あのキャラは、ゲームスピードは、操作性はどうなる? 10年ぶりのシリーズ新作『アーマード・コア6』への個人的な要望

 現状では最新作の『ACVD』は、機体の操作がやや難しい。ここでは具体的に、どんな操作を行っているかを文章にしてみよう。まず□ボタンでブーストを吹かして飛んだり、ときに×ボタンで壁を蹴りながら移動したりしつつ、○ボタンで偵察用ドローンの“RECON”を射出。そして“スキャンモード”と併用して障害物越しに敵機を捕捉し、射程内に捉えたらスキャンモードを“戦闘モード”に切り替え、各種兵装を使える状態にしておく(スキャンモード中はエネルギーの効率が良くなるので移動に向くが、代わりに武器が使えない)。

『ACV』

 その後はブーストやキックを交えて移動しつつ、画面内にある照準をRスティックで調整、R2とL2で左右の武器を使ったり、場合によってはL1で肩の兵装で攻撃する。移動に徹する際は再びスキャンモードに切り替え、上の段落で書いたことをくり返す。

 また場合によっては、スキャンモードと戦闘モードを瞬時に何度も切り替えたりもする。これは一例だが、要はとても忙しいのである。前作の『ACV』も含め、「V」シリーズはこの操作の複雑さがネックだった。

 ここに書いた各種ボタンは、『ACVD』(PS3版)の取扱説明書を元にしている。もちろんどれも初期状態なので、まずは試しに遊んでみて、自分に合ったボタン配置を徐々に作り上げればいいのだが、大抵のプレイヤーはそうした手間をかける前にプレイを辞めてしまう。

『ACVD』

 各種パラメータを理解し、そのうえで機体をカスタマイズして、性能を活かせる戦い方でもって相手を倒す。そうした複雑さを乗り越えることがロボット系ゲームの魅力でもあるので、「AC」の場合も、その部分と手軽さの兼ね合いが難しそうではある。

 とはいえ、ロックオンのためのサイト自体を廃止し、画面内の敵に自動で照準を合わせる機能が付いた『AC4』シリーズという例もある。新作が出れば新たなユーザーが少なからず入ってくるはずなので、機体のカスタマイズといった『AC』の醍醐味を味わう前に諦める人が出てこないよう、操作性には気をつかってほしいところだ。

『アーマード・コア』ライクと、初心者への配慮

 10年も間が空くと、フロム・ソフトウェアのゲームを遊んでいても「AC」シリーズを知らないという層も出てくる。『ACVD』が発売された翌年以降を見てみると、『ダークソウルII』、『ブラッドボーン』、『ダークソウルIII』、『SEKIRO:SHADOWS DIE TWICE』(以下、SEKIRO)、『エルデンリング』と、アクションRPG系の大作が多く発売されている。

『エルデンリング』

 このうち『SEKIRO』は500万本以上、『ダークソウルIII』は1000万本以上、『エルデンリング』は1700万本以上を売り上げている。そのため最近フロム・ソフトウェアのことを知ったユーザーが、「同社はアクションRPGに特化したメーカーだ」と思ってもおかしくはない。

 筆者が以前に書いた記事で引用したインタビュー記事(※1)では、企画初期段階の『AC6』でディレクターを担当した宮崎英高氏と、本作のディレクターである山村優氏(『SEKIRO』のリードプランナーを担当)への質疑応答が書かれていたのだが、聞き手からの質問は“ソウルズボーン(『デモンズソウル』、『ダークソウル』、『ブラッドボーン』をまとめた呼称)”や『SEKIRO』との比較が多かった。

『SEKIRO』

 「AC」シリーズを遊んだ人からすれば物足りない内容かもしれないが、ソウルズボーンや『SEKIRO』、『エルデンリング』からフロム・ソフトウェアを知った人たちにとっては重要だ。海外における同社のアクションRPGの人気は特に凄まじく、その影響力と、「AC」シリーズにある10年の空白を踏まえたうえで、『AC6』はこれまでのアクションRPGとは別物だという確認が必要だったのではないだろうか。

『AC6』

 引用記事内の宮崎氏は「ソウルズボーンに近づけるということはしていない」と言っているし、フロム・ソフトウェアが名作ばかりを作っていることを鑑みればただの杞憂だろうが、『AC6』はロボットゲームとしてのおもしろさを突き詰めてほしいと思う。

 『エルデンリング』の空前のヒットがある手前、そのイメージに引きずられる部分もあるかもしれない。しかし、「AC」シリーズの膨大なパーツを使った自由度の高いカスタマイズにおいては、「見た目重視のロマン機体にするか」「現実を受け入れて実用性重視の構成にするか」などの葛藤や完成した機体の鑑賞なども含めて独自のおもしろさが詰まっており、それをむざむざ捨てることはない。

 むしろ、フロム・ソフトウェアに注目が集まっているいまだからこそ、ロボットものらしい「AC」を出すことで長いブランクを埋め合わせ、同シリーズを再興させるまたとない機会と言える。

 『エルデンリング』をはじめとするフロム・ソフトウェアのアクションRPGと同様、「AC」シリーズも確かに難しい。だが、初心者向けにソロモード限定の強武器を用意したり、苦戦しているプレイヤーがそのミッションに僚機を連れていけるようにしたりなど、「AC」なりの救済措置は作れるだろう。このように初心者が継続して遊んでくれるような仕組みも、「AC」らしさと同じくらい重要であると筆者は考えている。

 ただ、初心者向けの配慮に関しては、先述のインタビュー記事中に回答とも言えるような部分がある。記事(一部要約)によると、「多くの人に遊んでもらうための手段として、『エルデンリング』では攻略の自由度やオープンワールドを用いたが、『AC6』では機体のアセンブルや操縦の楽しさを重視している」という。

 要はさまざまな人に遊んでもらえるような施策を、「AC」シリーズなりのやり方で試みるという話なので、『エルデンリング』と形は違っても、初心者向けの配慮はされていると考えてよさそうだ。過去作とはつながりのない惑星ルビコンという舞台を用意したのも、その一環なのかもしれない。

 赤ん坊が少年になったり、少年が大人になったりと、10年という時間がもたらす変化は大きい。『ACVD』から今回の『AC6』に至るまでに、フロム・ソフトウェアのゲームを遊んでいる層や、彼らが同社に求める作品像も変わっているとは思うが、開発陣には最高の『AC』を追求してほしいところだ。

※1……https://jp.ign.com/armored-core-6/64541/interview/armored-core-vi

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