「ポケモン」のオープンワールド化は成功だったのか? 『ポケモン スカーレット・バイオレット』の新しさと課題
一方で、問題点もなかったわけではない。その最たる例として挙げられるのが、オープンワールド化にともなうものであると推測される「処理落ち」、左スティックの操作とともに勝手に動いてしまう「カメラアングル」、北を上に固定できない「ミニマップ表示」だ。良い点として挙げた「ポケモンらしさ」「世界観の構築」「利便性」がそれぞれ、ゲームに没頭させるための要素だったのに対し、これらの悪い点はその足を引っ張る要素であると言わざるを得ない。3つの点に共通するのは、オープンワールドに対する知見の少なさだ。
同ジャンルのゲームは一般的に、「方角の見分けがつきにくい広大なマップをシームレスに移動する」という特徴をもつ。そのため、一度のローディングですべてのマップ処理をおこないつつ、探索に不便さ・不快さを感じさせないようなUIを盛り込まなくてはならない。上述のとおり、『ポケモンS・V』は、シリーズにとって初めてのオープンワールドへの挑戦だ。社内には、これまでと異なる道を進むナンバリングに必要な要素を満たすだけの、十分な知見がなかったのかもしれない。
反面、これらの問題点は、アップデートである程度改善が見込めるものでもある。今後はこうした点に対処しながら、より完成度を高めていってくれるはずだ。そして、またおなじコンセプトで次回作を開発するときには、これらの課題をクリアし、ユーザーが手放しで喜べるだけのものを提示してくれるに違いない。これまでシリーズに分類されるすべての作品で、大崩れすることなく、一定の評価を獲得してきた「ポケモン」シリーズ。最新ナンバリング『ポケモンS・V』は、さらなる挑戦への第一歩となっていくのではないだろうか。