ。つまり、PCゲームに同機を活用するためには、PlayStation 5を所有していなければならないのだ。
PC上でもコントローラーとして機能し、登録したプロファイルそのものは反映される。しかし肝心の設定がPlayStation 5でしかおこなえないのでは、お世辞にも汎用性があるとは言えない。
1、2を踏まえ、最後に考えたいのが、3.「競合製品との比較」についてだ。先に述べたとおり、『DualSense Edge』の動向を注視している層の多くは、PCでの活用を見据えていたはずだ。競合製品である『Xbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2』の価格が19,778円(税込)、『SCUF REFLEX』の価格が199.99ドル(約2万6,000円)というなかで、いくらかプラスして納得の性能が得られるのであれば、“PCにおける最善手”として検討したいプレイヤーは多くいただろう。
しかしながら『DualSense Edge』は現状、PlayStationプラットフォーム上での利用に最適化されている。ゲームフリークが『DualSense Edge』に望んでいたことのひとつには、PCプラットフォームで利用できるコントローラーの新しい選択肢という面があったはず。そのため、いくら単体としての性能が充分であっても、ユーザーの期待には応えきれていない現状だ。
今後、同機が覇権を争うためには、PlayStation 5なし(PCのみ)で設定できる環境が必須となってくるだろう。その下地が整いさえすれば、競合製品と戦えるだけのスペックは持ち合わせていると感じる。
『DualSense Edge』は、コントローラーの定番商品となれるか。その行方は、今後のアップデートにかかっていると言えそうだ。