MCU『ソー』作品でも題材になった終末の日“ラグナロク” 名作『ゴッド・オブ・ウォー』続編は、“北欧神話の最終戦争”を通して何を描いたか

 ここまでゲームの要となる物語と戦闘アクションについて記してきたが、本作の魅力は広大で美しいフィールドの探索にもある。本作のアートワークにも描かれている通り、前作の主要な舞台となっていたミズガルズはフィンブルの冬によって、見渡す限り真っ白な雪景色へと変貌している。

 だが物語の道中で訪れる九界は、それぞれが視覚的にも地形的にも際立った特徴を持つ世界となっており、素晴らしいライティングによる圧巻のグラフィックも相まって、新たな世界を訪れるたびにその光景に魅入られることだろう。

 前作同様、今作はいわゆるオープンワールドではなく、リニアな体験に重きを置いたレベルデザインが踏襲されており、戦闘とプラットフォーム・パズルの面白さを最優先としたつくりになっている。

 とはいえ、どの世界でもマップ自体が大幅に拡大されており、その中には宝箱や収集要素、あるいは前述の隠れたボスなど沢山の要素が詰め込まれているため、十分に探索を満喫出来るはずだ。前作では(特に中盤まで)使い勝手の悪かったファストトラベル機能についても大きく利便性が向上しており、より気軽にそれぞれの世界での冒険を楽しめる。

 そんな美しい九界の世界を行き来しながら描かれる、ラグナロクという避けられぬ運命へと抗う親子の物語が、今回もタイトル画面から一切止まることのない「全編ワンカット」で描かれている。前作でも冒険の没入感を大幅に高める要因として機能していたこの手法だが、今作ではいよいよその真価が発揮されているように感じられた。

 その理由として挙げられるのが、やはりラグナロクという題材、そしてクレイトス親子「以外」の登場キャラクターの物語を深く掘り下げたことによる物語の立体化だ。

 前作に登場した知の巨人(であると同時にビデオゲーム史上屈指のよく喋る生首)ミーミルや、森の魔女、鍛冶師のドワーフ兄弟ブロックとシンドリといったお馴染みのキャラクターは今作にも引き続き登場し、前作では名前のみの登場となっていた主神オーディンやその息子トールについても、ラグナロクを目前に遂に本格的に物語へと関わっていく。

 主要な登場キャラクターの数は、少なく見積もっても前作の倍に及ぶだろう。登場人物同士による道中の掛け合いも大幅に増加している。クレイトス親子は勿論のこと、これらの登場キャラクターもまた、ラグナロクという世界の終焉が近付くにつれ、それぞれの思惑や葛藤を抱くようになり、そんなキャラクター同士が関わることで新たな物語が紡がれていく。その様子を、たった一つのカメラが一切止まることなく捉え続ける。

 今作のカメラワークは前作よりも遥かに自由で大胆なものとなっており、時にはその場からクレイトスが離れる場面も珍しくない。ノンストップで様々な登場キャラクターの言葉や感情が交錯していく様は、まるで一つのドキュメンタリー作品を見ているかのような感覚に陥る。他の作品では決して味わうことの出来ない、まるで共にカウントダウンの日々を過ごしているかのようなリアルな感覚がゲーム全体のムードを形作っているのだ。

 最後に、軽くではあるがパフォーマンス面についても触れておこう。筆者は九界の美しい景色を満喫するために本作を「解像度優先モード」でプレイする機会が多かったが、30fps前後を安定してキープしているように見受けられ、シーンや状況に応じてパフォーマンスが著しく低下するような場面は皆無に近かった。

 また「パフォーマンス優先モード」でプレイした際には、おおむね60fpsに近い環境でアクションを楽しめた。ときどきキャラクターの挙動(主に歩き方)に若干の違和感を覚える場面はあったものの、没入感に支障をきたすようなバグに遭遇する機会はほとんど無かった。

 一点だけネガティブな点を挙げるとすれば、特にサブストーリーにおいて、HUD上のマーカーの示す方向が安定しない場面が複数回存在したことだが、これについては改善を期待したい。とはいえ、ローンチ時点のクオリティとしては、筆者個人としては許容範囲内である。

 また「今作からプレイを始めても大丈夫か?」という疑問については、一応『ラグナロク』のタイトル画面から前作のあらすじを見ることが可能であり、ゲーム内の資料を通して登場キャラクターの過去や用語の意味を知ることが出来るようになっているため、おおむね問題はないだろう。とはいえ、あくまで最低限の情報のみが記載されているため、筆者としては前作のプレイを強く推奨したい(1~3作目については舞台や世界設定が大幅に異なるため)。

 ここまで、様々な側面から『GOWラグナロク』の魅力を書いてきた(とはいえ、ネタバレを避けるためにかなりの部分を省略している)。

 本作における予言/神話によって定められた自らの運命に抗う物語構造も、激化した戦闘アクションも、美しく広大な九界の世界も、「全編ワンカット」で描かれる様々なキャラクターの姿も、全ては神々/人々がラグナロクという世界の終焉という運命に対峙する瞬間を力強く描くために磨き上げられたものであり、前作以上にそれぞれのパーツが見事に噛み合った上で、一つの力強い一貫性を持った作品として昇華されている。

 世界中から称賛を受けた前作から、ほとんど全ての要素が大幅に拡大しているのにも関わらずこれを実現出来ているというのは、もはやゲーム史に残る偉業といっても過言ではないのではないだろうか。

 まさに現代におけるAAAタイトルの称号を冠するに相応しい圧倒的な大作だが、その核となっているのは、あくまで息子を守りたいと強く願う親の物語であり、自らの可能性を信じて役割を全うしたいと願う子どもの物語であり、何よりも、その二つの想いが交錯する親子の物語だ。

 『GOWラグナロク』は、ラグナロクという北欧神話における”最強の舞台装置”を通してこの物語を徹底的に描ききったことによって、あまりにも壮大で、同時に極めて普遍的でもある究極の作品となっている。

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