NOAと作曲AIがコラボした背景に迫る 『AIが創る音楽の未来~作曲AI FIMMIGRMとは~』レポ
2022年10月23日に六本木ヒルズで開催されたJ-WAVE主催のイベント『J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2022』に、アーティストのNOA、agehasprings取締役の関口夏光、株式会社TMIK CTO/株式会社PARTY 執行役員 Tech Leadの梶原洋平、株式会社TMIK COOの齊藤悠貴が登壇。作曲AI『FIMMIGRM™』の開発背景と、これを使用して制作し、NFTとしてリリースされた楽曲である「言葉にできない」について語り、会場を盛り上げた。
AIとのコラボレーション楽曲がライブステージにて初披露される
NFTを活用した次世代アーティスト発掘&育成プロジェクト『CHINTAI presents J-WAVE MUSIC ACCELERATOR PROGRAM』から生まれた楽曲「言葉にできない」は、作曲AIである『FIMMIGRM™(フィミグラム)』で生成したメロディを使用。歌詞は「人の弱さや情けなさ」「人には言えない本当の気持ち」「みなが抱える共通の苦しみ」など、「Twitterやインターネット上に浮かんでいる人々の気持ち」をテーマに、一般公募で集まったフレーズをagehaspringsグループのクリエイターが紡ぎ、歌詞にしている。
『J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2022』でのNOAのライブパフォーマンス終了後、MAP企画を振り返りながら「AIが創る音楽の未来~作曲AI FIMMIGRMとは~」というテーマのもと、トークセッションイベントが開催された。
普段はひとり自宅でノートブックとキーボードを使って作詞作曲をしているというNOA。今回の提案を受けた時の心境は、「AIとコラボをすることに最初は戸惑いました」というものだったという。
だが、実際にコラボをした感想として「なんの違和感もありませんでした。自分はメロディを作るのにすごく時間がかかっているから、AIがこんなに聞きやすくて刺さるメロディをすぐに作ってくれるとなると焦ります(笑)。びっくりしましたね」と語った。
『FIMMIGRM™』を開発・運営する株式会社TMIK COOの齊藤悠貴は、「『FIMMIGRM™』は “AIで、オリジナル曲を、みんなの手に”というコンセプトで、agehasprings 代表の音楽プロデューサー・玉井健二プロデュースのもと開発されました。ヒットソングを学習したAIです。AIで作ると似たような曲ばかりになると思われますが、『FIMMIGRM™』はメロディの特徴を散らすという技術を使っています。この技術で特許を取得していて、似通った曲ができないようになっています」と解説。
「AI作曲とはいえ、音楽知識がないと難しいのでは?」という質問に、株式会社TMIK CTOの梶原洋平は以下のように答えた。
「音楽理論を勉強するのはハードルが高いですよね。世の中には、曲が作れないけど歌がうまい、ダンスが上手い、考えていることが面白いという人がたくさんいると思うんです。作曲というのは理論ですので、それをAIにやってもらえれば、今まで作曲がネックで世に出てこなかったクリエイターがどんどん才能を開花させられるのではという思いがありました。」
NOA驚愕「え、今、一瞬で生成されました?」
イベント中盤では、梶原による『FIMMIGRM™』を使った楽曲制作のデモンストレーションが行われた。『FIMMIGRM™』から曲が生成されるところを見るのは初めてだったというNOAは、「え、今、一瞬で生成されました?」と、スピード感に驚きを隠せない様子を見せた。
『FIMMIGRM™』の特徴であるMIDI形式でDLできる機能について梶原は、「ほかにも作曲AIはあるんですけど、ほとんどが完成されたデータが吐き出されます。『FIMMIGRM™』はクリエイター向けに開発されているので、人が手を入れることを前提にしたデータなんですね。編集ができないとプロの現場では使えません」と解説。AIが生成したデータを使用してリアルタイムでDAWでエディットする梶原。この『FIMMIGRM™』を使用した楽曲制作のプロセスを、NOAも食い入るように真剣に見つめていた。
NOA:僕が1日中悩んで作っていたものが、今ここで、できちゃってるっていうのが(笑)
梶原:でも、人が手を入れることが絶対に大事なんです。いまってなんでもAIが関わっているじゃないですか。スマホでかっこいい写真を撮る。補正にAIを使う。でもバズるものっていうのは、写真そのもののアイデア、人の作ったクリエイティビティがどこかに入っているんです。頑張らなくても良いところは頑張らず、細かい音楽理論は置いておいて、自分の好きなクリエイティブができるようにしたいです。
齊藤:いまはクリエイター向けにプッシュしていますが、音楽を作ったことがない人も『FIMMIGRM™』を使ってオリジナルソングを作ってみてほしいです。ハードルが低くなればいいなと思います。
梶原:そう「ちょっと歌の練習」でもいい。『FIMMIGRM™』から生成された曲はすべての権利がDLした人の自由なので、歌ってみて、SNSにあげて、バズったら億万長者でいい(笑)。
AIは所詮道具。大事なのは『なぜその曲を作ろうと思ったか』という原点
トークセッションの終わりに、NOA、agehaspringsを代表して関口、そして『FIMMIGRM™』を開発するTMIK梶原が考える音楽の未来について語った。
NOA:これからはいろんなアーティストが増えそうです。AIを使っていく人も増えると思う。僕は基本的には自分で作るけれど、またAIの力を借りるかもしれません。進化には終わりがないので僕も追い付かないと。最新のものを取り入れていきたいですね。
梶原:AIは所詮道具です。人間が作るものを取り巻くツールのひとつ。今回もNOAさんの声が乗って、パフォーマンスがあって、それで初めて命が宿りました。ツールをうまく使ってほしいです。
関口:音楽を創る上で、本当に大事なのは『なぜその曲を作ろうと思ったか』という、この原点が一番大事で、こういったテクノロジーが進化していっても、原点の『なぜ』の部分は変わらないと思います。agehaspringsはこれからもクリエイター、アーティストの方々、そしてテクノロジーとともに、世界に向けて素晴らしい音楽を創っていきたいと思います。
歌詞制作の裏側や『FIMMIGRM』の詳しい機能など、より詳しいトークセッション再編記事は「FIMMIGRMオフィシャルサイト」にて掲載予定。
■FIMMIGRMオフィシャルサイト
https://fimmigrm.com/